カントはこう考えた: 人はなぜ「なぜ」と問うのか (ちくま学芸文庫 イ 39-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.70
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本棚登録 : 124
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092144

作品紹介・あらすじ

本書を読めば、哲学を勉強したことのないあなたでも『純粋理性批判』がわかる!本書では理性の宿命的パラドックスであるアンチノミー(二律背反)問題を中心に据え、カントが徹底的に追求した問いを、じっくりと解きほぐしていく。カントはこう考えた…西洋の近代合理主義で謳歌されてきた「理性」は、アンチノミーという身から出たサビを暴く理性批判によって、新たに復活しなければならない、と。この理性の起死回生のドラマをめぐる思考のメカニズムとダイナミズムを、さまざまなたとえを駆使してスリリングに読み解く。カント思想の核心がはじめてわかる、不朽の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 理性とは「なぜならば」と答える能力であるとともに、「なぜ?」と問う能力にほかならない。
    自由意志だけが人間の尊厳を保証する。

    「自由がなければ人格もなく、人間固有の価値である尊厳も失われ、したがって倫理・道徳を唱えることも無意味になる」p.71

    アントン・ヴィルヘルム・アモ
    https://wikipredia.net/ja/Anton_Wilhelm_Amo#Works

  • 解説:中川久定
    理性とはどんな能力だろうか◆理性が破綻する◆理性の世紀の哲学ドラマ◆理性の試練◆理性の起死回生◆「なぜ・なぜならば」の極限としての自由

  • カント哲学の入門書です。

    前著『カント入門』(ちくま新書)が、アンチノミーを中心にするという構成上の工夫はありながらも、カント自身の議論にそくして解説がなされていたのに対して、本書はカント哲学の中心問題である「理性批判」を「人はなぜ「なぜ」と問うのか」という言葉で表現し、著者自身の言葉で読者をカントの取り組んだ問題の中核へと導いていきます。じっさい207ページに至るまで、カント自身の文章の引用はおこなわれていないという徹底ぶりです。

    どんなにわかりやすく説明しても、問題そのものの難しさは変わりませんが、本書の行論をていねいにたどっていけば、読者自身が哲学の世界に入り込んでいくことのできる、すぐれた入門書ではないかと思います。

  • カントの哲学にずっとついてまわった問い「アプリオリな総合判断はいかにして可能か」を「人はなぜ「なぜ」と問うのか」と言い換え、それを第1アンチノミーと第3アンチノミー、すなわち世界が無限であるか否か、世界は因果法則に支配されているのか否かという問題に即しながら思考を進めていく。本書における思考のあゆみは、まさに「哲学する」ということの意味を分からせてくれるものである。

  • 「なぜなぜ分析入門」という素敵なタイトルの研修に参加してきた。

    なぜを5回繰り返せというフレーズは有名であるが
    一旦これを捨てて本当に論理的に「なぜ」を考えようというお話。

    カントは難しくて全く読めていないが
    カントが「なぜを執拗に突き止めようとした人」という事実は
    以前この本から知ることができたということを思い出した。

    学芸文庫の知識でも実社会で役に立つと実感できたことに小さな喜び。

  • 智は知と同じである。
    なぜ?と問われて、なぜならと答える。なぜ?という問いで問題になっているのはやっぱり理性。
    あらゆる学問に共通な根本心理はすべて証明不可能であり、それどころか、人間はなぜ生きるのか、‥の人生の重大事の多くはやはり証明不可能である。総じて哲学とは、このような証明不可能な根本心理に対する人間の態度表明だと言っても過言ではない。
    なにごともしかるべき理由(根拠)や原因がなければ生じないし、存在もしない。
    理性の理は道理の理である。
    世界は神という最高原理から説明され、真理も善も神の言葉から導きだされた。世界は神によって創造されたものとされ、真偽も善意もすべて、神の教えによって判定された。
    ヨーロッパ最初の黒人哲学者アモー。
    第一アンチノミー:テーゼ:世界は時間・空間的に有限である。
    アンチテーゼ:世界は時間・空間的に無限である。

  • カントのアンチノミーを素材に、理性の破綻する場面、理性が謳歌された歴史、理性の起死回生、人間が理性的動物であることの意味を述べている。とくに第三章はライプニッツからカントまでの「大空位時代」を埋めるもので、ヴォルフ、ライヘンバッハ、モーゼス・メンデルスゾーンなどの思想が語られています。とくに、ヴォルフが中国思想に傾倒していたこと、アフリカ系のアモーという哲学者がカントより前にドイツの大学で哲学の教鞭をとっていたことなどは大変興味深い内容です。カントが懐疑論にも観念論にも陥らず、あくまでもリアリスト・決定論者として、理性が作動する範囲を求めたという点は『カント入門』と共通する部分ですが、面白い部分です。苦言を呈すれば、「理性の理は理由の理」などという説明が繰り返しでてきますが、「理」とは漢字の意味では「玉の条目」なので、もう少し漢字の原義との関わりに言及してほしいと思います。

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