ジョン・ケージ著作選 (ちくま学芸文庫 ケ 7-1)

制作 : 小沼純一 
  • 筑摩書房
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092021

作品紹介・あらすじ

ジョン・ケージの出現により、音楽を聴く、音を作る姿勢が決定的に変わった。彼は従来の作曲者主導による音楽の在り様に背を向け、あらゆる意図を排除するために作曲・演奏・鑑賞に「偶然性」を関与させることで因襲を打破した。「ひとつひとつの音は固有のものであって、ヨーロッパの歴史や理論を備えているわけではない。」この思想は、言葉としても残された。本書は単行本未収録作を中心に、彼の音楽論をはじめ、偏愛したキノコに関するエッセイ、革新的なテキストなど様々な形の言葉を集めたオリジナル編集。また編者による解説と年譜を付す。

感想・レビュー・書評

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  • これも素養無いことで読み進めるの辛い類

  • 13年越しの通読。◆いくつもの文章が収められているが体裁はまちまち。文がクレッシェンドしてデクレッシェンドするくらいはまだご愛嬌で、文中の任意の文字だけふと文字になったり、インタビューなのに問いと回答がどう対応してるかわからなかったり、上下左右さまざまな方向に分の塊が散乱していたり、英訳すればおそらく縦読み出来るように凝らされた文意だったり。そういったところも含めてジョン・ケージらしいなと思わせてくれるようなレイアウト、編集。◆「4分33秒」の或る"演奏"のとき、茸を見ることで第1楽章を見送り、第2楽章は、指揮台にしていた岩から10フィート以内のところまで飛び上がってきた雄鹿と牝鹿の音で始まった◆可能性の全領域が粗く分割され、これらの分割されたものの内で実際の音響が数字に従って指示されるが、選ぶのは演奏者或いはテープの編集者に委ねられることもあろう。この最後の場合、作曲家は誰か他人が写真をとることができるようにする、写真機製造者に似ている。p.63◆文脈もあったのかもしれないけれど、すごく根源的な問いだなあと思ったのは、この二つ。◆作曲して欲しいといわれなくなったらどうされますか  ケージ=おそらく私たちは、私の沈黙の作品に立ち戻らなければならないでしょう。p.122◆それでは、敢えて音楽を書かれるのはなぜですか ケージ=答えは簡単です。師であるシェーンベルクに対して、一生を音楽に捧げると約束したからです。p.122◆ケージらしいつぶやきと思ったのは◆バスを待っているときも われわれはコンサート会場にいるのだ 突然われわれは舗道に立ちながら芸術作品を求める p.180◆かなあ。年表でおかしかったというか、なぜここにと思ったのは◆1958 イタリアのクイズ番組「ここでやめる?それとも倍に?」でキノコについて回答・優勝◆

  • ほぼ眺めただけ。ですが、4分33秒は沈黙にこそ意味があると思われてる気がしますが、実は今この始まりから終わりにおいて音が聴こえるじゃないですか、ということなわけで、ジョン・ケージや武満徹のような「音はそこかしこに」を端的に体現する試みなんですね、とのことでいいのかしら。

  • この読みにくさと据わりの悪さを含めて、ケージの説く、自由があるのだろう。

  • ジョン・ケージの書いたものが読める!と興味津々になり購入。中身は入手困難な図書や過去に雑誌(『エピステーメー』『ユリイカ』)で訳され掲載されていたものなどをまとめたもの。

    言っていることはすごく感心しました。思想的価値ということなら、今日、プロは勿論趣味でも音楽に携わる人全ての人が読む価値があるテクストです。

    ただ、ひたすら訳が分からない変な本でもあります。難解な内容に加え、過剰とすら思える凝ったテキスト配置と、二重に読み辛い。これ、InDesign使ってやったのかなぁと思うと、やった人の苦労に涙を禁じ得ない程、凝ってます。にも関わらず読み易さにも、内容の理解の助けにも、何の役にも立っていません(笑)こういう「テキスト配置芸」は、何もこの本以外でもやってる本はありますが、個人的には日本語は不向きだと思います。特に「作曲を回顧して」の部分は、いっそ英語原文を載せてもらったほうがいいとすら思えますが、そうなると和書で出す意味がなくなりますから難しいところですね。

    実験音楽だとか、現代音楽だとかが分からないという人は手に取るといいと思います。理解するための鍵となる人物が多く登場しますから、興味が湧いたら、あるいはもっと理解を深めようと思ったら、この本で名前が挙がった作曲家は全員押さえておいて損はないです(特にシェーンベルク、ブーレーズ、シュトゥックハウゼン)。またこれを機に、『易経』『フィネガンズ・ウェイク』なども合わせて読むのは、ケージの音楽への理解にかなり役に立つと思います。

  • 自由な精神とは何かを考えてみるとき外せないのがケージで、それはいろんな受け止め方ができるので、人間性心理学のテキストとしてわたしは読んでいる。「作曲を回顧して」と題させたレトロスペクティブなどこれはもう珠玉のお言葉の宝庫である。

  • ジョン・ケージって本当にキノコ大好きだったんだ……。ケージの音楽を考える上で非常に示唆的な言葉がたくさん詰まっている良書ですが、内容もさることながら、文字組のレイアウトがやたらとかっこ良かったのが印象的。

  • 彼の音楽論をはじめ、偏愛したキノコに関するエッセイ

  • ケージ好きならたまらないよね。ちくま文庫はやはり良質だ。

  • p72 無政府状態は、結局は実際的なものです。権力と利益の古い構造は死につつあります。新しく生まれるのは、有用性のイメージです。われわれは、《たとえわれわれが気違いになろうと、うまく動いていく》世界を創り出そうとしているのです。

    p73 沈黙は音以上にさまざまなパラメーター(われわれがまだ気づいていないパラメーターも含めて)を表している。音は沈黙の表面に押された印璽である、とソローは言っていた。それは光り輝いている。問題は、沈黙の上にどれほどの印璽があるかということだ。

    78 私を《私の》作品に結びつけ続けるために? 私が一人の人間であるのに対して、私の作品はそうではないということが、おわかりにならないのですか?…私が自分の仕事を放っておけばおくほど、私の仕事は生産的になるのです。

    79 マイスター・エックハルトはわれわれに魂の単純さを語った。しかし事前は複雑だ。われわれはそこから魂を追い払ってしまうか、あるいは無数にある物ごととうまくやっていけるように、魂を導いてやらねばならない。同様に、自我とか、夢とか、価値判断も。(われわれはたぶんそこまで行けるだろう。)

    179 音楽は/けっしてとまらない 避けてしまうのはわれわれだ
    179 それは可能にする/注意を払うことを/日常の仕事や遊びに/われわれがそうだと思っているもの/として/ではなく/われわれのゴールとして/必要なのは枠組/精神的態度の変革/増幅/バスを待っている時も/われわれはコンサート会場にいるのだ/突然われわれは舗道に立ちながら芸術作品を求める

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著者プロフィール

米国の現代音楽作曲家。1912年ロサンゼルス生まれ。アルノルト・シェーンベルク、アドルフ・ワイス、ヘンリー・カウエルに師事。プリペアド・ピアノや偶然性の音楽の発明、東洋思想への接近、そして茸に対する愛で知られる。代表作に《プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード》、《四分三三秒》、《フリーマン・エチュード》、著書に『サイレンス』、『ジョン・ケージ 小鳥たちのために』など。晩年は作曲のみならず絵画や版画作品も発表した。1992年8月、脳溢血のためにニューヨークで死去。

「2019年 『ジョン・ケージ 作曲家の告白』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョン・ケージの作品

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