裏返し文章講座: 翻訳から考える日本語の品格 (ちくま学芸文庫 へ 4-6)
- 筑摩書房 (2009年7月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480092212
作品紹介・あらすじ
欠陥翻訳批評で名高いベック先生ならではの、ひねりのきいた文章読本。有名な翻訳書の「悪訳」を通して、よい文章とは何かを考える。世に流通する翻訳書には、分野を問わず、有名無名を問わず、「悪訳」があふれている。ザクザク出てくるヘンな文章、意味不明の言い回し。有名な作家だって、名高い学者だって、ちんぷんかんぷんの文章を書いていた。日本語の文章で、何がわかりにくさを生むのか、すっきり意味が通る読みやすい文章を書くにはどうすればいいのかを、具体的な事例を通して検討、品格ある文章の条件を総括する。巻末には日本語クイズを収録。気軽に楽しめる日本語読本。
感想・レビュー・書評
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翻訳巧拙と文章論がテーマ。口語で読みやすい。副題に「品格」とあるが、国粋的な意味はないので無視していい。
文庫書き下ろしで、もとは平成0年にBECカルチャーセンターで行われた特別講義を録音編集したものだという時空の狭間な本。
タイミングのよいことに、私が平行して読んでいる堅くるしい本が悪文だらけなので、本書に酷評されるかたちになっており、愉快だった。
【書誌情報+内容紹介】
定価:本体1,000円+税
Cコード:0181
整理番号:へ-4-6
刊行日: 2009/07/08
判型:文庫判
ページ数:288
ISBN:978-4-480-09221-2
JANコード:9784480092212
欠陥翻訳批評で名高いベック先生ならではの、ひねりのきいた文章読本。有名な翻訳書の「悪訳」を通して、よい文章とは何かを考える。世に流通する翻訳書には、分野を問わず、有名無名を問わず、「悪訳」があふれている。ザクザク出てくるヘンな文章、意味不明の言い回し。有名な作家だって、名高い学者だって、ちんぷんかんぷんの文章を書いていた。日本語の文章で、何がわかりにくさを生むのか、すっきり意味が通る読みやすい文章を書くにはどうすればいいのかを、具体的な事例を通して検討、品格ある文章の条件を総括する。巻末には日本語クイズを収録。気軽に楽しめる日本語読本。
<http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480092212/>
【目次】
目次 [003-006]
第一講 開講にあたって 009
悪文に学ぶ/誤訳と悪訳/品格とは?/英語ならdecency
第二講 権威の生んだ悪文――アダム・スミス『国富論』 028
内容は正確でも/「達意」には遠い文章/日本語は非論理的?!
補講一 日本語の論理性について 044
論理的な文章とは/入試問題に見る失格日本語
補講二 主語の問題その他(とりわけ「は」と「が」について) 066
複数形はなくても困らない/主語・定動詞もなくてもすむ/「は」と「が」の違い
第三講 学者ことばの陰に――ジョン・K.ガルブレイス『不確実性の時代』 077
学問能力と文章能力は別物/まちがえるにも程がある/読者を下に見る
補講一 翻訳調というもの 097
辞書だけでは間に合わない/「直訳」は翻訳にあらず
補講二 外国のものらしいということ 106
どちらが外国人?/「わからない奴にはわからないでもよい」/日本語をゆがめるもの
第四講 文学ならぬ翻訳――D.H.ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』 121
奇妙な会話/へたくそな文章オンパレード/翻訳とはこんなもの?!
補講 チャタレー裁判余録 144
不可解なこと、不思議なこと/庶民にはもったいない?
第五講 しどろもどろのアマチュア訳――ガートルード・スタイン『三人の女』 153
的はずれな酷評/バラバラ事件
補講 文体の翻訳について 170
文体をどう再現するか/同等効果の法則/翻訳そして翻訳者の要件
第六講 作家の文章力――E.ブロンテ『嵐が丘』 186
名訳から迷訳へ/文学から遠い日本語
補講 人称代名詞について 203
「ママ」か「わたし」か/「あなた」と呼べるのは――二人称/「かれ」「かの女」の多用は禁――三人称
第七講 総括 悪文を生み出すもの 216
1 無恥・無思慮――権威主義が品位を落す 216
権威主義三態/意味不明のジャーゴン
2 音痴――耳の悪さが変調を招く 230
日本語のリズム・英語のリズム/三つの注意事項
3 無知・無感覚――知性・感性の乏しさが駄文・拙文を生む 246
みっともないことば/論理と知識
付録
日本語クイズ [269-279]
クイズ解答 [280-284]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
積年の鬱憤を晴らすような語り口ではあるものの、内容そのものは誠実。至極甚深の翻訳論です。下手くそな翻訳文にイライラさせられてきた読者ならば、溜飲が下がるはず。論点も多岐にわたり、いろんな読み方ができます。
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著者が他人の翻訳を批判→
訳者曰く、私は他人の翻訳に注文をつけるときは私信でやるのが仁義だと思う→
私信だと確かに訳者は素知らぬ顔ができていいかもしれないが、欠陥品である翻訳を読まされたのにそれを知らされない読者の立場はどうなるんだ、ごるぁ!
という下りに見られるように著者のスタンスは、一応、読者側。
一応とつくのは著者は読者に対しても怒りを持っているから。
馬鹿げた翻訳をする訳者、それを見て見ぬ振りする出版社、そしてそんな欠陥品をありがたがる読者。
翻訳を取り巻くすべてに、この現状に憤っている著者の罵倒本。(笑)と書いてあるのに目が笑ってない絵が頭に浮かぶ。 -
1.饒舌を慎む。
2.言葉づかいを粗略にせぬこと
3.警護や尊称を疎かにしないこと
品格のある日本語とは、しかるべき言葉がしかるべき場所でしかるべき用法に従って使われる日本語。
上智の国語の入試問題は全国最低の奇妙奇天烈な日本語だそうだ。。 -
チャタレイ夫人の翻訳に爆笑しつつ、別宮先生が以前別著でおっしゃられていた「翻訳者とは畢竟、名文家でなくてはならない」という名言をつくづく反芻。
それにしても、翻訳者に限らず男性がものされる小説で、女性の登場人物がやたらと「○○ですわ」と「わ」止めで話すのをたまに眼にしますが、ルーツはチャタレイ夫人だったのかしらん。「ああ、いけませんわ、およしになって」みたいな。 -
辛口。
さくさくと切っていくのがすがすがしい。
惜しいのはこの本の文体に「品格」が掛けていることだ。
なんとなくだけど、作者ちょっと攻撃されるのに対して用心してるところがあるような。
言いたい奴に言わせておけばいいさ、と言いつつ気にするような雰囲気がある。
そこがやや切れ味を鈍らせている。
それとも、負け犬の遠吠えっぽいところかなぁ。
ああでも、基本は面白いです。