クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫 ク 17-2)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092151

作品紹介・あらすじ

経済にとってほんとうに大事な問題は何?実は、生産性、所得分配、失業の3つだけ。じゃあなぜ、貿易赤字やインフレ、はたまたグローバル金融市場の狂乱が問題視されるの?-経済の根っこにある問題は何かをきっちり解き、世間を騒がす財政赤字・貿易戦略・通貨政策などなどをじっくり検証する。これを読めばもう、巷に溢れるインチキ議論や報道に惑わされない!ノーベル賞経済学者クルーグマンによる、これ以上やさしくは書けない決定版経済テキストにして、読んで楽しいエンターテインメント教養書。

感想・レビュー・書評

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  • すらすら読めるし,いろんな話,学者に言及してるので入門書としてはありがたい.ただすらすら読めちゃうから,逆に細かいとこまで理解しきれず読み切ってしまった感はある.そこは勉強してから読み直したいところ.あとアメリカの学者さんがアメリカの視点から経済について語っているのがちょっと新鮮でした.

  • これほど読みやすくて平易な経済入門書を、私は他に知らない。もっとも、経済入門書籍一般に対するアンテナの感度が低いので、本書と同種の名著を見逃しているという可能性もあるんだけれど。本書は80年代から90年代にかけてアメリカ経済が直面していた数々の現象を、(まっとうな)経済学をツールに読み解くというスタイルを取る。いつも根っこに現実があるから、なんだか小難しい経済学のタームに踊らされずに済む。経済学にリテラシーのない人でも、そんなに苦も無く読み進めることができる。それどころか、アカデミックな経済学が、実は現実的な経済の諸問題への回答を提示しうるということにも気がつく。きっと経済学の面白さはそういうところにあるのだろう。山形浩生の訳は人によって好き嫌いが分かれるだろうけれど。

  • わかりやすく書かれているとは言っても最前線の学者による経済の本なので難しいところもあるが、現実の経済の問題がフラットに深く解き明かされていて勉強になる。何度か改訂されているとは言え、20年以上前に書かれているのに未だ内容が古びていないのもさすが。
    くだけた訳もよい。

  • こんなに経済学がわかりやすく、かつ納得のいくものとは驚き。これまで読んできた経済学の本とは別物。経済学は不要の学問と思ってきたが、初めて役に立つのかもと思わされた。

  • 経済にとって大切なことは、生産性、所得分配、そして失業の3つだけである。当然ながら、いずれもゼロにしようというのではなく、一定の範囲で収めようということにはなるが、これらが安定的かつ望ましい範囲に収まることが、よい経済をつくるために必要な条件である。

    インフレや貿易赤字、財政赤字などは、前述の3つの問題にくらべれば大きな問題を引き起こすわけではない。

    インフレはある程度の範囲に収まっているうちは雇用や消費に大きな影響を与えないし、貿易赤字も国内の消費や投資に占める割合は実はそれほど大きくなく、影響も限定的である。

    財政赤字は、国の総貯蓄の低下につながる。そして貿易赤字を減らそうとするなら、財政赤字を削減しなければならない。ただし、そのために様々な議論が行われているが、経済に与えるインパクトはこれも限定的である。

    本書が書かれた当時はアメリカ経済は停滞し、のちにIT経済などと呼ばれるような成長はまだ明確になっていなかった。さらには所得格差も広がり続けていた。そのような状況の中で、ドル政策や保護貿易にかまけているのではなく、生産性をなんとか改善し、所得分配と失業の拡大を抑え込むべきという点に焦点を絞ったというのは、慧眼であったのだと思う。

    感銘を受けたのは、筆者が経済指標を改善する(GDP成長率を上げるとか、物価水準を安定させるとか)という点からではなく、社会が安定的で公正な状態を保つために大切だという視点から、これらの議論を展開しているということである。

    「成長性、所得分配、失業」の3つが大切な理由は、それが経済指標との関連性が高いからではなく(もちろん関連性は高いが)、人々の生活の改善との関連性が高いからである。

    経済指標を改善するための経済・財政政策や、実は生活に一番影響を与えているものではない部分をスケープゴートにした規制、政府支出が繰り返されがちな現状の中で、そういった視座、筆致で経済のことを考える筆者の姿勢は、大切なことであると感じた。

    同じく、本書には付録として日本経済を分析した論文が掲載されている。1998年の時点でインフレターゲット論を展開したということは、今の時点から振り返ってみると相当な先見の明であり、改めて読み返してみると、その後約15年ほどの議論を批判的に振り返るためにも有益であった。

  • 今、IMFは難しい舵取りを迫られていることがわかるだろう。トランプは輸入を絞って貿易赤字を減らし、職を増やそうとしているが、彼が言うように、この方法は人為的インフレ圧力となり、労働力の国際競争力を削ぐこととなる。NAIRUが固定値だとは思わないが、流動性がある労働市場で、職の需要を増やそうとして、それが効果的かどうかは、労働力の習熟度にもよるので、ある一定以下の失業率では弾性が強まる。それがNAIRUに見えているのだろう。
    日本の状況はやや奇妙で、ほぼ完全雇用なのにインフレが進まない。

  • 体系的ではない。
    アメリカの1960年代くらいからの経済状況の変化とその原因などについて語る。
    大変面白いが、これを読んで得た知見を自分の将来に活かすのは難しかろうな。

  • 経済のことはよくわからないけれど、もっと知りたい、という気分になる。もともと1994年に出版された本なので、情報は古い。でも、理解不能なことを、なんとなくでもわかるようにしてくれたのは、功績じゃないかな。

  • 複雑な経済現象が単純化されて説明されているので、分かりやすさはある。ただ、書かれたのが同時多発テロやリーマン・ショックよりも大分前なので、例として出てくるのが日米貿易摩擦など、若干古い感じがある。あと、フランクすぎる翻訳も少し気になった。

  • すごく読みにくい。普通の教科書買えば良かった。ちゃんとした内容に砕けた物言いというのは喋り用だし、同じ知識レベルの人たちとの飲み会が良いと思った。

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著者プロフィール

NY市立大学教授。2008年、ノーベル経済学賞受賞。
イェール大学で学士号を、MITで博士号を取得。イェール大学、スタンフォード大学、MITで教鞭をとったのち、プリンストン大学経済学部教授。1982~83年には1年間大統領経済諮問委員会(CEA)のスタッフも務めた。主な研究分野は国際貿易。収穫逓増と不完全競争に焦点を置いた「新しい貿易理論」の創始者の1人である。国際金融、特に通貨危機の問題にも取り組む。1991年、アメリカ経済学会のジョンベイツクラーク賞受賞。日本語への翻訳書多数。

「2019年 『未完の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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