空間の詩学 (ちくま学芸文庫 ハ 14-3)

  • 筑摩書房
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480087249

作品紹介・あらすじ

家、宇宙、貝殻、ミニアチュール-人間をとりまくさまざまな空間は、どのような詩的イメージを喚起させるのか?物質的想像力の概念を導入して詩論の新しい地平を切りひらいてきたバシュラールは、この「科学的客観的態度」に疑義を呈するところから、本書を始める。人間の夢想を物質的相からとらえる態度は、「イメージの直接的な力に服従することを拒否することではないか」と。本書では、詩的イメージの根源の価値を明らかにするために、詩的イメージとイメージを創造する意識の行為を結合する、新たなる想像力の現象学を提唱する。バシュラール詩学の頂点をなす最晩年の書。

感想・レビュー・書評

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  • 部分的に読んだ。
    なぜ人は過去にしがみつくのか。
    家という記憶が集約された場所。そして幸せは記憶の中に宿るという記述。
    大学院の調査で、去る東北震災により家をなくした人たちの心境への共感に悩んでいたときに読んだ。若い人たちは新たな居住地にすんなりなじめ、希望を描く事さえも可能であるが、一方で高齢者はなくした家や町を懐かしむ事に従事している。戻ってくるはずがないものに固執する理由はその家に宿っていた「記憶=思い出」の多さに比例するのかもしれない。
    一見当たり前である事柄であるが、改めて言語化されているのでとてもわかりやすかった。

  •     -2024.02.13.読了

  • 文学上の「イメージ」をめぐる現象学という前提で書かれた本書はなかなかに異様なものであり、たいへん興味深い。
    主に詩において言及される「家/巣」「抽出」「貝殻」といったイメージを普遍的なものとして捉え、詩的な人間心理の現象として分析する。
    もともと科学哲学の著作家であったはずのバシュラールは、ここでは完全に文学的な文体を駆使する者であり、自身が詩人と化している。この「現象学」を語るためには、記述者じたいも現象=イメージ界のさなかに身を委ねなければならない、とバシュラールは言いたいようだ。
    かなりの程度の普遍性をもったイメージの分析という、本書のテーマ自体が面白く、さらに深めていくことも出来そうな気がする。
    そういえば芸術音楽というのも、自らの音的なイメージの現象学をやっているようなところがあるが、こちらの現象学については、決して言語では記述しきれないだろう。

  • [ 内容 ]
    家、宇宙、貝殻、ミニアチュール―人間をとりまくさまざまな空間は、どのような詩的イメージを喚起させるのか?
    物質的想像力の概念を導入して詩論の新しい地平を切りひらいてきたバシュラールは、この「科学的客観的態度」に疑義を呈するところから、本書を始める。
    人間の夢想を物質的相からとらえる態度は、「イメージの直接的な力に服従することを拒否することではないか」と。
    本書では、詩的イメージの根源の価値を明らかにするために、詩的イメージとイメージを創造する意識の行為を結合する、新たなる想像力の現象学を提唱する。
    バシュラール詩学の頂点をなす最晩年の書。

    [ 目次 ]
    第1章 家・地下室から屋根裏部屋まで・小屋の意味
    第2章 家と宇宙
    第3章 抽出・箱・および戸棚
    第4章 巣
    第5章 貝殻
    第6章 片隅
    第7章 ミニアチュール
    第8章 内密の無限性
    第9章 外部と内部の弁証法
    第10章 円の現象学

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 独特な文章。別言すると難解。
    詩という非合理的なものを文章という合理に落とし込むという困難さゆえかも。

    科学哲学経由でこちらの世界に逢着した著者。
    理論的であろうとし過ぎて、真逆とも言える情緒やオカルト的な方面に切り返す事例は散見できる。ウィトゲンシュタインも?

