フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089359

作品紹介・あらすじ

なぜ、弱さは強さよりも深いのか?なぜ、われわれは脆くはかないものにこそ惹かれるのか?"「弱さ」は「強さ」の欠如ではない。「弱さ」というそれ自体の特徴をもった劇的でピアニッシモな現象なのである。部分でしかなく、引きちぎられた断片でしかないようなのに、ときに全体をおびやかし、総体に抵抗する透明な微細力をもっているのである"という著者が、薄弱・断片・あやうさ・曖昧・境界・異端など、従来かえりみられてこなかったfragileな感覚に様々な側面から光りをあて、「弱さ」のもつ新しい意味を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 東大や京大、アメリカの著名な学校のMBAホルダーばっかりの某企業のマーケティング部にいた頃、強くなければ生きている意味がない、と思っていました。毎日が闘い。フィリップ・マーロウの「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きている意味がない」を唱えながら日々過ごしていました。
    そんな中、尊敬する部長のお子様の作文のタイトルをふとしたこら知りました。曰く「I am a looser ぼくは負け犬」
    新鮮でした。
    私はもともととても弱い人で、こわがり。それなのに、生きていくために、弱さを封印して、「頑張り」「気勢」といった名前の鎧を身につけながら、あまりの重さにとっても疲れながら会社員をしていたものです。

    「フラジャイル」では、無視されがちな「弱さ」に注目します。
    「弱さ」は「強さ」の欠如ではなく、それ自体が特徴をもった現象だという。。。

    そうなんだ、そうですよね。

    弱いからこそ、知ることができる、深い深い世界があるということ、隠さず、むしろ、大事にすべきだ、と気付かされる衝撃の一冊です。

    とても個人的なレビューで参考になりませんね。ごめんなさい。

  • 少なくとも本書が創刊された1995年の時点で、松岡正剛は今流行りの「ネットワーカー」「ノマド」としての生き方に着目をしている。

    この松岡正剛の見方を持ってすれば、現行の「ネットワーカー」や「ノマド」に注がれる意識の欠陥は、まさにその「『欠陥』を認識していない」というところに集約される。

    「ネットワーカー」にしろ「ノマド」にせよ、それは本書のサブタイトルに示されているように「弱さから出発」するものであり、そこを無視した「ネットワーカー」や「ノマド」に深みが生まれるはずもない。なぜなら松岡正剛の指摘によれば、「弱さ」こそが深みをもたらすのだから。

    表舞台にたった「ネットワーカー」や「ノマド」たちだが、もともとが底辺が故に頂上とつながることのできた彼らだ。

    その過程をや性質を無視して、そのまま頂上に放り出されてしまえば、ある時そこから放り出されたときに、そのまま高いところから地面へたたきつけられるだけだろう。

    「ネットワーカー」や「ノマド」の強さは底辺から、すなわち弱さから出発しているというところにあるのであり、その背景を忘れない限り、彼らは頂点でいると同時に底辺と接続し続ける。

