日本史への挑戦―「関東学」の創造をめざして (ちくま学芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091901

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  • 日本史をひもとけば、歴史的にも関西方面、つまり「畿内」が中心だった時代が長かったことが語られていますが、この本では、歴史上であまり重視されてこなかった東国を見直し、「関東学」をしっかりと確立させようという気概のもとにまとめられています。

    歴史学者の森教授と網野教授による対談という形で全編が綴られているため、専門的な内容ながらも口語口調でまとめられており、理解しやすい形になっています。
    二人は古代考古学と中世史と、専門の時期が違うため、幅広いスパンにおいての日本史が、対話の中でじっくりと見直されていきます。

    1877(明治10)年のモースによる大森貝塚の発掘は、古代の人の生活住居が発見されたことで、初めて日本に進化論が紹介された、エポックメイキングなものだと採り上げられていました。
    実際、発掘後に、横浜にいたキリスト教宣教師からクレームを付けられたとのこと。
    日本ではキリスト教がさほど根付かなかったため、あまりピンときませんが、宣教師からすれば、教義の整合性が取れなくなり、布教しづらくなったのでしょう。

    弥生時代とは、もう言葉として定着していましたが、そもそもは文京区向ケ丘弥生町の弥生町遺跡からとられた名だと、改めて思い出しました。
    縄文遺跡は三内丸山や登呂遺跡など、遠くであるのに比べ、弥生町遺跡があまりに都心のため、感覚的に不思議な気がします。

    「関東」という言葉がいつ頃から使われたのかというと、意外に古く、奈良時代の聖武天皇の頃からだそうです。
    ここでいう「関」とは、不破の関(岐阜県関ヶ原)のことで、美濃や尾張から東という、「東国」と同義の広い地域を指していたとのこと。
    「坂東」は、足柄と碓氷の峠を境にした地域で、これが現在の関東地方だそうです。

    関東と坂東の違いがわかっていなかったため、これで区別がクリアになりました。

    「関西」という言葉は、関東から見た表現になり、鎌倉時代の文献から見られるようになったとのことです。
    西の王権は天皇、東の王権は将軍と、日本に2つの中心があるという考えがはっきり定着したのが、鎌倉時代の頃だからだそう。

    ちなみに「九州」「四国」も鎌倉時代から使われ始め、室町時代に「奥羽」が、南北朝期に「中国」が使われ始めたとのこと。

    鎌倉時代には、東も西もそれぞれの国という意識だったのが、明治時代に大和中心の見方が力を持ち、神話を歴史として教えたことで、関西の方が歴史的に重要視されるようになったのではないかと、著者たちは指摘しています。

    いまだに東の歴史家と西の歴史家とでは歴史のとらえ方が違うようで、西の歴史家は、米のできない地域は遅れているといった水田中心意識を一般常識としているなどと語られていました。

    締めとして、"「関東学」を独自の学問として言えるように頑張りたい"、という二人の決意が語られるとともに、"関東の土壌の中から起こった江戸が、18世紀頃は世界最大の都市だったことをきっちり掘り起こさないと、安易に日本の首都を何処かへ移そうというような意見が出てくるので、気をつけなくてはならない"、という話で終わっています。
    以前起こった、「首都移転問題」を意識しての対談だったように感じられました。

    自然の地形や古墳のほかに、各地の寺の紹介もされており、やはり歴史的に寺社の存在は大きなものだったことがわかります。
    もはや、過去の幕府のよすががほとんど失われているのに比べ、寺社は現在までその歴史が続いているからというのがその理由ですが。
    歴史学者ではない私は、関東と関西の優位争論については特に気になりませんが、これまであまり脚光を浴びることのなかった、雛の地域としての関東の謎がさらに解明されていけば、いっそう興味も深まるだろうと思いました。

  • 2021.4.25 読了

    234ページ

    通算1842冊

  • 対談集は読みやすいものが多くて好きです。森先生が主に自分の説を話されているのですが、網野先生がすごく聞き上手でとてもよい雰囲気。
    中世史や近世史の関東の「草深い農村」というイメージを変えてくれます。独自の文化があったんですね。
    本筋とは違いますが、トロイの発掘で有名なシュリーマンが日本に来てたとは知りませんでした。日本人の清潔さに感心したとか、税関での武士の態度が見事だったとか、面白いエピソードが引用されてました。どの港でもチップを出してきたけれど、横浜で出したら「我々は日本男児」といって笑いながら手を振って受け取らなかった、そのくせ信じられないほど機敏に対応したとか。旅行記あるみたいなので読んでみたい。それでテレビの時代劇の役人の汚職の横行ぶりに森先生が怒ってました。テレビの発想が変わらないと日本はよくならないそうです。今の時代劇の凋落ぶりって、ある意味ではいいことなのかな。考証をきちんとしたさわやかなドラマを見てみたいです。

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著者プロフィール

考古学者。1928年大阪市生まれ、2013年没。同志社大学大学院文学研究科修士課程修了、元同志社大学名誉教授。旧制中学時代から橿原考古学研究所に出入りし、考古学と古代史の接点である古代学を専門とする。「地方の時代」や「古代ブーム」の推進者的存在で、学界最後の重鎮として知られた。2012年第22回南方熊楠賞を受賞。『日本神話の考古学』(朝日文庫)、『倭人伝を読みなおす』(ちくま新書)など著書多数。

「2022年 『敗者の古代史 「反逆者」から読みなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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