熱学思想の史的展開〈1〉熱とエントロピー (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 201
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091819

作品紹介・あらすじ

ニュートン力学のあとを受けた18〜19世紀は、熱をめぐる世紀となった。なぜ熱だったのか?本書は、科学者・技術者の実験や論理を丹念に原典から読みとり、思考の核心をえぐり、現代からは見えにくくなった当時の共通認識にまで肉薄する壮大な熱学思想史。迫力ある科学ドキュメントでもある。後世が断ずる「愚かな誤り」が実はいかに精緻であったかがじっくりと語られる。新版ともいえる全面改稿の全3巻。第1巻は、熱の正体をさぐった熱力学前史。化学者ラヴォアジェが熱素説の下で化学の体系化をなしとげ、より解析的に熱を取り扱う道が拓かれるまで。

感想・レビュー・書評

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  • 山本義隆の熱科学史。単なる単行本化ではなく、かなり書き直しているらしい。
    どうやって熱力学が形成されていったのかを知ることで、とかく分かりにくい熱力学の思想や用語が理解できるようになるかも。

  • 1323円購入2011-02-28

  • 新書文庫

  • 前熱力学的な熱思想としては熱素説しか私の頭になかったが、この巻はむしろ熱素説へ至る道筋を記したものと言える。各時代ごとに、当時の経験事実を説明する様々な説があり、時には答えだけ見ると現代的に見ても正しく見えるものも現れていたことは興味深く感じた。しかし、本書は今日的な視点から歴史上の諸説の正しさを議論するものではなく、そのような説が現れた背景を論じ、熱の学問に携わってきた偉人達が自然と向き合う姿勢を描き出すものである。その意味で、本書を科学を志す全ての人に勧めたい。また、2,3巻にも期待したい。

  • スゴいの一言。熱という概念の確立にこれほど多くの科学者の取り組みがあったとは。しかし限定された観測データから本質を見つけていく作業というのは、現代の素粒子科学にも通じるものがあるのでは。熱素を探す姿勢というのは重力子を追い求める姿と重なるような気も。

  • 1-3 物理学

  • 熱力学概念の形成を追った科学史の労作。この巻ではプラトンやアリストテレスの哲学からラボアジエの熱素理論までを取り上げている。熱力学形成史としての価値は言うに及ばず、誤謬とされた理論にも相応の蓄積と理があったことを理解することも出来ます。物理、科学史が好きな方のみならず、視野を広げたい人にもお勧め。

  • 「重力と力学の世界」につぐ書籍で、熱力学を学ぶ、物理学、電気工学、機械工学、化学などの学生にはぜひ読んでおいてほしい背景知識である。
    本書では、自然科学の発想のきっかけがつかめるかもしれない。
    高校、大学の理科系の授業は、結果しか教えないので、おもしろくないと感じる人もいるだろう。どういうきっかけ、ヒントで、自然科学の理論を考えついたかがわからないことが多い。自然科学を理解できない原因にもなっていないだろうか。
    ボイル、ジュール、カルノーといった基本的な理論もでてくる。

  • 熱とは何かという難しい問題をめぐる科学史の研究書です。読み進めるのはなかなか忍耐力がいりますが、やっと1巻を読み終えました。ガリレオによる機械的熱運動論からはじまり、ボイルの粒子哲学と熱運動論、ニュートンの引力斥力による熱の説明、ニュートンのエーテル論の受容を境にした熱物質論への転換などが一つの区切りで、後半は特に温めると物が膨脹するということから、火と斥力の関係が重視され、ヘールズの空気による斥力の説明、ブールハーフェの火の物質・保存と平衡の理論、産業革命をささえたスコットランドの学者たちカレン・ブラック(潜熱と熱容量を提唱)・クレグホン・アーヴィンなどの実験と理論、「化学革命」の騎手ラボアジェの燃焼=酸化説・熱素説・燃素説との関係などが書かれています。スコットランドのカレンあたりから、化学が力学から独立していく様子はたいへん興味深いものです。熱量保存の法則がブラックやラボアジェなどの新興上流階級が「簿記の原理を化学にもちこんだ」という指摘はなかなか面白い部分だと思います。

