「論語」の話 (ちくま学芸文庫 ヨ 3-6)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091215

作品紹介・あらすじ

政治が乱れ、人の世が荒み果てていた時代、現在の人間に失望しつつも未来の人類に対して期待を抱き、人間の可能性に大きな信頼を持ちつづけた孔子。「論語」全訳・注釈を手がけた中国文学の碩学が二十篇五百章を自在に読みこみ、孔子の生き方と思想をわかりやすく解き明かす。「子曰く、仁遠からんや、我れ仁を欲すれば斯ち仁至る」。伊藤仁斎や荻生徂徠ら江戸の学者をはじめとする人々は「論語」をどのように読んだか。また、孔子が説きたかった仁とは何だったのか。諸国を旅して味わった失望や、弟子や民との対話を通して、孔子を語り、吟味する最上の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737901

  • 著者である吉川幸次郎さんのお名前を知ったのは初めてです。本書は、吉川氏が1966年にNHKラジオで1ヶ月にわたって「論語」について語られた中身を書き起こし、そのまままとめたものです。ですので当然文体も口語体です。この段階ですでに読みやすいことは確かなのですが、それ以上にこの本を読みやすくしているのは吉川氏の論語に対する姿勢にあるように思います。

    言葉遣いが優しいことはもちろんですが、講師である吉川氏自身が論語で語られる孔子の言葉をあえて自分の視点だけで断定しようとしていないのです。学者ならば自分の解釈を述べるべきと思われる方もいるかもしれませんが、孔子にまつわる研究は数多く、諸説数多ある中にあって自分の解釈は表明するけれどもそれには必ず他の方や中国でのとらわれ方を紹介している。世界観を一つに収斂させない努力が、「論語」そのものに備わる多義・多様に対する寛容さとつながっている感じさえ受けます。

    本書は「論語」「全部で27回にわたって放送されたためか、この本も全体で27章にわたって構成されており、1章が10ページに満たず電車の中で読み切るにはちょうど良い長さで構成されていることも、ビジネスマンの自分にはほど良い長さだったのでしょう。どこかで目にしたことのある名句から、その論語の奥深さを少し覗き込んだだけの入門書体験でしたが、行動や言葉にあらわれる私の考える人間としてわきまえるべき他者への思いや愛情を再確認できる良い機会になりました。

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著者プロフィール

吉川幸次郎(よしかわ・こうじろう):1904―80年。神戸市生まれ。京都帝国大学文学部文学科入学、支那文学を専攻。1928―31年、中国留学。京都大学人文科学研究所東方学研究部研究員を経て、京都大学教授。この間、数々の著書を発表、日本の中国文学の普及に大きく貢献、芸術院会員、文化功労者となる。主な著書に『尚書正義』『杜甫私記』『陶淵明伝』『仁斎・徂徠・宣長』がある。

「2023年 『中国詩史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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