八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
3.53
  • (14)
  • (26)
  • (30)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 468
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480088673

作品紹介・あらすじ

1914年6月28日、サライェヴォに響いた一発の銃声がヨーロッパに戦火を呼びこんだ。網の目のような条約で相互に結ばれた各国指導者たちは、開戦準備に奔走する一方で戦争回避の道を探るが、戦火は瞬く間に拡大する。情報の混乱、指導者たちの誤算と過信。予測不能の情況のなかで、軍の用意していた戦術だけが既定方針として着々と実行され、世界は戦争の泥沼に沈んでいった。-第一次世界大戦の勃発に際し、政治と外交と軍事で何がどう決定され、あるいは決定されなかったかを克明に描いてピュリッツァー賞に輝いた、戦争ノンフィクションの傑作。上巻はブリュッセルの陥落までを収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第一次世界大戦がどう始まったのか。どんな戦争だったのかを知りたくて、何を読めば分かりやすいだろうと調べていたらこの本に出くわした。どうもこれが決定版というのは無いような気もする。多分色んな本があるんだろうけど、どれも決定的にこれと言うのが無いのかな。知らんけど。第二次世界大戦の本を読んで、第一次世界大戦を知らないとどう繋がるのか分からないなと思った。先ずは各国王家の話から入るが姻戚関係が複雑に絡み合っているこの時代の背景を理解しないといけないんだなと思った。第二次世界大戦のように共産党の影はまだ無い。ただ昔の戦争から近代戦への移行期でこの戦争は難しかったんだろうと思った。また結構日本の事が書かれており、日露戦争での日本の勝利における欧州へのインパクトが結構あったんだなと感じた。前半はまだ戦争の端緒くらいで後半により凄惨な戦いの記述が出てくるのだろう。しかし、ドイツやベルギー、フランスは陸続きでもあり、毎回の戦争での遺恨が凄そう。実際今の国民感情ってどうなんだろうとも思う。

  • サライェヴォ事件を端緒に引き起こされた戦乱がいかにして第一次世界大戦という巨大な戦争に発展したかを解き明かす書。上巻は1910年の英国王エドワード7世の葬儀で幕を開け、開戦に至る経緯からブリュッセル陥落までが語られる。
    以下は、軍事史も政治史も読みつけない素人の印象にすぎないけれども。
    狂気の沙汰の如くシュリーフェン・プランに固執しているかと思ったら、戦況が明るいと見るや進行中のおとり作戦も覆してしまうドイツ。サーベルを盲信し重火器を蔑視し、根性論で自ら窮地に陥るフランス。命令系統が錯綜し閣僚と軍人で蜿蜒議論を繰り返すイギリス。彼らの迷走の間で中立を踏みにじられていくベルギー。
    発令が一晩遅れたとか、一隻の戦艦を取り逃がしたとか、小さな間違いが重なりどんどん膨らんで、戦火が広がっていく。凡人のわたしは年がら年中失敗ばかりしでかしているけれど、個人の生死は無論国家の危急存亡に関わることで、政府の要人たちがこれほどたくさんの過ちを犯すものなのか。しかもばかげた感傷や無意味な執着が理由で。
    最初に犠牲となったベルギーと、真の君主として描かれる国王アルベール1世がひたすら気の毒。不幸な歴史の原因は謀略論だけでは究明できない。些細な無知や思い込みや手抜きや過誤が無数に集まって起こる悲劇もたくさんあるのだ。

  • 世界の指導者の多数がこの戦争が数か月で終わると思っていた。これは何を意味するのだろうか。
    ひとつは、彼らが今大戦が長期にわたる消耗戦の様相を呈するとは思っていなかったということだ。もうひとつは短期間で終わりにしたいという願望を持っていたということだ。
    また、ドイツ皇帝が二正面作戦を恐れ、イギリスが参戦を躊躇したのはなぜだろうか。それは一たび開戦となれば、兵員の動員がシステマチックに行われて時の為政者のコントロールの及ばない程に展開が広域化していくことを意味するのではないだろうか。少なくともその予感のうちにあったことだろう。

    キューバ危機でケネディー大統領が恐れていたことは以上のことを踏まえてのことであり、第一次大戦の政治的、軍事的な展開が時代の近代性(官僚制や鉄道網や最新兵器)を介すことで指導者たちの手から離れていたことを感じる。そして最後にそれを象徴したのは反乱や革命だった。

  • 第一次世界大戦の詳細な推移については、ほとんど知るところがなかったのだが、この著作によって、まるでドキュメンタリー映画を見るかのようにその経過を辿ることができる。

  • トレーダージョーズ創業者のJoe Coulombeが自伝の中でthe best book on management -and, especially, mismanagement- I've ever readと述べていた。前から気になっていた本でもあるので読んでみた。Coulombeが本書から引き出した教訓は、If you adopt a reasonable strategy, as opposed to waiting for an optimum strategy, and stick with it, you'll probably succeed. Tenacity is as important as brilliance.だそうである。読む人により得るものも違うものだ。reasonable strategyとoptimum strategyの対比はどのあたりを指しているかもよくわからなかった。Tenacity、粘り強さの欠如はドイツ側については当てはまるだろう。シュリーフェンが描いたプランは右翼からのフランス軍包囲が肝だったが、カンネー的大勝利を夢見て左翼にも中途半端に兵力を回したりしてしまった(あ、もしかしてカンネー的大勝利がoptimumなのか?)。東部戦線に2個軍団を回してしまったことも然りかもしれない。しかし連合国側はなにが執着すべきstrategyであったかさえはっきりしない。