  • 純粋昇華されたイメージにとことん付き合うことで、心理主義から抜け出て、さらに豊穣な地平、たましいの地平を探求する。現象学が常に標榜され、対象化せずにあくまで我々に密着したものとしてのイメージを、その個人的意味や情念にとらわれずに展開する。とりとめのないようで恐ろしく厳密という印象を受けるが、果たしてしっかり読んでもそうなのか。
    きちんと読み返さなければいけない。体系的にメッセージを汲み取れるように向き合う価値はある。
    方法論的な問題を掬うために特に第七章以降、部分で言うと、リルケとボードレールが扱われている第八章、ミショーが扱われている第九章は読み返しておきたい。

    いくつかとりとめない抜き書き

    p300
    もちろんエドガー・アラン・ポーが『アッシャー家の崩壊』をかいたのは、耳の幻覚に「なやんでいた」からだ、といつになっても断言することができよう。だが「なやむこと」は「創造すること」とは逆なのである。ポーは「なやんでいる」あいだはたしかにこの物語をかきはしなかったのだ。この物語ではさまざまなイメージが天才的にむすびつけられている。[...]
    このような世界の物音のミニアチュールに直面しては、現象学者は知覚可能なものの秩序をこえるものを、組織的に指摘しなければならない、しかも有機的かつ客観的に。それは耳鳴りのする耳でもなく、大きくひびわれてゆく壁の亀裂でもない。[...]背後の世界には太古の記憶がはたらいている。夢、思想、思い出がただ一つの織物をおりなす。たましいは夢想し、かんがえ、そして空想する。詩人はわれわれを限界状況にみちびいた。それは狂気と理性、生者と死者とのあいだにあって、われわれがのりこえることをおそれる境界である。[...]われわれは予感の存在論をおしえられる。われわれは聴覚以前の緊張状態におかれる。[...]この限界コスモスにおいては、現象となるまえは、一切が指標なのである。その指標が弱ければ弱いほど、それには意味がある。なぜならばそれは根源を指示するからである。
    [ぜんぜん消化できていない]

    p315
    もしわれわれが、この無限性の印象や、無限性のイメージや、あるいは無限性があるイメージにもたらすものを分析することができるとしたならば、たちまちわれわれはもっとも純粋な現象学の領域にはいることができよう――これは現象のない現象学であり、あるいは少し逆説をさけていえば、イメージをうみだす潮をしるには、想像力の諸現象が構成され、完全なイメージとして定着するまでまつにはおよばない現象学である。別のことばでいえば、宏大無限なものは客体ではないから、宏大無限なものの現象学は直接われわれをわれわれの想像する意識にさしむけることであろう。無限性のイメージを分析すると、われわれは自分のうちに純粋想像力の純粋存在を実現することになろう。そうすれば芸術作品は想像者のこの実存主義の副産物であることが明らかになろう。この無限性の夢想のすすむ道では、真の産物は拡大の意識である。われわれは自分が驚嘆する存在の高みにまでたかめられたことを感じる。
    それゆえこの瞑想においては、われわれは「世界のなかへなげだされ」てはいない。なぜならばわれわれは現在みられているありのままの世界、あるいはわれわれが夢みるまえに、過去においてみられた、ありのままの世界を超越することによって、いわば世界をひらくからである。われわれは自分のみすぼらしい存在を意識しているが――狂暴な弁証法の作用によって――われわれは壮大を意識する。そのときわれわれはわれわれの無限に拡大する存在の自然な活動にもどってゆく。

  • (推薦者コメント)
    「物質的想像力」の本。周囲に存在する様々なもの、空間は人間の想像力に働きかけ、何らかのイメージを思い起こさせる。そのイメージはどのようにして生まれるのか。

  • 素晴らしい刺激を受ける部分も多々あるが、読めたとは言い難い。いずれリベンジ。

  • だいーぶ前から一、二頁読んでは置いている本。
    ヤン・シュヴァンクマイエルの映画『アリス』の、
    謎の昇降機で家の裏側(?)を地下へ地下へ
    降りていく心細く心地よい場面を観ている時の気分が
    蔓延している本。
    でもこれって詩「学」なのかなぁ。
    詩論とは言えるけど、へー、これも学問なのかあ…と
    ちょっと意外で信じられない。

  • まだ読み終わってなかった。ディザテーションの時、先生に勧めらたけど、読まずにいた思いでの本。

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