妖怪の民俗学: 日本の見えない空間 (ちくま学芸文庫 ミ 2-4)

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 202
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480086990

作品紹介・あらすじ

妖怪はいつ、どこに現われるのだろうか?妖怪の出てくる場所は決まっていて、特定の相手をえらばず、大勢の人間に対して何かを交渉しようとするという。-「都市の周辺」「たそがれ時」「若い女性」などはそのキーワードである。日本各地の調査と柳田国男・井上円了らの研究の再検討を通じて、様々な怪異現象を分析し、妖怪とは何か、妖怪のトポロジーとはどのようなものか、さらに都市空間の持つ魔性についても探究する。

感想・レビュー・書評

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  •  怖いという感情は、「幽霊」の場合は「特定の個人的心意の反映」であり、当事者のみ真の恐怖を味わうのに対し、「妖怪」は「共同感覚」のうえに置いて怖いと思うことである。
     しかし、ウブメの例にあるように妖怪と幽霊の違いの区別をつけることができない例もある。
     結局、幽霊や妖怪とはなんだと言われれば、おもに宮田氏は「自然環境破壊」の結果と、妖怪や幽霊や神を結びつけて、それをベースに論じているのだ。つまり、人間が自然を開拓してきた結果に潜む、とあるエアスポットに妖怪や幽霊や神が出現する。
     一理はあるが、そこまで全部に結びつくことであるかどうかは、議論が必要だろう。

     柳田国男と井上円了の学問の方法スタイルを比較しているのも面白い。柳田は「神が零落した姿」を妖怪としているが、一方井上円了は不思議な現象を分類整理し、最終的には科学的に原因を究明し、原子や電子などの自然現象こそが不思議で、化物は不思議ではないという方向に進んでいく。

     宮田氏はまた、妖怪などの怪異には、子どもや男ではなく、必ず若い女性、下女の存在が怪現象においては重要であることを論じている。つまり、自然を我が物としてコントロールして、都会や農村で暮らしている人間が、何かその自然のなかでコントロールしきれないものを感じる。それが妖怪であり、その現象を感じ取るのは主に若い女性であることを述べている。そして、それはどんな場所で起こるかといえば、どこかの境界、辻、橋など、どこかからどこかへ向かう途中の、あちらとこちらの間に象徴されるところで、怪異の現象が起こるという。
     基本的なことをまとめると、自然破壊、若い女の感受性もしくは暴走、辻や橋などの境界ポイントの三つが揃うと怪異役満ということである。

     本著の中身は、怪現象の事例も多く、楽しんで読めるが、現在、この三つに当てはまらない怪異もスマホなどの情報機器の発達によってもたらされるものなので、ここで宮田氏が示した枠組みが今現在どのように更新されているか、それも読んでみたいと思う所である。つまり、ホラーゲームなどの怪現象のゲーム化はどう論じるのかというところだろう。また、モキュメンタリー風のホラー小説の流行などは、宮田氏の示した枠組みでどう考えれば良いのか。自然破壊・開拓の結果というよりは、自然復活とその超克を願うところもあるのではないか。

  • 妖怪というより、うわさ話に近い題材を取り扱っている一冊。
    非常に判りやすく、今まで民俗学の書籍を読んだことがない方にもお勧め出来そうです。
    ただ、何故若い女性と怪異を結びつけられるのか、著者の見解はあまりこの本では触れられていないので他の本も読む必要がありそうです。

  • 1 妖怪のとらえ方
    2 化物屋敷考
    3 妖怪のトポロジー
    4 都市の妖怪
    参考文献
    あとがき
    解説 常光徹

  • めずらしく小説以外に手をだしてみる。
    女性と妖怪は縁が濃いのか、そういえば、と認識させられる

  • すごく気になるのでいつか読んでみたいです。

  • 要点。
    辻と境について。
    姑獲鳥について。
    妖怪のトポロジー。

  • とてもわかりやすく解説されていました。
    挿絵もあったり、水木しげるさんを例に出したりと妖怪について興味を持っている方は満足していただけると思います。

  • 妖怪というものの存在について語ってくれますが
    妖怪だけでなく逢魔が時とか、妖怪の怪異、怪談など
    幅広く説明してくれています。

    妖怪というものやそれにまつわる民俗学について
    何も知らない無い方は、読んでみるとなんとなく
    日常における視野が変わると思いますよ。

  • とはいっても、あまり古い題材は扱っていない。
    井上円了先生や柳田先生に始まる妖怪を扱った民俗学の考察から、現代に生きる妖怪、若い女性(あるいは子供)の霊的な関係、境界についてなどわかりやすく書いてありました。
    現代に近いオカルト話についても考察しているんだけど、原因は何かとかそういう話でなくて、そういう噂が立つ理由、昔ながらの怪談との共通点を探っていた所が面白いよ!

  • ちょっと想像してたのと違う。。
    学物的に妖怪のことを知りたい!って人向けです。

    でも読んで損はなし。

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著者プロフィール

宮田 登(みやた・のぼる):1936年、神奈川県生まれ。筑波大学教授、神奈川大学教授、国立歴史民俗博物館客員教授、文化庁文化財保護審議会専門委員、江戸東京博物館客員教授、旅の文化研究所所長等を歴任。その関心は民俗学から日本史学、人類学等、周辺諸学におよんだ。柳田賞、毎日出版文化賞特別賞受賞。著書に『江戸のはやり神』『日本の民俗学』『神の民俗誌』『妖怪の民俗学』『山と里の信仰史』『都市とフォークロア』『宮田登 日本を語る』(全16巻)等がある。2000年、没。

「2024年 『柳田國男全集 別巻2 補遺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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