五輪書 (ちくま学芸文庫 ミ 15-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091949

感想・レビュー・書評

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  • 自分自身の特性として認識しているものの内の一つに「鍛錬」がある。
    最強の剣豪とされる宮本武蔵の哲学にも、何か通ずるものがあるのではと思い立ち、本書を手に取った。

    どんな分野でも言えることだが、突出した結果を残している人は常に思考している。
    彼があらゆる要素に対してどうあるべきかの独自の解を導き、体系的にまとめていたという点に刺激を受けた。

    ”3つの先”は闘いはいかに始まり得るか、についてMECEに予測したものであるし、他にもその思考の糸は敵と太陽の位置関係にまで伸びていた。
    闇雲に努力を重ねるだけじゃなく、常に思考し続けようと自戒。

    久々に古文(といっても書き下し文だが)を読んだが、現代にはない独特のリズムや音韻がやはり美しかった。受験のためとはいえ、せっかく勉強したんだから、たまには古文にもチャレンジしていきたい。

  • アメリカの人(スタンフォードのMBA取得のインド系アメリカ人)と会議前の雑談をしている際に、先方の部屋の後ろに何か飾ってあったので「ポスターか何かですか?」と聞いてみると「"The book of five rings"、日本語で"五輪の書"だよ。ビジネスでも役立つからアメリカではよく読まえれているよ」とオススメしていただいたもの。

    地水火風空の五巻に分けていて、人生の、ビジネスの考え方を書いている。
    1点だけビジネスと違うのは、武士の世界は負けたらほぼ終わり=命を落とすが、ビジネスはまだ失敗が許されることだろうか。それ以外は、なるほどなぁと思わされながらすっと頭に入ってきた。
     地の巻:信念、見解、ベースとなるもの
     水の巻:心の持ち方、柔軟性
     火の巻:戦い方
     風の巻:外部環境
     空の巻:悟り
    と考えれば分かりやすいだろうか。

  • 無想無念、鍛錬あるのみ

    勝負事必勝
    迷いを断ち切る最強の人生攻略マニュアル

    宮本武蔵の生き方
    戦闘哲学

    5つの章からなる

    地の巻∶文芸も独学でマスター、二刀流
    ひとつマスターできたら他の物事にも応用できる
    一つの道を突き進むことにも意義がある
    使えるものは全て使う、タイミングが肝、柔軟に

    水の巻∶無念無想。平常心、動じない。雑念を消す。やるべきことは昨日の自分に勝つこと。場数をこなし鍛錬するのみ
    塊にして解決していく、能力の高い者に向き合うとき諦めなくていい。向こうはこちらを侮る、先入観

    火の巻∶先手をとる、自分から仕掛ける
    自分の土俵で戦う、リサーチ、向こうの側を考える
    崩れに注目。環境は自分でつくれ

    風の巻∶他のやり方を知り、比較する。思い込みは捨てる、小手先でなく基本を
    勝つという目的を果たす。なんのためのやり方なのか。

    空の巻∶心を磨き、空のように曇りない心

  • 宮本武蔵の書いた剣術、兵法の極意。
    地の巻、水の巻、火の巻、風の巻、空の巻きがある。

    含蓄ある言葉が多い。剣術のことに限らずバランスの取れた
    見識。

    今、この書を作るといへども、仏法・儒道の古語をも借らず、軍記・軍法の旧きをことをも用ひず。この一流の見立て、実の心を顕すこと、天道と観世音を鏡として、十月十日の夜、寅の一点に筆をとつて書きはじむるものなり。

    先づ、武士は、文・武二道と言ひて、二つの道を嗜むこと、これ道なり。

    世の中をみるに、諸芸を売りものに仕立て、わが身を売りもののやうに思ひ、諸道具につけても売りものに拵ゆる心、花・実の二つにして花よりも実の少なきとろこなり。とりわきこの兵法の道に、色を飾り、花を咲かせて術を衒ひ、あるいは一道場、二道場などいひてこの道を教へ、この道を習ひて、利を得むと思ふこと、誰かいふ「生兵法、大疵のもと」、まことなるべし。

    第二水の巻。水を本として、心を水になすなり。水は、方円の器に従ひ、一滴となり、蒼海となる。

    第四風の巻。この巻を風の巻としるすこと、わが一流のことにあらず、世の中の兵法、その流々のことを書き戴するところなり。風といふにおいては、昔の風、今の風、その家々の風などとあれば、世間の兵法、その流々の仕業をさだかに書き顕す。これ風なり。
    他のことをよく知らずしては、みづからの弁へなり確し。道々事々を行なふに、外道といふ心あり。日々にその道をつとむといふとも、心の背けばその身は良き道と思ふとも、直ぐなるところより見れば実の道にはあらず。実の道を極めざれば、少し心の歪みについて、後には大きに歪むものなり。もの毎に余りたるは、足らざるに同じ。よく吟味すべし。

