熱学思想の史的展開〈3〉熱とエントロピー (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091833

作品紹介・あらすじ

「エントロピー」の誕生は難産だった。熱の動力をめぐるカルノー以来の苦闘をへて、熱力学はやがて第1法則と第2法則を確立し、ついにエントロピー概念に到達する。マクロな自然の秘密を明るみに出したそのエントロピーとは何か。「エネルギーの散逸」とのみ捉えられがちな誤謬を正しつつ議論は進む。第3巻は熱力学の完成とその新たな展開。マクスウェル、トムソンらの寄与とクラウジウスの卓抜な総合化、さらにギブズの化学平衡論により制約因子としてのエントロピーの本性が明らかとなってゆく。論文・書簡を含む多くの原典を博捜して成った壮大な熱学史。格好の熱力学入門篇。全3巻完結。

感想・レビュー・書評

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  • 1323円購入2011-02-28

  • 熱学はその問題意識において地球環境の理解と不可分に結合していた。文庫版で3巻にわたり熱学史の発展を通じた熱学思想の展開を眺め、現代社会において熱学的な環境観の重要性を説いている。こんにち熱力学と呼ばれる学問はそれ自体厳密であり、三つの法則をもって閉じている。機械的自然観と独立な、一つの自然観的側面の体現とも言える。
    詳細な内容では、クラウジウスがエントロピーによる非可逆性の定量化に至る際、〈補償〉の〈当量〉という概念を経たという話が特に印象に残っている。エントロピーに至る問題意識の提示として、現代の熱力学教育で導入しても良いように思う。クラウジウスとトムソンによる、エントロピーの増大とエネルギーの散逸の概念の差に触れているのは、著者のこだわりだろう。前者は後者を包含し、より広い概念であるという論調だが、振りかえってみれば最終章のまとめへ向けた伏線だった。
    第三法則の「発見」の過程は興味深い。熱力学を古典の範囲で完全とするために、トムセンとベルトローによる、反応熱と化学親和力の等量性についての法則を「だいたいにおいて正しい」と考え理論仮定に置くことによって第三法則に至ったという経緯については初めて知った。

    エントロピーの導入以降、かなり近代的な議論がすすめられる。熱力学が分かってきたかな―と思ったくらいのタイミングで読むと、とても面白い。

  • ■全3巻を読んでの感想

    「熱」は目に見ることができず、形があるものでもない。しかし、「熱」は感じることができ、確かに存在しているように思える。

    この「熱」という対象を科学がどのように捉えようとしてきたかを辿ることで、科学的探究に不可欠な、仮説、数理的な構造による理論、実験による検証が絡み合いながら世界の成り立ちを把握していく様子を描いている。

    仮説と理論と検証のいずれかが必ず先導するということでもなく、それぞれの科学者の得意とする分野で飛躍的な成果を残すことで徐々に熱学が進展していった様子が、詳しく記されている。

    また、ニュートンのような偉大な科学者が提唱した理論が固定観念としてその後の科学者の眼を曇らせたり、いったんその方向性にそれたことで、熱に対する理論構築を助けたりしたこともあったということも書かれている。

    結果的に反証された理論であっても、その考え方がどのような背景で生まれ、その後の科学史にどのような影響をもたらしたのかを含めて記すことで、現在の科学の議論を見るときにも一歩引いた客観的な視点を教えてくれるように思う。

    さらに、熱の捉え方が社会に対する問題意識とどのように繋がっているのかという視点も盛り込まれていることが、この本の科学史としての価値を高めていると思う。

    熱の探究は、蒸気機関を通じて産業革命と密接なつながりを持っていることは言うまでもない。そして、現在もエネルギー問題は地球規模で見た最大の社会問題の1つと言ってもよいだろう。

    いかに効率的に熱をエネルギーに変換するか、熱はどのような条件でエネルギーとのあいだに保存則をもたらすのかといった事柄の探究が、エントロピー概念の誕生につながり、地球規模でエネルギーをどのように使うべきかといった議論に発展していくという歴史的な流れが非常に興味深かった。

    筆者の徹底的な資料の読み込みと、社会科学を含めた幅広い見識が生んだ著作だと思う。

  • クラウジウスによるエントロピーの提唱が主な内容である。トムソンは、エントロピーを単なるエネルギーの分散としか捉えず、クラウジウスのようにエネルギーの分散と物の分散という二面性で捉えることをしなかった。ギブスによって、エントロピーは化学的平衡にも用いられるようになり、自由エネルギーの概念がうまれる。そして、ネルンストによる熱力学の第三法則(絶対零度には到達できないという要請)が提唱され、古典熱力学の完結をみる。まとめの章では熱学が地球の活力の原因を追究した営為であったことが指摘され、その意図は統計力学に包摂されないことを述べている。難しいので、練習問題があればいいと思うが、単純な例が欲しいものである。エントロピー=(与えられた熱量)÷絶対温度。単位はJ/K。
    情報のエントロピーなども勉強する必要がある。

  • 2009/2/25 Amazonより届く。
    2015/10/20〜10/29

    熱学の思想を辿る最終巻。クラウジウスからネルンストまで。
    19世紀以前の物理学ひいては科学が世の中のとらえ方を考える哲学であったことが良くわかる。
    大学生時代この辺りのことを講義で聴いたときは、味気のない式変形の羅列であったが、このような展開で進めてもらえばもう少し興味を持てたかもしれないなぁ。

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著者プロフィール

1941年、大阪に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科卒業。同大学大学院博士課程中退。現在 学校法人駿台予備学校勤務。

「2019年 『現代物理学における決定論と非決定論 [改訳新版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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