近代ヨーロッパ史 (ちくま学芸文庫 フ 3-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 152
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092991

作品紹介・あらすじ

ヨーロッパの近代は、その後の世界を決定づけた。現代の繁栄も混迷もここに発し、21世紀になってなお世界が解決に苦闘する難題もまた、ここに源をもっている。では、なぜそのようなことになったのだろうか。教科書で習った近代ヨーロッパの重大事件、アメリカ合衆国の独立や、フランス革命、産業革命などは、私たちの生きる現代世界にどのような影響を与えているのだろうか。複雑で多様な要素からなる歴史を解きほぐし、個々の出来事の知識だけからは計り知れない近代ヨーロッパのインパクトの意味と深さを、平明かつ総合的に考える。

感想・レビュー・書評

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  • このテーマを1冊でまとめることに無理を感じたが、大きな流れをつかむには勉強になった。

    ・14世紀にペストが大流行した後、15世紀半ばから17世紀半ばにかけて人口は増加したが、17世紀半ばからは気候の寒冷化を背景として疫病・飢饉・戦争の三悪によって人口は再び停滞した。
    ・18世紀に北西ヨーロッパで経済成長が始まった要因は、マメ科植物の導入や畜産との併用などによる農法の技術改良によって食糧事情が好転したこと、それに伴って人口が継続的に増加したこと、ギルドなどの同業組合が衰退して職業活動が自由になったこと、経済活動がヨーロッパ外へ膨張したことがあげられる。
    ・イギリスでは、17世紀にピューリタン革命による一時的な共和体制の実現を経て、名誉革命による立憲王政を確立し、安定した政治体制を実現したことが、経済的に展開する重要な基盤となった。また、オランダでは、スペインから独立して以来、商業に携わる有力者たちが政治的な支配層を形成していた。
    ・イギリスとオランダ以外の18世紀のヨーロッパは、既存の王権に基づいた政治体制を変更することなく社会経済の動きをあらたにする啓蒙専制の時代になっていったが、中途半端な展開に終わり、フランスでは政治体制が革命的に変化することになった。
    ・18世紀後半からの産業革命によって、イギリスは圧倒的に有利な立場に立ったため、後発の多くの国家は保護関税体制と政府主導による産業育成政策をとる殖産興業や、生産のための原料と市場を確保するための強兵政策を採用した。

  • 「教科書みたいだなぁ。授業で使うように書いたのかなぁ」と思って読んでいたら本当にそうでした。放送大学の教科書的なものであったらしい。
    私も別の通信大学のレポートで読みました。
    近代ヨーロッパ史を手放しで賞賛するでもなく、全面的に否定するでもなく、多面的に捉え直す。そんな講義になっていました。19世紀って書いてあるけども18世紀途中から〜20世紀初頭を網羅する内容。
    プラスの面とマイナスの面と双方に触れ、双方を思考の材料にすること。中々難しいけども、これは歴史に関わらず全てのことに言えるかなと思った。

  • よくある近代ヨーロッパ史の解説本の一つ

  • 浅いですなぁ、この内容は。と思っていたら放送大学の講義なんですね。
    ただ大学の講義でもこのレベルの内容が結構普通に話されていたりした記憶があって、あかんですよね、こういうのは、正直申し上げまして。大学と名乗るのであるならもうちょっと尖がってもらわないと、という気持ちがあります、当方は。

  • 新書文庫

  • [広大で深遠な潮流]思想的にも科学的にも、現在の世界の外郭の形成に大きな影響を与えたヨーロッパの近代。それがいかなる力に導かれた時代であったかを明らかにするとともに、今日に残る正と負の側面を多様な観点から捉えた一冊です。著者は、学習院大学長を務められた福井憲彦。


    講義用に作成したものを編集したというだけあり、要点がしっかりまとめられた良書だと思います。網羅的である一方、ヨーロッパ近代とは何かという本質的な問題に対しても正面から向き合っており、本書を足がかりにヨーロッパの広大な歴史に一歩踏み出すのも悪くないのではないでしょうか。図や表なども要所要所でわかりやすさを高めるために使用されており、歴史に興味がある方にはもちろん、とっつきにくさを覚えている方にもオススメできる作品です。


    ある一つの見方に拘泥してヨーロッパを捉えるのではなく、下記の筆者からの提言に表れるように、著者自身が多面的にヨーロッパを眺めている点にも好感が持てます。時代的にも分野的にも幅広く記述がなされているため、個々のテーマや国・地域に対する深みが足りないと思われる方もいるかもしれませんが、巻末の参考文献も充実していましたので、その点も「抜かりがない」つくりになっているのではないでしょうか。

    〜近代ヨーロッパの歴史を捉えるには、捉える側が複眼的な見方を容易してみなければならない。〜

    バランスがとれてました☆5つ

  • 著者があとがきでも書いているように、講談社の興亡の世界史13巻とほぼ同じ構成。ぱらぱらとめくった感じでは、
    ホダースの『ジン街』の図版も同じものが使われている。
    入門者向けのように思えたので、読まなかった。ただし参考文献は役に立ちそう。

  • 2013.11.5
    わかりやすく、読みやすい。
    大航海時代から第一次世界大戦のヨーロッパのどの部分を授業で取り上げるかを迷えば、この本を参考にするとよい。少ない事例で、端的にサラッと説明してくれている。複眼的に捉える大切さも何度も強調しており、信頼できる。

  • 近代欧州の大きな流れを知れる素晴らしき良書。

  • まごうことなき良著。古典には劣ると言う意味で★4つ。

    表題の近代ヨーロッパについての歴史を、実にうまく顕している。それができるのも、著者の巨視的観点と真実を見抜く真眼があるからだろう。とにかく、全体像を捉えた上での著述であるので、非常に有益な内容となっている。

    「全ての学問は未来のためにある」ということを歴史学という観点から見事に体現した著作。名著と言うべき。

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著者プロフィール

学習院大学文学部教授
フランス近現代史
〈主な著書〉
『フランス史』世界各国史12(山川出版社、2001年、編著)『ヨーロッパ近代の社会史――工業化と国民形成』(岩波書店、2005年)『歴史学入門』(岩波テキストブックスα、2006年)『近代ヨーロッパの覇権』「興亡の世界史」第13巻(講談社、2008年)など多数。

「2016年 『ドイツ・フランス共通歴史教科書【近現代史】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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