自由の哲学 (ちくま学芸文庫 シ 8-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480087140

作品紹介・あらすじ

「外なる世界と内なる世界、外なる法則性と内なる道徳性との間に横たわる深淵は、ただ自由な魂だけがこれに橋をかけることができる」(本書「あとがき」より)。刊行後100年以上経つ現在も、まばゆい光芒を放ち続ける、シュタイナー全業績の礎をなしている認識論哲学。社会の中で否応なしに生きざるを得ない個としての人間は、個人の究極の自由をどこに見出すことができるのか。また、思考の働きは人類に何をもたらすのか。シュタイナー四大主著の一冊。

感想・レビュー・書評

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  •  シュタイナーの世界認識は、哲学にありがちな煩瑣な分類表とは無縁で、非常にシンプルである。知覚が思考によって概念と結び付けられる、とそれだけである。面白いのは、認識の過程において世界像が動的なものと考えられていることである。知覚によって自分自身を含めた世界は一度ばらばらに分解されるが、それが思考によって再び構築され、「私」もその世界の中に組み入れられる(主観・客観もこの過程で生じる)。したがって、概念も決して静的なものと考えられているわけではない。なんといっても、人間は知覚によってしか世界とかかわることができないのであるから、概念だけが彼岸にアプリオリに存在することはできない。知覚と概念の結合として理解される世界だけが、唯一の実在として誰にとっても同一のものにとどまるのである。
     このような認識にたつと、人間は、現実の世界で経験していくことで概念を常に洗練させていくことになる。それは、実践的道徳についても同様である。感覚だけを信頼して享楽的に生きるだけでもなく、観念的な世界に閉じこもるでもなく、現実の世界で体験し、理解を深めていくことは、自分自身で道徳を作り上げていくことである。自分自身の理念を現実に写しとっていくこと、それは人間が本性的に自由であることに他ならない。

     このような世界理解は現象学にも共通するところがある。また、自身の理念の欲するままに生きることを自由であると呼ぶことは、ベルクソンを髣髴とさせる。しかし、シュタイナーの著書は、非常に単純な図式でこれらをの思想を生き生きと示し、二元論や独我論の陥っている誤謬をわかりやすく指摘する。ここら辺の話は他の本で読むと良くわからないなあ、と思っていたけれど、シュタイナーの説明はすごく理解しやすい。ちょっと不安になるくらい。

     そして、本書の一番の魅力は、この認識論がシュタイナーの人智学に矛盾なく接続しているということである。人間が自由に発展していくためには、感覚的知覚だけで満足することはできない。当然に、「精神的知覚」を世界に組み込むことへの欲求が生じてくる。一見するとそれはオカルトだが、本書を読めば、霊界は決して「もの自体」のように彼岸の存在ではないことがわかる。それは、世界を理解し、自由に生きるために、体験することが不可欠である世界の一部なのである(と思うのだけれどどうだろう)。

  • シュタイナー四大主著のひとつであり,純粋な哲学書。外的な世界を認識する知覚と内的な世界(=概念)を知覚する直観とを思考が繫ぐという独自の一元論を展開する。外的世界とともに概念も実在の半面である。
    「思考によって近くないように結びつけられた概念の内容は主観的ではない。その内容は主観からではなく,現実から取り出されている。それは知覚だけでは獲得できない現実の一部分である。それは経験内容ではあるが,知覚によって与えられた経験内容ではない。概念を現実的なものと考えることのできない人は,概念を頭の中にあるだけの抽象形式だと考えている。」
    勉強不足で自信はないが,この発想は最近の思弁的実在論に通じるものがあるような気がする。

  • 訳:高橋巌、原書名:Die Philosophie der Freiheit(Steiner,Rudolf)
    自由の科学◆自由の現実◆究極の問いかけ

  • 正直、シュタイナー四大著書の中で
    一番苦手な本。

    だって「知ってて当然」みたいに出てくる哲学者たちの名前
    全然知らんし。

    でも「一番好き」って言うアントロ友だちもいる。
    あなたはどちらなのか、まぁ一読を。

  • シュタイナー本人の著作で最初に読むべき本

  • 四大主著。
    27歳のシュタイナーの著書。
    今の私と同じ年・・・情けないけど、仕方ない。

  • 面白いのに難解な哲学書、シュタイナーの基本。
    実際に読んだのは選集(単行本)の方だった。

    基本と言われているものの、哲学入門ではないので、
    基本=入門として読むと半分も読めず放棄すること必至。
    (まぁ、哲学書は複数回読み返して内容を理解し飲み込むのが普通ではあるが)

    だが、面白いことには変わりない故、哲学を学ぶものなら是非読んでおきたい一冊。
    自由とは何か、自由になるためには如何あるべきか、自由をどのように捉えるか、
    考えてしまえば単純なことだが、何となく私たちが考えている自由ということを、
    より深く掘り下げ、知覚させてくれる本である。

    シュタイナーらしく神秘云々の香りはするが、
    理解出来ないレベルではなく、それも一つの思考として納得できる按配。


    恐らく読み返せば読み返すほど面白くなるのだろうと思う。

  • ■何度でも繰り返し読みたい本。

  • シュタイナー初期の著書であり、最高傑作。私見ですが、シュタイナー思想を現実に共有可能性を持たせたのが本書であり、オカルト的要素を含ませて語ったのが神智学等の文献である。

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著者プロフィール

ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)
哲学博士。オーストリア生まれ。ウイーン工科大学で、自然科学・数学・哲学を学ぶ。ゲーテ研究家・著述家・文芸雑誌編集者として世紀末のウィーン・ワイマール・ベルリンで活躍。帝政ロシア生まれのエレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー創唱になる神智学協会のドイツ支部事務総長就任後、袂を分かち、人智学=アントロポゾフィーを樹立。スイス・バーゼル近郊ドルナッハに自身設計した劇場と大学を含む「ゲーテアヌム」を建設し、普遍アントロポゾフィー協会(一般人智学協会)本部とした。

「2023年 『人間発達論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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