新編 普通をだれも教えてくれない (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 348
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092700

作品紹介・あらすじ

「普通」とは、人が生きていく上で本当に拠りどころとなること。ところが今、周りを見渡してみても、そんな「普通」はなかなか見出せない。私たちが暮らす場も大きく変わり、人と人との結ばれ方も違ってきた。自由で快適で安全な暮らし。それが実現しているようでその実、息苦しい。時として私たちは他人を、そして自らを傷つける。一体、「普通」はどこにあるのか?この社会の「いま」と哲学的思考とが切り結ばれる珠玉のエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 最近、鷲田清一が話題に挙がることがあり、ブクログで調べてみたら、意外なことに内田樹との対談集『大人のいない国』しか登録していない!

    えー、意外と読んでないんだな、と思ってとりあえず二冊購入。

    ん?表紙、見たことあるよーな。

    ん??この話読んだことあるよーな。

    特に「コンビニという文化」なんて、記憶に鮮明に残っているじゃん‼︎
    ということで、既読でした。なんで、登録していなかったんだろう。

    でも、10年程前の話題が書かれているとは思えない、見通し。すごい人だ。

    一つは、当たり前のものをもう一度見直させる目。

    「未知のひとからの電話がきらいだ。そもそも音ひとつで、まるで命令するように赤の他人を電話口に呼びだすというのが、無神経だと思う。」

    「じぶんたちがやっていることへのチェック機構がはたらかないのである。だからどんな組織も「外部評価」をお願いするようになる。」

    そして、これからの社会に対する「自分」というものの姿勢。

    「家族生活をいとなむ者はだれでも、じぶんの身体がじぶんだけのものではないことを日々痛いほど感じているはずだ。」

    「ぜんぶ外部に委託するかたちをとるのが「ホームレス」ということになる。そしてアパートやマンションでの独り住まいは、まさにそういう生活のスタイルをとるようになっているというのだ。」

    「いまグローバリズムといわれているものは、そういう普遍ではない。特定の優勢な尺度が地球を覆いだしているということ、つまりは価値基準の一元化のことにすぎない。それは複数の普遍を認めない。」

    そして、こんな指摘も今のホットな話題と結び付いて面白い。

    「そこに入ると世界が裏返ってしまうような孔や隙間は、しかし、消えたのではない。なんでもない「普通」のマンションの個室に、あるいは住宅街の一室に、内在しだしたと言うべきだ。」

    この社会は、堅牢に守られていると思わせながら、ただ見えない場所に見たくないものを動かしただけで、それは見えていた頃に増して、境界のない危険となって襲いかかっている。

    他者との関係も、同じように思う。
    直接的に見たくない、触れたくないものを動かしただけで、本来、他者と関わらないことは生きていく上ではできない。
    また、自分を自分として成り立たせているのは、鏡ではなく他者なのである。
    そのことだけを都合良く忘れ、あらゆる傷は医療が治すべきものと信じ、またあらゆる危険性はサービスによって排除されているべきものと、信じてしまった気がする。

    人間としての「自然」を説こうとする筆者から、考えさせられたのだった。

  •  「普通」ってなんだろう。

     僕が生きる現代社会において「普通」という言葉はどちらかというと、マイナスの意味で使用される。「普通」の人生、「普通」の大学、「普通」の顔、、、。例えば誰かに「君って普通に暮らして、普通の大学を卒業して、普通の会社に就職して、きっとこれからも普通の人生を歩んでいくんだろうね。」と言われたら誰もいい気分はしないと思う。存在するすべての人間を何かの指標でカテゴライズして、相対的に大きなカテゴリーにあてはめることができる、というようなことがおそらく普通の意味だろうか。ただ普通と言われていい気持ちしないのに、普通の海の中に浸かっていることそのものは特に居心地は悪くない。どちらかというと普通ということに対して軽蔑の念を持ちつつも、普通の周りからあまり離れないでいようと思いながら生きている。『普通』は疎まれながらも、人間が生きる軸ともなっているのだ。心の底から腹の立つ人物がいて殺したいんだけど、普通は殺さないよね、というように。