  • 発売から1年以上経ってしまったけど、買ったのは12月23日だったことを覚えてるので、それからはまだぎりぎり1年経ってない。帯に、「筆者が原典を博捜して活写する壮大な思想史」と書いてあるけど、壮大すぎて困る。断続的に読んで1年もかかってしまい、この調子だと卒業までに全巻読み終わるかというくらいだ。博捜なんて言葉初めて知ったけど、読むのがこれ程大変な本を、原典あたってつくりあげるというのはどれほどの作業なのだろう。ほんとに山本先生はすごいです。まえがきに「熱学の教科書としても」と書いてあるけど、詳しすぎて使えない(第3巻の帯には、「格好の熱力学入門篇」とまで書いてある)。目次だけで勉強になるほど、メジャーな人、理論からマイナーなものまで、いっぱい出てきた。とにかく知ったことが色々あるので、できるだけまとめておこう。○温度、熱、火についての感想。   <準備中>○第1巻のおおまかな流れのまとめ。   <準備中>○その他、雑多な知識のまとめ。・ボイルの法則は、ヨーロッパの大陸側ではマリオットの法則とも呼ばれる。でも発見したのは、ボイルでもマリオットでも、はたまたフックでもなく、タウンレイという人。・「何人ものニュートンがいた」 ニュートンは『光学』の版を改めるごとに《疑問》に新しい見解を表明し、それらはときに相矛盾しているようにも思われた。エーテル説もそこに書かれたものの一つ。・<火の物質(materia ignis)>のブールハーヴェはライデン大学においてヨーロッパ各国からの留学生を教えた。同時代のオランダ人にホイヘンス、スピノザ、レーウェンフック、レンブラント、フェルメールなど。・フランクリンは、それまで2種類あると考えられていた「電気流体」が正と負に帯電しているという状態の違いであることを見抜いた。このときの正負が今も受け継がれている(正負を決めたのがフランクリンなのはハリディの本で知っていた)。・スコットランド学派。18世紀のスコットランドは社会科学と自然科学において黄金時代を迎えていた。アダム・スミス、マクローリンもこの時代。熱学においてはカレン、ブラック、ワット。19世紀の大物理学者ケルヴィン卿、マクスウェルもスコティッシュ!・ブラック、アーヴィンあたりは、潜熱についての考察から熱量保存則に至った。ブラックは質量保存則をラヴォワジエよりも先んじて使っていたが、「結局のところ質量保存則は特定の個人の着想というよりは,商品経済の発展に促された時代の発明品だと見るべきものであろう.」(p.301) それはブラックやラヴォワジエにとっては、むしろアプリオリな要請だった。・でもラヴォワジエの偉大さには変わりが無い。火が酸素(空気)の反応であることを見抜き、燃焼についての理論を打ち立てた。やはり近代化学の父にふさわしい。ちなみに続く第2巻にも、彼の処刑のことは書いてないので、読みたかったなあと言う気も。関連リンク・奥村晴彦『LaTex2e 美文書作成入門』http://review.webdoku.jp/note/4390/13413/1?id=187225

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著者プロフィール

1941年大阪市に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科を卒業。同大学大学院博士課程を中退。現在、学校法人駿台予備学校に勤務。科学史家。元東大全共闘代表。「10.8 山崎博昭プロジェクト」発起人。
著書として、『熱学思想の史的展開―熱とエントロピー』(現代数学社,1987;新版,ちくま学芸文庫,全3巻,筑摩書房,2008-2009)、『古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ』(日本評論社,1997)、『磁力と重力の発見』全3巻(みすず書房、2003、パピルス賞・毎日出版文化賞・大佛次郎賞を受賞)、『一六世紀文化革命』全2巻(みすず書房、2007)、『福島の原発事故をめぐって―いくつか学び考えたこと』(みすず書房、2011)、 『世界の見方の転換』全3卷(みすず書房、2014)、『原子・原子核・原子力―わたしが講義で伝えたかったこと』(岩波書店、2015)、『私の1960年代』(金曜日、2015)、『近代日本一五〇年』(岩波新書、岩波書店、2018)ほか。

「2018年 『小数と対数の発見』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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