- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480088772
作品紹介・あらすじ
意表を突く構図、強烈な色、グロテスクなフォルム-近世絵画史において長く傍系とされてきた岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳ら表現主義的傾向の画家たち。本書は、奇矯(エキセントリック)で幻想的(ファンタスティック)なイメージの表出を特徴とする彼らを「奇想」という言葉で定義して、"異端"ではなく"主流"の中での前衛と再評価する。刊行時、絵画史を書き換える画期的著作としてセンセーションを巻き起こし、若冲らの大規模な再評価の火付け役ともなった名著、待望の文庫化。大胆で斬新、度肝を抜かれる奇想画家の世界へようこそ!図版多数。
感想・レビュー・書評
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それぞれの画家の個性と作品のもつパワーが、相互に作用しているのが感じられます。1968年の雑誌連載をまとめたものとのことですが、古さは全く感じられず、むしろ新鮮な力を持った文章だと思います。
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都立美術館で行われた奇想の系譜企画展をきっかけに読みました!
江戸美術が広まったきっかけとなった著書。大変楽しく読ませてもらいました。 -
奇想の系譜を読み、『奇想の系譜展」を観覧してきた。
個人的には岩佐又兵衛狙いだったのだが、本書を読んで思っていた感覚と実際に見た感覚には少し乖離があった。
彼等は決して奇をてらってあた訳ではなく、時代背景や伝統からくる様々な制約という殻を破り、人々の生活や感情、もっと言えば人間の本質を描きたかったのではないかという事を強く感じた。 -
日本美術史家の辻惟雄先生が40年ほども昔に書かれた名著。80歳を越えた大御所の先生にも若くて熱い頃があったんだなぁ、と微笑ましく読みました。この本が書かれていなかったら、今、これほどまでに江戸絵画に注目が集まっていなかっただろうと言われています。なにしろ、先生の筆の走ることといったら、スーパーカーのよう。今すぐにでも実物を見たくなる気持ちに駆り立てられる力に溢れています。
先日、京都国立博物館でその奇想に身の毛がよだった狩野山雪も取り上げられていて、より興味深くその人物像を知ることができました。6人の中では岩佐又兵衛にもっとも興味がわきました。山中常盤、いつか、じっくりと見てみたい。 -
70年代にこの本を出したのは本当にすごいと思う。現在の若冲・蕭白ブームの立役者。(いいぞもっとやれ)
あっさりすっきり地味にこぎれいにまとまって侘び寂びであることが特徴のように思われてしまいがちな日本美術ではありますが、決してそんなことはない! と判りやすく面白く導いてくれる入門書。
そしてこれを読んだら、是非に是非に、近くの美術館へ出かけることを勧めたいのです。まったく違った世界がそこにはあるはずですから! -
この本は歴史的な背景や位置づけをわかってないとホントの評価はできない。若冲などがすでに十分に再評価された現状においては、どの程度価値があるのか判断が難しい。<br>
しかし解説を読むと、その価値は高そうだ。淡々と既知のことが書かれているように見えて、当時一般にはほとんど知られていなかったことであったりする。そこには著者と読者の知識に相当のギャップがあるのだろう。<br>
自分には絵を見る目はないが、若冲の絵を見るにつけ、なぜかルソーを思い出していた。思いもかけず指摘された類似性に、案外的外れじゃなかったのかと嬉しくなったな。<br>
あと、蕭白かっけぇ。<br>
(2007/10/3) -
あまりにも有名な辻惟雄による美術書。ほとんどの作家を事前に展覧会などで見てからこの本に行き着いたわけだけれど、面白い。なんだか、これを読んでて思ったんですけど、この人は写真家みたいですね。あくまで表現者は奇想の画家達なわけであって。けれど、こうゆう切り取り方をすると本当に面白いという。やっぱり、ある種の表現者なんじゃないかな。
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岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳の作品紹介と評伝をまとめた本。1970年に、こうやって、このへんの画家をまとめて紹介したという功績は大きいだろうなと思う。俺が国芳とかを意識して見るようになった1982年くらいでも、まだ国芳の戯画のまとまった画集とかは無かったわけだし。若冲の入手しやすい画集なんて、未だに無いし、蕭白の画集も美術全集くらいしか見ない。しかし、この本に取り上げられている「奇想」の画家達に共通するのが、卓抜したテクニシャンであるというのが、何というか当たり前だけど面白い。「奇想」なんてものを形にするには、相当な技術が必要なのは当たり前というか前人未到に説得力を与えるのがテクニックというか、それを思い知らされる。日本画のイメージって、未だ固定的な気もするから、この本の役割はまだ終わってないのだと思う。