    それ故、彼らには頂点から放りだされて地面に激突するという事態が起こるはずもないのだ。「ネットワーカー」や「ノマド」とは、底辺と頂点との混合物なのだから。

  • 文学は敗者にこそ在ると思います。

  • 松岡正剛の著作を制覇したい。
    めちゃめちゃ面白かった。
    強い/弱いを優秀/劣等ではない軸に置き直して議論した文章。揺らぎのある"弱さ”の方が豊かで物語性に富んでいることは自明のように思って、議論する余地があるのか疑問に思っていたが、確かによく紐解いてみると、差別や人間の起源や制度や楽しみの起源につなげることができる面白いテーマだった。「動物の赤ちゃんが可愛いのは庇護欲をそそるから」をもっと掘り下げることができる。構成能力すごい。特に被差別の話を健常に近い筆者が自由に論じている部分に憧れた。精神障害とニューロンのパターン、癩病者が差別を受けながらもネットワークを作ったこと、相対的な弱さを設定することで強さとの逆転が生じうる、欠けた者が力を持つ。確かに病弱への憧れ、ある。クリムトから始まったファッションモデルの細さ信仰にもつなげることができるだろうか。踊りや神輿担ぎのふらつきを模した足取りと、歩行困難性、片足、シンデレラの片靴をつなげる部分は鮮やかだった。シンデレラの場合、今シンデレラのイメージとされている可憐さや魔法や豪華さはむしろ(子供に届ける)"方法"の方だったのかな?
    シャーマニズムや、此岸から彼岸を覗き見る場についての記述が通底していたのもすご〜〜く好きだった。呪術と現代社会を切り離して考えてしまうことが多いが、綱引きの綱のつながり、一夜の遊女のイメージとして、お祭りとかお参りとかで区分けされてない日常の中のダブルイメージを想像できてよかった。辻・門・境目・夕占・杖・呪文・ここと向こうの感覚も非常に普通なものだったんだろうな。
    科学と文化をなめらかに行き来できるのが本当に気持ちいい。
    あと普通にONE PIECEやらあんスタやらの現代エンタメのリファレンス先も見つけたようで嬉しかった。
    筆者は本当に名伯楽で、この人が評価することで色々なものがジャンルを超えて場に並ぶことができる。素晴らしい。
    定着よりも遷移を。勝者の歴史(histoire)より敗者の物語(histoire)。忘れた後にも残るモヤを。
    もう一回読みたい本。

  • 2年ぐらい前からレコメンされてたんだけど引用や例えが馴染みのないものが多くて、ググりながら読んでいたからかなり時間がかかってしまったけどやっと読了。弱さや弱点を持つ全ての人に読んで欲しい一冊。
    思っていたことが言語化されていて、さらにその奥の奥まで言及されていてた。95年に書かれた本書で指摘されていることが、今現在さらに進行していることもとても興味深い。
    そして弱者/追いやられる側のアウトロー/やくざの成り立ちについても書かれていて、次に読もうしている現代やくさ肯定論に通じるタイミング感にも うわっ てなったし、やっぱ明治に入った辺りでそれまで機能していたものが色々ちぐはぐになったと思ってたけど、これを読んでさらにその思いが深まった。
    2週目もまた必ず収穫がある一冊。

  • おもしろいテーマだけどまだこの時はきっとまとまりきってなかったんだろうな。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 人生に定期的に訪れる倦怠感に悩まされてきたときに読んだ『フラジャイル』。自らのうちに住む「強者」と「弱者」。後者を飼いならさぬことには、前進を続けることはできない。歴史や文学、ときに物理や生物まで、縦横無尽な知でたどるフラジリティ。

  • [ 内容 ]
    なぜ、弱さは強さよりも深いのか?
    なぜ、われわれは脆くはかないものにこそ惹かれるのか?
    “「弱さ」は「強さ」の欠如ではない。
    「弱さ」というそれ自体の特徴をもった劇的でピアニッシモな現象なのである。
    部分でしかなく、引きちぎられた断片でしかないようなのに、ときに全体をおびやかし、総体に抵抗する透明な微細力をもっているのである”という著者が、薄弱・断片・あやうさ・曖昧・境界・異端など、従来かえりみられてこなかったfragileな感覚に様々な側面から光りをあて、「弱さ」のもつ新しい意味を探る。

    [ 目次 ]
    1 ウィーク・ソートで?
    2 忘れられた感覚
    3 身体から場所へ
    4 感性の背景
    5 異例の伝説
    6 フラジャイルな反撃

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 1/15 読了。
    これはたぶん一生好きな本になる。

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著者プロフィール

一九四四年、京都府生まれ。編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。一九七〇年代、工作舎を設立し『遊』を創刊。一九八〇年代、人間の思想や創造性に関わる総合的な方法論として″編集工学〟を提唱し、現在まで、日本・経済・物語文化、自然・生命科学、宇宙物理、デザイン、意匠図像、文字世界等の研究を深め、その成果をプロジェクトの監修や総合演出、企画構成、メディアプロデュース等で展開。二〇〇〇年、ブックアーカイブ「千夜千冊」の執筆をスタート、古今東西の知を紹介する。同時に、編集工学をカリキュラム化した「イシス編集学校」を創設。二〇〇九~一二年、丸善店内にショップ・イン・ショップ「松丸本舗」をプロデュース、読者体験の可能性を広げる″ブックウエア構想〟を実践する。近著に『松丸本舗主義』『連塾方法日本1~3』『意身伝心』。

「2016年 『アートエリアB1 5周年記念記録集 上方遊歩46景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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