精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
4.27
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本棚登録 : 207
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092045

作品紹介・あらすじ

著者は高名な精神医学者であるだけでなく、ヴァレリーやギリシャ詩の達意の翻訳者であり、優れたエッセイストとしても知られている。自らの研究とその周辺について周到な考察を展開した「知られざるサリヴァン」「統合失調症についての自問自答」「宗教と精神医学」や、学問的来歴を率直に記した「私に影響を与えた人たちのことなど」「わが精神医学読書事始め」「近代精神医療のなりたち」、精神科医の立場から社会との接点を探った「微視的群れ論」「危機と事故の管理」「ストレスをこなすこと」など、多彩で豊かな広がりを示す17篇のエッセイをまとめる。

感想・レビュー・書評

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  • 世評が高く期待して読み始めた。所々門外漢にはつまらないところもあった。「知られざるサリヴァン」の章。

    概ね面白く、また、知らない世界のことでもあり興味深かった。また、精神科医としてだけでなく、社会を見る目が正しく慧眼で、三十年前に「成長と危機の境界」を書けたのは信じられない。人としても魅力的で、あっこの人は優しい人だなと思わせる文章がたくさんあって、この一冊でファンになった。

    ちくま学芸文庫から出てるものは買い揃えたので、月に一冊くらいの割で読んでいこう。

  • 中井久夫さん、というお名前を、なんとなくどこかで知っていたんです。
    精神科医さん、っていうのは、色々と文章を書く人が(一般の人向けの文章を書く人が)、多くいらっしゃいますね。
    少なくとも、耳鼻咽喉科の人とか、皮膚科のお医者さんよりかは…。

    で、大抵そういう人の本は、それほど酷い内容のものは無いなあ、というのが正直な感想で。
    なだいなださんなり、河合隼雄さんなり、斎藤環さんなり、ということですが。
    (無論、ヒトによって好みはあると思いますし、僕も以上の人たちの本をそんなには読んでないですし、当たりはずれもあると思います)

    で、どこかで、中井久夫さんってすごいよーみたいな話は聞いていたんです。
    なんだけど、どこかしらかスゴサというのが判りやすくは情報が入らない。
    で、なんとなくいつか読みたいけど読んでいませんでした。

    特段きっかけという訳でもなく、「お、ちくま文庫から出てるんだ」と思ったことくらいで。(ちくま学芸文庫でしたけど)

    読んでみると。
    うーん。大変に面白かった。
    これまで読んでないのも悔しいですが、
    これからいっぱい読めるなあ、と思うと大変にうれしいですね。
    (すぐに立て続けに読むことはないと思いますが)

    無論まあ、この本に選りすぐりで(僕にとって)スバラシイ文章が集められている、という可能性もありますけど。

    中井久夫さんという人は、ネット的な情報で言えば、1934年生まれの80歳、精神科医さんです。終戦のときに11歳、という世代ですね。
    精神科医さんとしての業績は、読んでも僕はちっとも判りません。
    でも、この本はとても面白かったです。

    どういう本かと言うと、
    ●精神病にまつわる四方山話だったり。
    ●精神病、医療という観点からの歴史話とか、文化話だったり。
    ●中井さんの自伝的なエッセイだったり。
    ●精神科的な健康論だったり。
    ●パニックとか、心理とかにまつわる話だったり。
    という感じです。

    総論で言ってしまうと、
    精神医学について言及されている部分は、ちっとも判りません。その業界の人が読んだらえらいこと面白いのかも知れませんが、完全に飛ばし読み。
    なんだけど、そういう部分は全体の1/10くらいですね。
    他は、精神医学と関係なく面白く読めました。
    切り口は、精神医学であれ、宮大工であれ、魚屋さんであれ、俳優であれ。
    平たい言葉で考え抜かれた、公平で謙虚なオハナシは面白い。そこから、歴史や世の中についての考察が興味深いです。

    でも、恐らく肝心なことはソレではなくてですね。
    すごく乱暴に言うと、精神医学と言っても、薬物や手術と言う手段に軸足を置く考え方と、
    トラウマとか幼児体験とか、そういう、我々も興味を持ちやすいところから入っていく、なんていうか、カウンセラー的なところに軸足を置く考え方があると思いまして。
    で、中井さんに限らず文章を書くような人は大抵後者なんですが。
    このなんていうか、親玉みたいな人ですね(笑)。

