算法少女 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.57
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本棚登録 : 843
レビュー : 142
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480090133

作品紹介・あらすじ

父・千葉桃三から算法の手ほどきを受けていた町娘あきは、ある日、観音さまに奉納された算額に誤りを見つけ声をあげた…。その出来事を聞き及んだ久留米藩主・有馬侯は、あきを姫君の算法指南役にしようとするが、騒動がもちあがる。上方算法に対抗心を燃やす関流の実力者・藤田貞資が、あきと同じ年頃の、関流を学ぶ娘と競わせることを画策。はたしてその結果は…。安永4(1775)年に刊行された和算書『算法少女』の成立をめぐる史実をていねいに拾いながら、豊かに色づけた少年少女むけ歴史小説の名作。江戸時代、いかに和算が庶民の間に広まっていたか、それを学ぶことがいかに歓びであったかを、いきいきと描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 冲方丁さんの『天地明察』を読んで以来、なんとなく和算に関する本に目がいくようになりました。
    本書も以前から読んでみたくて購入していたのですが、しばらく積読本の山に埋もれていました。

    江戸時代の和算書『算法少女』に影響を受けた著者が、当時の史実をもとに創作した児童文学です。
    1973年に岩崎書店から刊行され、一度は増刷が打ち切られたものの、多くの人からの声によってちくま学芸文庫から復刊されています。
    初めて刊行されてから約40年が経過しているにも関わらず、とてもみずみずしく楽しい物語でした。

    主人公のあきは、町医者の父から算法を教わっており、かなりの実力を持った少女です。
    観音様のお祭りの日、奉納された算額絵馬の間違いを指摘したことから、その実力が周りで評価されはじめ、ついにはお屋敷からもお声がかかり…。

    江戸時代、武士や町人といった身分に関わらず、算法が広まっていたことがよくわかります。
    また関孝和からはじまる関流の算法と、他流の算法とのあいだにある優劣の競い合いなど、当時の日本の学問の状況が垣間見えるのもおもしろかったです。
    自流のやり方に固執する人もいれば、海外にまで視野を広げて学問の現状を変えたいと願う人もいる。
    時代は違えど、同じような状況は現代でもありますよね。

    あきがまだ若いのにしっかりしていて、読んでいて気持ちがよかったです。
    周囲の大人の声に流されず、自分で考え、自分の思ったように行動する。
    あきの行動力と度胸に、力をもらった人も多いはず。

  • 江戸神田の町人、木賃宿で暮らす人々、お武家様、お大名、そして算法学者、といった登場人物たちの暮らしや関係性が描かれ、読み物として楽しい。司馬遼太郎などがよく言う、江戸時代町人の持つ合理主義を尊ぶ精神、その一方で流派の面目争いにとらわれて視野狭窄に陥る人々の姿、先進的で西洋の数学もどん欲に研究する人、などなどエッセンスはじゅうぶん。もともと少年少女向けの物語ということもあり平易な文章でさくっと読める。

  • 江戸時代のリケジョの話なのだが、非常に面白い。同名の元ネタの本は、安永4年(1775)に刊行された和算書。本書は、最初に岩崎書店から1973年に出版されている。児童向けではあるが、大人が読んでも楽しめる、数学が苦手でも大丈夫。漢字にふりがながふってあるし。あと、挿絵が秀逸。

  • 一度絶版になるも復刊ドットコムの投票を得て2006年ちくま学芸文庫から復刊された本です。
    私も早速、書店で買い求めて読みました。
    感想。
    面白かった!!!
    です。
    実に素直に伸び伸びと書かれているのですね、全体が。
    算数好きの少女の物語と言えば、そうなのですが、
    それ以上に人への思いやりとか、学問への真摯な情熱が描かれている本です。
    読み終えた後の爽やかな読後感、たまりません。
    まだ読まれたいない方は、是非読んでみては、とお奨めです。
    すぐに読めます。

  • 父・千葉桃三から算法の手ほどきを受けていた町人のあき。ある日、その噂を聞きつけた久留米藩主・有馬候に姫君の算法指南役を申し付けられますが…。安永4(1775)年に実際に刊行された和算書『算法少女』の成立をめぐる、歴史小説です。

  • まぁ悪くなかった、という感じ?
    結構淡々とした物語でしたが。
    昔の暮らし向きや、江戸時代における算数の在り方はよく分かったので、そういう意味で、面白かったかな。