    道において、儒者・仏者・数寄者・しつけ者・乱舞者、これらのことは武士の道にてはなし。その道にあらざるといふとも、道を広く知れば、もの毎に出合ふことなり。いづれも、人間においてわが道々をよく磨くこと肝要なり。

    当世においては、弓は申すに及ばず、諸芸花多くして実少なし。さやうの芸能は、肝要のとき役に立ち難し。

    第一、邪悪でないように心すること。
    第二、兵法の道の稽古に励むこと。
    第三、もろもろの芸能・技芸に触れること。
    第四、さまざまな職の道を知ること。
    第五、なにごとであれ、ことの利害・得失を心得ること。
    第六、ものごとの良否・真贋を見分けること。
    第七、目に見えないところを感得し、察知すること。
    第八、些細な事柄にも心を配ること。
    第九、役に立たないことに手を出さないこと。

    兵法心持ちのこと。

    兵法の道において、心の持ちやうはつねの心に変わることなかれ。つねにも、兵法の時にも少しも変わらずして、心を広く、直にして、きつくひつぱらず、少しも弛まず、心の片寄らぬやうに、心を真中に置きて、心を静かに揺るがせて、その揺るぎの刹那も揺るぎやまぬやうに、よくよく吟味すべし。
    静かなる時も心は静かならず。なんと速きときも心は少しも速からず。心は体に連れず、体は心に連れず。心に用心して、身には用心をせず。心の足らぬこと無くして、心を少しも余らせず。
    心の内濁らず、広くして、広きところに知恵を置くべきなり。知恵も、心も、ひたと磨くこと専なり。知恵を研ぎ、天下の理非を弁へ、もの毎の善悪を知り、よろづの芸能、その道々を渡り、世間の人に少しも騙されざるやうにして後、兵法の知恵となる心なり。

    眼の付けやうは、大きに、広く付くる眼なり。

    敵に成るといふこと。
    敵に成るといふは、わが身を敵に成り替りて思ふべきといふところなり。世の中を見るに、盗みなどして家の内へと籠るやうなる者をも、敵を強く思ひ做すものなり。敵に成りて思へば、世の中の人を皆相手として、逃げこみてせむかたなき心なり。とり籠る者は雉子なり。打ち果たしに入る人は鷹なり。よくよく工夫あるべし。
    大きなる兵法にしても、敵といへば強く思ひて、大事にかくるものなり。われつねによき人数を持ち、兵法の道理をよく知り、敵に勝つといふところをよく受けては、気遣ひすべき道にあらず。
    一分の兵法も、敵に成りて思ふべし。兵法よく心得て、道理強く、その道達者なる者に会ひては必ず負くると思ふところなり、よくよく吟味すべし。

  • 本書は「ちくま学芸文庫」のために新たに校訂・訳出されたものである。

  • どの時代にも
    人生の目標達成、成功、実現のための啓発本に類するものがあったのだな、と思う。
    どのような思いで武蔵さんが本書を遺されたかは定かではないが、奇人や天才の類いではなく、野心家や企業家に通じる人柄が想像できた。
    また、指針信条へのひた向きさや頑なさに同情にも似た感情が芽生えました。
    原文をしっかりと読むと筆圧が伝わってくる部分がいくつかありました。

  • 目的をしっかり捉え、手段を目的化させないようにと言った宮本武蔵の真の通った考え方を感じた。兵法においては「人を斬って勝つこと」が目的であり、太刀筋や構えなどは手段である。

    何も難しいことは言っておらず、人を斬って勝つために必要な基本的なことを努力して鍛錬し続けよ。というメッセージ性を感じた。
    人を斬って勝つためには、負けないことが大切。という当たり前のことが書かれている。

    現代においても、目的がぶれ、手段を追求して着飾ることが多いと感じる。目的を見据え、基本的なことを鍛錬する。何事においてもこれが大事ということを宮本武蔵から教えてもらえる良本!

