哲学的思考 フッサール現象学の核心 (ちくま学芸文庫)

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  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089373

感想・レビュー・書評

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  • フッサール現象学が西研らしい平易な言葉で書かれている。そして、人びとは相手の言葉を咀嚼して自らと照らし合わせることで理解し合えるんだという、西研の信念が垣間見える。そのためにこそ哲学や思想はあるべきだと語りきる姿勢に心も動かされる。

  • フッサール現象学の独自の解釈で知られる竹田青嗣の盟友ともいうべき著者が、竹田と同様の観点からフッサールの思想をわかりやすく解説している本です。

    ただし、竹田がやや早急に、みずからのエロス論の土俵にフッサールの議論を引っ張っていくきらいがあるのに対して、著者はフッサール現象学の核心を、学問の「客観性」についての問いを突きつめたところに見ている点で、どちらかといえばよりフッサール自身の意図に寄りそった解説に努めている、といった印象を受けます。

    とはいえ、フッサール自身の学問論に立ち入っているわけではなく、人びとのあいだで共通了解を築いていくための方法としてフッサールの意図を解釈している点では、著者の立場も竹田とそれほど大きくへだたってはいないのかもしれません。そもそも竹田のほうが、著者のヘーゲル解釈をみずからの現象学理解のなかに取り入れていくことで、両者が接近していったという側面もあるように思います。

    いずれにせよ、フッサールの思想の忠実な解説とはいいがたいところがあるものの、著者自身の観点からその意義をていねいに論じた本だと思います。

  • 『哲学的思考』という題名ですが、ほとんどフッサール現象学について書かれています。

    現象学は、「みんな一緒」という前提にたっていると思います。みんなが自分と同じような「意識」を持ってることを前提にするのです。「そうでないとすれば、どうして私たちは目の前の出来事についてみんなが同じような捉え方をすると確信してるのか?」というのです。

    ただ、僕が思うに、その「みんな一緒」という前提には、期待とか願望が入っているように思います。「当たり前のこと」として受け入れるのです。その飛躍を現象学は説明していないので、僕は現象学にはあまり魅力を感じません。

    でも、西さんの明解で読者に寄り添うような語り口は好きです。

  • 予約2
    時間なく読まずに返却

  • サブタイトルにあるように、フッサールの思想について書かれている。フッサールと言われてピンと来る人は少ないだろうが、フッサールの現象学を全く知らない人でも、本書を読むことでフッサールの核となる部分を理解できる。

    思想(哲学)はたいていの場合難しい。しかも、現代に近づけば近づく程言葉が難解になって、より複雑さを増していくように思える。フッサールの思想も例外ではない。他のひとが書いたフッサールの本をいくつか読んだことがあるが、理解に時間がかかる、もしくはわからないで終わるということが多くある。しかし、著者の西研さんの文章は本当にわかりやすい。この難解と思われる思想をここまですんなりと理解できしまうものだろうかと驚いてしまった。理解できるだけではなくて、読むだけでフッサールにどんどん興味がわいてくる。

    今までフッサールを知らなかった人、哲学に興味を持ち始めた人に読んでほしい。

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著者プロフィール

哲学者。京都精華大学社会メディア学科助教授。哲学者らしからぬ軽い風貌と語り口で若いファンを多くもつ。「普通の人々の心に届く新しい哲学を構築するのは彼しかいない」といわれる期待の学者。著書は、『哲学的思考』(筑摩書房)、『実存からの冒険』(ちくま学芸文庫)、『ヘーゲル・大人のなりかた』『哲学のモノサシ』(NHK出版)、『哲学は何の役に立つのか』(洋泉社新書y、佐藤幹夫との共著)など多数。現在、『哲学のモノサシ』シリーズを執筆中。

・もう一つのプロフィール……
だれに聞いても「怒った顔をみたことがない」という温厚な哲学者。学生からの人気はピカイチ。天才的頭脳の持ち主にしては「ちょっと軟弱」「貫禄がない」との評もあるが本人は全然気にしていないようだ。

「2004年 『不美人論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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