    考えてみたら、時期的には当たり前なのかもしれないが、江戸時代に円周率の話をしているとは、あまり考えたことがなくて、意外な感じでした。

  • 面白かった。
    あまりお話の本を読まないウチの子も、珍しく一気に読んで面白かったと言っていた。
    『天と地を測った男』同様、江戸時代の人の科学に対する姿勢というか、真実を追究しようとする純粋な気持ちが描かれていて、新鮮。
    文章も素晴らしく、物語に引き込まれる。
    市立図書館の分館の閉架書庫に眠らせておくのはもったいない本。

  • 95点。おもしろい!
    文庫じゃなくて児童書の形をしていたら小学校から読めるし、小学校の図書館にも置きたい。
    あとがきにその辺りの岩崎書店への恨み辛み?が書いてあって、大人は楽しめる。

    中学生には絶対すすめたい本で、「万葉集に九九が載っている」とか「「絵馬」に数学の問題と解き方を書いた「算額」というのがあった」とか「江戸時代にも円周率を解いていた」とか誘い口もいろいろ。

    なんといっても、主人公の町医者の娘のあきが、まっすぐで広い心を持っていて、読後感がすがすがしい。

    魅力的な登場人物も多くて大人も子どもも楽しめる本。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「岩崎書店への恨み辛み」
      へぇ~それだけ読んでみようかな?
      実は「天地明察」のお陰で、個人的には算数ブームなんです。
      「岩崎書店への恨み辛み」
      へぇ~それだけ読んでみようかな?
      実は「天地明察」のお陰で、個人的には算数ブームなんです。
      2012/12/25
  • 書名の『算法少女』というのは、江戸時代・安永4年(1775年)に千葉あきという女性が著した和算の本の書名。この本は、その千葉あきの少女時代の物語。

    あきは江戸時代の町医者の娘。算法好きの父の薫陶よろしきを得て、なかなかの算法使い。母からは、算法などという役に立たないものを女だてらに学ぶことを反対されているが、それを明るく受け流すおおらかさと賢さがある。

    あきの評判を聞いて、算法家でもある久留米藩主の有馬頼徸(よりゆき)が、娘の学友としてあきに白羽の矢を立てるが、頼徸に使える算法家の藤田貞資(さだすけ)が、身分の違いや算法の流派の違いを理由に別の娘を推したために、頼徸の出題で2人の娘の算法比べが行なわれることになる。

    物語はその算法比べをめぐって進むが、党派的利害という狭い了見の愚かさ、算法は身分や職業にかかわらず必要であるということ、真理に心を開くことの大切さといったメッセージが、算法少女のゆれる心を通して読む者に伝わってくる。

    善良な町医者の父、娘の将来を案じる母、あきの才能を認めてメジャーデビューの手伝いをしようとする俳人、あきに勝ってほしいと応援する友だち、あきの算法教室に集う子どもたちなど、多彩な登場人物の描写からうかがえる江戸の町民のスローな暮らしぶりも心地よい。

    ちなみに、物語『算法少女』の著者は中学校や養護学校で教えた女性教師。父親は工業化学技術者の娘で、幕末から明治初期の日本の理化学について研究していた趣味の科学史家。その父から和算書『算法少女』の書名を聞いたことがきっかけで、物語『算法少女』を書いた。時代を超えて2組の父娘が重なっているようでもある。

  • 少年少女向けの歴史小説で、一気に短時間で読み終わるボリュームですが、かなり楽しめます。
    なにより、「算法少女」という同じ題名の和算書が安永四年(1775年)に実際に出版されていたこと、そして著者が町医者とその娘であることを知ることができたのは大きな喜びです。日本では、明治維新前にも女性が数学を学び、本まで出していたのです!
    幕末に日本を訪れた西洋人が、日本女性の学識の高さに驚いて「中国女性よりも進んでいる」と言っていたことを思い出しました。
    コピー機のない時代に、国立国会図書館で原書の復刻版を薄紙に書き写した著者の情熱と思い入れ。物語りも、読む人にわかりやすく書かれている温かさを感じました。
    また、素敵な挿絵が豊富に、ほぼ4ページに一枚の割合で入っていて、イマジネーションが生き生きとできます。
    欲を言えば、後半の話の盛り上がりがもう少しあってもよいのでは、と感じました。せっかく魅力的なキャラクターがそろっているので、もう少しからみがあったほうが良いのでは・・・。たとえば、武家と町方の和算勝負がもうちょっとあったら・・・。
    でも、総評として、読後感がさわやかで、すてきな本です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「天地明察」を読んでから、チョッと私の中では、和算ブーム?なので、読んでみようかな。。。
      「原書の復刻版を薄紙に書き写した」
      凄い!頭が下が...
      「天地明察」を読んでから、チョッと私の中では、和算ブーム?なので、読んでみようかな。。。
      「原書の復刻版を薄紙に書き写した」
      凄い!頭が下がるなぁ、、、
      2012/07/23
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