中世の星の下で (ちくま学芸文庫 ア 25-4)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093417

作品紹介・あらすじ

遠くヨーロッパ中世、市井の人びとは何を思い、どのように暮らしていたのだろうか。本書から聞こえてくるのは、たとえば石、星、橋、暦、鐘、あるいは驢馬、狼など、人びとの日常生活をとりまく具体的な"もの"との間にかわされた交感の遠いこだまである。兄弟団、賎民、ユダヤ人、煙突掃除人など被差別者へ向けられた著者の温かい眼差しを通して見えてくるのは、彼らの間の強い絆である。「民衆史を中心に据えた社会史」探究の軌跡は、私たちの社会を照らし出す鏡ともなっている。ヨーロッパ中世史研究の泰斗が遺した、珠玉の論集。

感想・レビュー・書評

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    中世の中でも、特に賎民史に詳しい阿部謹也氏の短文集。日本の中世賎民史との類似が興味深い。網野善彦氏が本書の解説文を書いていることも、日本と中世の類似性のひとつの象徴といえる。

  • 新書文庫

  • 目に見える人のつながり、目に見えない人のつながり。中世の人々の生活の中に入っていく目。

  • 社会人になったばかりの頃、中学時代の同級生を交通事故で亡くした。その通夜の席で、久しぶりに集まった仲間たちが酒を飲んで大騒ぎして、葬儀所が居酒屋のような雰囲気になったことがあった。
    これとまったく同じことがヨーロッパ中世にも見られた。通夜を厳粛にしめやかに営まれるのは後代になってからの習慣なんだとか。
    「祈りと歌、説教だけでは通夜に集まった人々の気持はおさまらなかったのである」(105ページ)。

    確かにそうだ。

  • 中世ヨーロッパの人々の暮らしを情感溢れる筆致で描く前段は、いわば究極の異文化体験といった趣。
    中世ヨーロッパの世界は現代の我々から見れば剣と魔法のファンタジー世界そのものだが、考えてみれば当たり前の話で、世界を秩序づける説明の体系が、現代とは全く異なっていたということ。

    後段は中世を離れ、歴史学とは何かが論じられるが、中でも、自由な市民が結成した、諸”協会”についての考察が印象に残った。
    ”協会”は中世の兄弟会やギルドの系譜に連なるということだから、このような”結社”はヨーロッパの市民にとっては由緒正しく、また自明のものだったのだろう。
    だとすると、日本国憲法においてはやや唐突に感じられるが、”結社の自由”が基本的人権のデファクトスタンダードとされている意味あいについて、何となく得心がいった。

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著者プロフィール

1935年生まれ。共立女子大学学長。専攻は西洋中世史。著書に『阿部謹也著作集』(筑摩書房)、『学問と「世間」』『ヨーロッパを見る視角』(ともに岩波書店)、『「世間」とは何か』『「教養」とは何か』(講談社)。

「2002年 『世間学への招待』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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