    でも、親玉みたいな言葉が似合わないくらい、ある種謙虚だし、マスコミ受けを拒否する淡々とした人柄が感じられます。
    (解説で斎藤環さんが書いていたのは「新書を一冊も書いてないのがすごい」)
    そして、やっぱり対人関係、社会関係みたいなところを興味深く考察する姿勢があります。
    ま、言ってみれば、「反ヤンキー的」「非ヤンキー的」なる、知性的な観察と考察ですね。

    いろいろなエッセイ、文章がありますが、
    ●対人関係の数だけ人格がある。
    ●おしゃべりの効能というのは、コミュニケーションじゃなくて、ニンゲンに向かって独り言を言うこと。
    ●対人関係と緊張、緊張と不安、そしてミスとの関係。
    ●人間の自我の働き。世界の一部であることと、世界の中心であることのバランス。
    ●家族関係について、健康について。
    ●睡眠と排便と健康とリラックスについて。
    ●自分が言いたいことと相手が聴きたいことのバランスについて。
    ●日本史の考え方。応仁の乱と高度成長が大きな生活文化誌の境界線。
    などなど、唸るような箇所が、ホントに目白押しです。
    何度も「そうかあ!」とか「そうだよ!」とか「そうだったのか」と思いました。
    さまざまな雑誌原稿や講演をまとめたもので、モノによっては非常に、一般向けだったり、ビジネス組織論向けだったりします。

    これは何ていうか、備忘録にするというよりも、血肉に染みて面白かったという感覚ですね。
    未見の方は、是非、おすすめです。

    そして、ほんとに、謙虚な姿勢、理性主義、現場主義、そして、物凄い力の抜けた強靭な倫理観を感じます。
    そして、文章が平易で上手いです。美しい。
    そして、とにかく、「全体を統合して一つのイズムにする」ということが一切ない。それが素晴らしい。
    だから、なんていうか、一般に向けた、こけおどしの看板的な宣伝がしにくいんですね。
    でも、それがほんとに美しいです。とっちらかっている美しさ。素晴らしさ。

    中井さんについては、何も知りません。
    ニンゲンですから、間違いもあるでしょうし、場合によっては暴論だったり、断言しすぎだったりするところもあると思うんですよね。きっと。
    でも、いいんです。
    強靭な知性と倫理があって、やっぱり最後には、弱きヒトに対しての優しさ、愛情みたいなものがあります。

    これからも、長い時間に渡ってこの人の文章を読める愉しみができたのが、うれしいですね。
    絶版本を、多少内容を整理縮小して作ったのがこの本みたいです。
    さすが、ちくまさん。パチパチ。

  • 文学
    サイエンス

  • 1134円購入2011-06-28

  • 1980年から94年までの文章ということなので私が読んだ中井氏の文章では古い部類になる。かなりの部分は今までに読んだことのあるような話だが、ストレス・危機管理など割と実践的とも言える話が目に付いた。サリヴァン論もおもしろい。

  • 自問自答や語り口調が読み易い。後半になればなるほど書き留めておきたい言葉が出てくる。なにより説得力がある。統合失調症の症状を特別視せず、しかし楽観視もせず、詳細に踏み込むことなく、それでいて患者例も多く載っていて興味深かった。文章が優しい。最後の章になるほどと思うことがいくつもあった。

  • 精神医療の歴史、それぞれの病気の解説と内容は難しいのですが、書き手の優しさが感じられます。時々精神病とは関係のない旅行記みたいなのがまじってるのがイイ。

  • 統合失調症の方を主にみていたようで、その当たりの話が多かった。医者側の見方を感じることができてよかった。

  • 体について書かれている部分のみ興味深く読む。
    この本は以前書かれた同タイトルを再編集したものだった。
    この中に収録されなかったものが読みたかったのかもしれない。

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著者プロフィール

1934年奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。文化功労者(2013年度)。

「2019年 『中井久夫集 11 『患者と医師と薬とのヒポクラテス的出会い――2009-2012』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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