- Amazon.co.jp ・本
- / ISBN・EAN: 9784480093622
感想・レビュー・書評
-
たくさんの著書をもつ柔軟で知的・実践的な精神科医・中井久夫さんのエッセイ集。
最初の方に精神科患者の「家族」をめぐる考察が収められている。
「家族精神医学」なる研究ジャンルがあるらしく、そういえば分裂病(統合失調症)の患者の家族に関する研究とか、かつて読んだことがある。「個人が病むというより、関係が病むのである」というテーゼは、サリヴァンや木村敏にも通じる考え方だが、中井さんも一定の距離を保ちながらある程度同意しているようだ。
「個」を孤立した単独者としてとらえるのでなく、多層的な「系」との絡み合いそのものとして、人間を考え直すこと。
この思考法はメルロ=ポンティ、グレゴリー・ベイトソンなどにも見られ、20世紀以降の重要な「知」だと私も思う。
この本冒頭の「家族の表象」(1983)で述べられている「家族ホメオスターシス」の問題が興味深い。
現代的な家族なるものが半ば閉鎖的な系として、変化をみずから打ち消すような形でバランスを保っていく。そうして、たとえば「同胞」であるきょうだい同士で、かわるがわる精神不調になったりするようなことが起こる。これは姉が重度の統合失調症だった私にとってひとごとどころではない。彼女が癌でいきなり死ぬと同時に、私はニセモノかもしれない「うつ」に陥ったのだ。
この本のまんなかへんには「サザエさん」「フクちゃん」「ドラえもん」についての短い考察も収められており、これは多くの一般的な読者にもおもしろいだろう。
たとえば「サザエさん」のあの奇怪な家族構成については、思春期の少年から青年、中年にさしかかりある種の陰りを帯びかねない30代終わり頃から40代の人間が、存在しない。だから「あの家族構成には不安をそそるものがない」(p.120)。
一方「ドラえもん」ののび太たちは、一人遊びの年代から、仲間たちと協力し合いながら共に遊ぶ共同作業が可能な年代へと移りゆく、転換期に当たるという。
「あやとり」を得意としたり、空想力の強いのび太は、ドラえもんによって「現実」へと常に立ち返らせられる。
この人の本はほんとうに面白い。過剰に理論化することはないが、さまざまな知を渡り歩きながら、折衷的に自己の臨床技術を磨いてきた「達人」である。この「中井久夫コレクション」シリーズは、今後も読んでいきたい。
ただし、文庫化されるだけあって、これらの本は古い。(この巻もすべて80年代の文章ばかりだ。)
いまの氾濫する「うつ」の状況について、専門外の事柄ではあるが、中井さんはどのように見ているのだろう? そのテーマで何か文章があれば、是非読んでみたいのだが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ぼちぼち読んだ。あまり覚えていることはなく、30年前くらいに書かれたものなので、いま、もっと時代が変わったなと思う。
-
家族にもかかわらず患者は回復するのだ
-
烏兎の庭 第六部 9.30.18
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto06/doc/kenko.html -
1228円購入2011-06-28
-
家族論のパート、世代別の精神医学を中心にしたパート、精神科医の問題についてのパートの3つに分かれる。
あんまり時間をかけて読んだので最初のほうに何が書いてあったかすっかり忘れてしまった。
サザエさんの家族にはうまい具合に転換期的な年齢の構成人員がいない。登場人物の年齢を10上げたらサザエさんの世界は成り立たない。
日本では高齢者の労働が、例えばドイツでの外国労働者のやっている仕事をしている。高速料金所とかビルの清掃とか。1980年代の文章であるが、今も変わらないどころか加速している感がある。
グラフで表す。年表であらわす。 -
○
-
やはりこの方の本は示唆に富む。家族がテーマだが、真ん中辺りの老人論は特に重要に思える。人間の能力はそれぞれピークが異なるというのは私も時々考えていることで、こんな風に自分の考えをうまい言い方で言われたりすると嬉しいし、新しい文脈や角度からの気付きもある。解説の春日先生も言われていることだけれど。マンガ論も面白い。座右に置いて読み返したい。
-
飢餓陣営紹介
-
読んだ。