    ケネディ兄弟がキューバ危機に際して読んでいたとの伝説(?)も耳にしていたので、いかにして戦争が始まってしまったかの本なのかとも思っていた。上巻の前半部くらいはまさにその通りの内容なのだが、各国首脳とも互いを武力でぶっ潰すことしか考えていないようなところがあり、戦争になったのは半ば必然とも感じられた。時事ネタで言えば、プーチンをこの時代のどこかの国の首脳に据えてやればまったく違和感がない。

    個人的にはWWⅠといえば塹壕戦で膠着状態くらいの予備知識しかなかったので、最初の30日はこんなにダイナミックであったことは初めて知った。

    あと翻訳はもうちょっと何とかならなかったのであろうか。原文にあたってみたくなる箇所が多かった。古い本だし、と思ってネットを探すも見つからず断念。

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738270

  •  すでに4,5回読んでいますが、友人に上下巻とも借りパクされたので再購入し、再読。
     ・・・たくさん書き込みしていたのに・・・(´;ω;`)。

     『八月の砲声』は言わずと知れたバーバラ・タックマンの代表作。タックマンは本書でピュリッツァー賞を受賞しました。

     その上巻である本書は、英国王エドワード七世の大葬から物語が始まります。
     それから話は、このエドワード七世が主導したドイツ包囲外交を皮切りに、独仏英露の軍事計画とその準備の詳細に及びます。
     そして運命のサラエボ事件を発端にとうとう大戦が勃発、ドイツ軍がベルギーのブリュッセルを陥落させるところで完結します(それ以降の戦局推移は下巻で展開されます)。

     本書の特徴を端的に表すと、詳細かつ膨大な情報量と、それを最高に面白く表現した筆致でしょうか。
     とにかく情報量がすごい。参考文献や出典は(それだけで同程度の紙面を割くことになる理由から)本書での掲載は見送られたほどです。文献からの引用部分は「」付きで表現されていますが、これが本当に至る所に出てきます。国家の公式広報から一兵士の日記まで、すべてをあさったのでしょう。かなり調べ上げられています。

     単に情報が豊富なだけならただの文献集ですが、本書はこれら情報を駆使して絶妙な筆致で物語を表現しています(そういった意味で司馬遼太郎を連想させます)
     ロシアやドイツの閣僚人事や人間関係の内幕が滑稽に描かれている一方で、開戦前夜の各国のやりとりは緊迫感を持って、また劇的な表現で描写されています。
     ドイツから最後通牒を突き付けられた小国ベルギーの国王アルベールは臣下たちとの徹夜の激論の末に中立を守り通して抗戦することを決意しますが、その国王が(ドイツへの)回答文を手に白みかけた暁の空を眺めるシーンに、私はグッときました。こういった硬軟の使い分けも絶妙です。
     第一次世界大戦に詳しくない方が読んだとしても、十分に物語を楽しめること請け合いです。


     本書は1962年に出版され、ベストセラーとなりました。その理由は大方想像できます。一つは上記の通り、物語そのものが純粋に面白いから。そしてもう一つは、恐らく本書の構成が「極悪ドイツに対する勧善懲悪」で描かれているからでしょう。

     第二次大戦のナチスの記憶がまだ残る1960年代に、ユダヤ人作家が描くドイツ像がそのように表現されるのはやむを得ないことだと思います。
     しかしこれが「歴史と真摯に向き合う」姿勢かと言われると、疑問です。
     タックマンは本書前半のいたるところで、フィヒテやヘーゲル、ニーチェのドイツ優越主義的な発言を引用し「そのようなドイツ人の思い上がりが戦争を招いた」と暗にほのめかします。ただ、本当にそのような「思い上がり」が戦争を引き起こしたのでしょうか?

     ドイツ皇帝ヴィルヘルムは途中で何度も総動員を取りやめるよう行動し、そのたびに参謀総長の小モルトケと衝突します。そして最後まで戦争回避のためにロシアのニコライにコンタクトを取り続けます。
     その小モルトケですらも(狭量ではあったが)自己の職務遂行というの官僚的発想から総動員を推し進めたにすぎません。
     首相のベートマンや外相のヤゴウは急激に悪化する事態に翻弄されます。
     これらドイツの主要人物たちに共通して見られたのは「思い上がり」ではなく、人間本来の「弱さ」でした。

     恣意性をもって情報を引用している個所もちらほら見られます。そのため、歴史考証という点ではある程度割り引いて読む必要があると思います。

  • 第一次世界大戦が何故勃発したのか?
    様々な要因は指摘されるだろうが、世界に冠たる大英帝国と急激に国力を勃興させてきたドイツとそれを支える思想。
    何よりドイツを指導するのが、情緒不安定気味なカイザーヴィルヘルム2世。

  • 面白い!長いけれどとても面白い!

  • 歴史
    軍事
    戦争

全24件中 1 - 10件を表示

バーバラ・W・タックマンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×