     僕たちが馬鹿にしながら、実は心の拠り所にしている『普通』。まぁうまくいかないこともあるけれど、心の拠り所にしておけば、大きな失敗はないだろうという『普通』。その『普通』が最近どうもおかしなことになっている。今まで自分をある程度のところまで連れていってくれていた『普通』を信じて生きても、うまくいかないことがほとんどになっている、と人々は思い始めている。それは日本の社会的目的の飽和から来ているのか、日本経済の破綻から来ているのか、とにかく何を信じていいのかも分からない。手に入ることはあきらめてしまった『普通』ではないことがらだけでなく、自分たちが馬鹿にしていた『普通」ということさえ、どこかに消えてしまった。だから人々は恐怖におちいり、不安になり、そして無力感を携えながら、意味もなく街をふらふらと歩いていくのだろう。

     本書はそのような現代社会に向けて、『普通』とはなにかということのヒントを与えてくれるだろう。答えはないけれど。

  • 今のこの国で
    「あれっ?」
    と感じている
    さまざまな違和感を
    一つ一つ易しい言葉で
    解きほぐしてくださっている
    そんな感じの
    哲学エツセイです

    ややもすれば
    どんなものにも
    直ぐにクロシロをつけてしまいがちな
    今の時勢を
    「どうでしょうねぇ…」
    と思っていただけに

    わからないものを
    そのままの状態にして
    じっと 考え続けている人には
    ちょうど よいかもしれませんね

  • 元阪大総長が1996年から2008年にかけて書いたエッセイを集めた一冊。哲学者らしい切り口と、哲学者らしくないユニークな切り口の両方があって、読者を飽きさせない。
    ただ、このエッセイ集はどうにもワタシは受け付けられなかった。なぜなら、大半の切り口が否定的なものだったから。「普通」「社会人」という言葉の定義はまだ共感できる部分もあったが、ケータイに関するくだりや、スポーツの応援のくだりなどはワタシには耐えられなかった。明るい話ももちろんあるのだけれど、それについてもどこかで何かを否定してから話を結ぶ。既存のものを否定して論を張るという手法はアリとは思うが、それが一冊の中でこれほど続くとさすがに辛い。

  • 【いちぶん】
    みんな分かっていて、それをも含み込んで、近づきもせず、立ち去りもしない、「よう」という眼。
    旧い友だちにそういう眼をふと感じることがある。たまに会って、いろいろ聴いてもらいたい、吐き出したいという想いがあったのに、じかに会えばその話はどうでもよくなって、それについて一言もふれなくて、最後は「いろんなことがあるねえ」とつぶやく。

  • それぞれのエッセイが書かれた年が記されているので、その時代状況を踏まえながら、読み進めることが出来るのは嬉しい。
    「ものには旬というものが……」と「藝と余韻」が佳かった。

  • 哲学あh多くの人の中に生きている、本当に大事なものは何か、それを人々の生き方のうちに見つけるのが哲学ではないか。哲学理論を発明するのでhなく哲学を発見すること、っして生きられたそれを言葉やrンりにいて、多くにhとに伝えること、そういう媒介者の役割が哲学者の仕事。

    ヨーロッパでは哲学は日本で思い描くよりおmはるかに社会的な事柄をその思考の対象にしている。

  • 「藝と余韻」が特によかった。自分のからだを、生活をみつめなおすきっかけになります。

  •  会社帰りにときどき立ち寄る図書館の書棚で見つけました。ちょっと変わったタイトルが気になって手に取った本です。
     著者の鷲田清一氏は大阪大学総長も務めた哲学者です。哲学といっても専門は「臨床哲学」とのこと。私としては、初めて耳にしたジャンルです。
     本書は、その鷲田氏が、1990年代から2000年代にかけて様々な新聞や雑誌に発表したエッセイを取りまとめたものです。身近にある多彩なテーマを著者独特の切り口で解きほぐしていて、バラエティに富んだなかなか興味深い内容でした。

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著者プロフィール

1949年生まれ。京都市立芸術大学学長。せんだいメディアテーク館長。哲学者。臨床哲学を探究する。著書に『現象学の視線』『モードの迷宮』『じぶん・この不思議な存在』『ぐずぐずの理由』『聴くことの力――臨床哲学試論』などがある。

「2018年 『大正=歴史の踊り場とは何か 現代の起点を探る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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