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『奇想の系譜』
辻惟雄
2004年
ちくま学芸文庫
著者である辻惟雄(つじ のぶお)の代表作。
当時1970年に刊行され、
その後新版が出され私がいま手にとっている
文庫版が出されたのが2004年である。
この長期間の間に本書で紹介された
エキセントリックな6人の画家の人気に
劇的な変化が起こったわけだが、
本書で紹介された「奇想」な6人、
岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、
曾我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳を紹介していく。
⬛︎岩佐又兵衛(いわさ またべえ)
1578〜1650年
摂津伊丹城主として織田信長に仕えた
荒木村重の妾腹(しょうふく)の子として生まれる。
義経伝説に基づく物語絵巻
「山中常磐」(やまなかときわ)が紹介されるが
幕末から明治にかけて活躍した絵師、
月岡芳年の「血みどろ絵」の本家というべきかは
定かではないがおどろおどろしい
凄惨な「常盤殺し」や「首運びの行列」の描写は
思わず目を覆いたくなる。
⬛︎狩野山雪(かのう さんせつ)
1590〜1651年
狩野山雪の養父である狩野山楽は、
狩野永徳、長谷川等伯、
海北友松(かいほうゆうしょう)と共に、
桃山画壇の四巨匠の一人に数えられた画人。
狩野山楽は、
かの豊臣秀吉の小姓として仕えていた時、
その非凡な画才に眼をつけた秀吉が、
狩野派の代表的画人、
狩野永徳に弟子入りさせたのが
画家としての出発点と伝えられる。
そんな養父の跡継ぎとなったのが
狩野山雪である。
山雪が描いた作品の中で特筆すべきは、
白梅の巨大で躍動感溢れる幹が印象的な
「梅に山鳥図」や「老梅図』」
グロテスクでホラーな「寒山拾得図」だろう。
⬛︎伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)
1716〜1800年
詳しくは前々回投稿した
『よみがえる天才1 伊藤若冲』に譲るとして
本書でも若冲の代表作
「動植綵絵(どうしょくさいえ)」が
取り上げられており、
近年一気に人気が高まった画人だ。
⬛︎曾我蕭白(そが しょうはく)
1730〜1781年
代表作『郡仙図屏風』や
荒々しく豪快なまでの筆致はなにか
禍々しいものがその画に取り憑いているような
オーラを放っている。
本書で取り上げられた6人の内で
最もエキセントリックで「奇想」な
画力とキャラクターを持ちあわせていたのが
曾我蕭白だと感じる。
本書文庫版の表紙に蕭白の
代表作「龍雲図」を起用するあたり、
著者である辻惟雄は本書執筆のキーマンとして
蕭白を推したのではないかと推測する。
⬛︎長沢蘆雪(ながさわ ろせつ)
1754〜1799年
いわゆる「円山派」の祖である
円山応挙の弟子である蘆雪の代表作といえば
無量寺の「虎図」だろう。
決して荒々しくはないが獲物を狙ってるかよのうな
その姿は独特の存在感を漂わせている。
ちなみに現在、九州国立博物館で
特別展「生誕270年 長沢芦雪」が開催されている。
もちろん足を運ぶつもりだ。
⬛︎歌川国芳(うたがわ くによし)
1798〜1861年
風景画で有名な歌川広重とは同い年。
国芳の父の友人だった歌川豊国の弟子となり、
30歳の時に描いた「通俗水滸伝豪傑百八人之一人」が
デビュー作となる。
それがウケて「武者絵の国芳」として人気が高まる。
そんな国芳の画の中で本書が取り上げたのは
「讃岐院眷属(さぬきいんけんぞく)をして為朝(ためとも)をすくう図」など大迫力の画だ。
だが個人的には、
国芳と言えば巨大な餓者髑髏の妖術で知られる
『相馬の古内裏』や猫画である。
何を隠そう、
私が若冲や国芳、それに連なる月岡芳年を
好きになったのもこの国芳が描く
可愛らしい猫たちに惹かれたからだった。
以上、
6人のエキセントリックな画人たちを紹介してきた。
安土時代から江戸時代に
決して王道ではなく個性を爆発させた
「奇想」の画家たちは現在、
日本だけでなく海外からも注目されている。
その人気の高騰の一翼を担っているのが
本書『奇想の系譜』であるのは言うまでもない。
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⚫︎目次情報⚫︎
憂世と浮世──岩佐又兵衛
桃山の巨木の痙攣──狩野山雪
幻想の博物誌──伊藤若冲
狂気の里の仙人たち──曽我蕭白
鳥獣悪戯──長沢蘆雪
幕末怪猫変化──歌川国芳
あとがき
新版あとがき
文庫版あとがき
参考文献
図版一覧
年 表
解説(服部幸雄)
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