  • 宮本武蔵「五輪書」読了。拍子を重視する事が1番印象に残った。自分の拍子を整える事、相手の拍子を崩す事、これらが同時に成立すれば勝てる確率が上がる事も納得がいく。道を極めた先に徹底した合理性がある事に驚いた。

  • なぜ、この本が長く読み継がれているのか?
    なぜ、ハーバードで紹介されたのか?
    それを念頭に読み進め、それを理解すると鳥肌が立つほどの感動があった。

    ここで掲げられている教えを、自らに当てはめて、どう解釈するのか?その自問自答が大切で、面白いところ。

    また、スポーツをしていたので、ここに出てくる教えに共感するところが多々ある。
    例えば、剣において必ずしも速さが勝負ではない、拍子(要すれば、相手との間)の取り方など。
    スポーツ指導者にもお勧めなのだろう。

    ひとつひとつ、文章の表面だけをみていると、さらっと読めてしまうが、実行する、身に付けるに至るとただならぬ努力、研鑚が必要なのだろう。


    以下抜粋~
    ・武士は、文・武二道といって、学芸の道と兵法の道を心がけるべきである。たとえ文・武の道に関わる才能がなくても、武士たる者は、めいめい身分相応に兵法の道を習得すべく努めなければならない。

    ・邪悪でないように心すること
    ・もろもろの芸能・技芸を体得すること
    ・なにごとであれ、ことの利害・特失を心得ること
    ・ものごとの良否・真贋を見分けること
    ・目に見えないところを感得し、察知すること
    ・些細な事柄にも心を配ること

    ・何事においても、栄える拍子、衰える拍子があることをよく見分けなければならない。

    ・兵法の道において、心の持ち方は平生の心と変わってはならない。平生も、戦いのときも少しも変わることなく、心を広く、真直ぐにして、緊張しすぎることなく、少しも弛ませず、心を片寄らないように、真中に置き、心を静かに揺るがせて、揺るぎが瞬時も揺るぎやまないようにする。

    ・わが二天一流では有構無構、すなわち、構えあって構えなしというのである。

    ・なにごとであり、熟達した者の運びはせわしなくは見えないものである。

    ・わが二天一流の兵法の道において、太刀の遣いように奥義や表はない。構えに定まった型はない。ただ心をもととして兵法のもつはたらきを体得することこそが大切である。

    ・広い心構えである心と、一つのことに集中する意思である意との二つのこころを習練し、遠く広く見る観と、近く細やかに見る見(けん)との二つの目を鍛錬し、少しの曇りも迷いもない、晴れ渡ったありようこそ、本来の空であると知るべきである。
    ・観の眼を強く、見の眼を弱く遣うべきである。
    ・一つのことに集中する意思である意のこころは眼に現れ、大きく広い心構えである心のこころは眼に現れない。

    ・こころの持ちようは、弱気になり萎縮することなく、逸り浮かれることなく、策略を仕懸けることなく、恐れることなく、真直ぐに、広く保ち、一つのことに集中する意思である意のこころは軽めに、大きく広い心構えである心(しん)のこころに重きを置き、こころを水として、ときどきに従い、ことに即応することでである。水には澄んだ深い緑の淵も、一滴の水も、青い海もある。

    ・残心、放心とは、置かれた状況により、そのときどきに従うこころのありようである。

    ・古今の道に背かない。
    ・己れ一身の楽しみに趣向を凝らさない。
    ・なにごとであれ他人に依り頼む心を持たない。
    ・己れの身を軽く浅く思い、世の中を重く深く思う。
    ・一生の間欲心を抱かない。
    ・わたしはすべてのことに後悔しない。
    ・善きにつけ悪しきにつけ、他人を恨んだり憎んだりしない。
    ・どんな事態に遭遇しても、別れを悲しみ歎かない。
    ・己れについてであれ、他人についてであれ、恨んだり、愚痴や不平をいったりしない。
    ・女人を恋い慕う心は持たない。
    ・なにごとであれ好みに溺れない。
    ・居宅に望むところはない。
    ・一身に美食はいらない。
    ・のちのち売りものになるような古道具はもたない。
    ・己れに関わる凶事を忌まない。
    ・武具は別であるが、他の道具に心を費やすことはない。
    ・兵法の道を究めるのに死を厭わない。
    ・老残の身を財宝を所持し、用いる心はない。
    ・仏神は尊い、しかし仏神を依り頼むこころは持たない。
    ・一命を捨てても武士であることの名と栄誉は捨てない。
    ・どのようなときにも兵法の道を離れない。

  • 有名な宮本武蔵の『五輪書』。原文は難しいので訳文を読んで気になった箇所を原文で味わった。現代でいうと武士の業務マニュアル兼自己啓発書といった感じ。「真直ぐ」、「よくよく考えつくすべき」が続出する全編を通して、13歳から60数回戦って負けなしの自信に溢れ、剛毅だけど緻密な性格が読み取れる。
    「どんな動きであれすべて相手を斬る手だてにほかならないと思うことが大切(p93)」
    は、結果や成果を確実にあげる仕事人の極意で、日本の労働生産性が低いのもこのあたりの意識の集中が足りないからかなと思った。

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