「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房 (2011年6月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480093622

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

先見の明や視点の持ち方について深く考えさせられる内容が特徴です。過去に書かれた文章が、今の時代にも新鮮な気づきを与えてくれるため、読者は自身の思考を見つめ直すきっかけを得られます。また、講演を集めた形...

感想・レビュー・書評

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  • たくさんの著書をもつ柔軟で知的・実践的な精神科医・中井久夫さんのエッセイ集。
    最初の方に精神科患者の「家族」をめぐる考察が収められている。
    「家族精神医学」なる研究ジャンルがあるらしく、そういえば分裂病(統合失調症)の患者の家族に関する研究とか、かつて読んだことがある。「個人が病むというより、関係が病むのである」というテーゼは、サリヴァンや木村敏にも通じる考え方だが、中井さんも一定の距離を保ちながらある程度同意しているようだ。
    「個」を孤立した単独者としてとらえるのでなく、多層的な「系」との絡み合いそのものとして、人間を考え直すこと。
    この思考法はメルロ=ポンティ、グレゴリー・ベイトソンなどにも見られ、20世紀以降の重要な「知」だと私も思う。
    この本冒頭の「家族の表象」(1983)で述べられている「家族ホメオスターシス」の問題が興味深い。
    現代的な家族なるものが半ば閉鎖的な系として、変化をみずから打ち消すような形でバランスを保っていく。そうして、たとえば「同胞」であるきょうだい同士で、かわるがわる精神不調になったりするようなことが起こる。これは姉が重度の統合失調症だった私にとってひとごとどころではない。彼女が癌でいきなり死ぬと同時に、私はニセモノかもしれない「うつ」に陥ったのだ。

    この本のまんなかへんには「サザエさん」「フクちゃん」「ドラえもん」についての短い考察も収められており、これは多くの一般的な読者にもおもしろいだろう。
    たとえば「サザエさん」のあの奇怪な家族構成については、思春期の少年から青年、中年にさしかかりある種の陰りを帯びかねない30代終わり頃から40代の人間が、存在しない。だから「あの家族構成には不安をそそるものがない」(p.120)。
    一方「ドラえもん」ののび太たちは、一人遊びの年代から、仲間たちと協力し合いながら共に遊ぶ共同作業が可能な年代へと移りゆく、転換期に当たるという。
    「あやとり」を得意としたり、空想力の強いのび太は、ドラえもんによって「現実」へと常に立ち返らせられる。

    この人の本はほんとうに面白い。過剰に理論化することはないが、さまざまな知を渡り歩きながら、折衷的に自己の臨床技術を磨いてきた「達人」である。この「中井久夫コレクション」シリーズは、今後も読んでいきたい。
    ただし、文庫化されるだけあって、これらの本は古い。(この巻もすべて80年代の文章ばかりだ。)
    いまの氾濫する「うつ」の状況について、専門外の事柄ではあるが、中井さんはどのように見ているのだろう? そのテーマで何か文章があれば、是非読んでみたいのだが。

  • ひとは善悪ではなく、余裕があるないか。
    善悪なら対立するが、損得ならみんなにとって損、得、という柔軟性があるため受け入れられやすく、現実に目を向けやすくなる利点もある。

    家庭訪問は情報をとりにいくことだけが目的ではない。生身の支援者が入ることで、強固な家庭内の平衡に少しでもヒビを入れられる可能性がある。ただし、家族の聖域はできるだけ尊重する。本人の秘密を残しておくことも大切。

    強い相互作用はハイリスクハイリターン。
    弱い相互作用には、見守り、保証し、互いにルールに従って一定の距離をとり、理性、損得で行動する安心感や、関係が開かれているという利点がある。

    話す時は相手とのチューニングが内容よりも重要。

    患者となるひとは幼い頃から愚痴の聞き役、調停役で、誰にも評価されず育ってきた可能性がある。調停者は常に自分の主張を後回しにする。

  • 1979〜1987年にかけて執筆された論考をまとめたもの。と言うことでところどころの古さ(その時代の言い回しやものの捉え方など)は感じますが、根の部分(病気そのもの)は変わらないので考えさせられるものはあります。

    (p20)精神科医は家族の中に一人でも安心して真実を告げうる人がいないかどうか熱心に探るものだ。
    やっぱりそうなのかと思った箇所でした。
    家族の何人かが精神科にかかりつけていたことがあったのですが(時期が一緒だったりばらばらだったりいろいろ)親と一緒に付き添って行って気がつくと、医師が(これも途中で変わったりしても)最終的に私にばかりいろいろ説明したり対処を求めるような話をしてくるようになったのできっと親じゃだめだと思われてるなと感じるようになりました。もう随分昔の話ですが。

    (p38)みとり役にまわることは、精神健康の失調の表面化「発病」を抑える力があるらしい。
    これも本当だと思います。
    みとり役と言うのは、患者の家族で患者を主にケアすることが多い役割の人を指すようです。
    家族が発病している時に一緒におかしくなっていられないというのもあるし(気合も入ってしまうし)、逆に家族全体の病理を患者が発病することで背負ってしまっているからというケースもあるように思います。
    (私は医師でも医療関係者でもないですが統合失調症の人と長く関わってきてそう感じるようになりました)

    優れた精神科医だった中井先生のような方が、最初から精神科を目指していたわけではなかったというのは意外な気がしました。そもそも医師を目指していたわけでもなさそうだったことも。(p304〜)

    外国人の労働力を入れる流れがあったけれどその頃は結局そうはならなかったというような話が出てきますが(p298)先生がご存命だったら、今の外国人労働者が至る所に参入する日本の様子をどのように感じられただろう、嘆かれたか、危機を感じられたか、これからはそういう時代だと言われたか、聞いてみたかったと思いました。

    (治療が進むような)有意義な面接の回数はおよそ40回とあるのを読んで「そうかもしれないなぁ」と。でも治療者が代われば新しい可能性が開けるかもともあり、それもそうかもとも思いました。何事も、相手が変われば対応や状況が変わることはあるので確かにそれは言えるでしょう。
    でも面接で40回というのは知っておいて良い目安のような気がしました。そのくらいかかりつけて治療に進展が見られなかったら、先生を変えるか病院を変えた方が良いということになりませんかね?

    他にも控えておきたい言葉がたくさんありました。

    秘密を持たない人間は弱くなる(p77)
    人生前半の課題は挑戦であり、後半の課題は別離であるというテーゼがある(中略)所有しなかったもの、たとえば若いときに果たせなかったことへの悔恨からどう別離するかということもある(p230)
    「神はその滅ぼさんとする者をまず狂わしむ」というような社会の舵の取り方のないようにということである(p293)

             

  • 先見の明、というものについて考える。この本に書かれている文章は、わりとむかしに書かれたものばかりなのだけれど(むかし、というのがどれくらいまえからむかし、なのかはさておき)、今読んでもはっとさせられることが多い。ほんとうに多い。そういう視点とものの考え方を持つためには、どうすればよいのだろうか。才能か。それとも、よくよく見てよくよく考えること、くらいのシンプルなことなのだろうか。

  • 講演等を集めた本
    軽度認知症高齢者と接するときにふざけてしまう状態

  • ▶まさかの図書館にあり。
    ●2025年5月8日、Amazonで「世に棲む患者」を検索して商品ページの下部の「出版社より」というスペースに著書がいくつも表示されており、そのなかの1冊。

    これちょっと読みたい。

  • ぼちぼち読んだ。あまり覚えていることはなく、30年前くらいに書かれたものなので、いま、もっと時代が変わったなと思う。

  • 家族にもかかわらず患者は回復するのだ

  • 1228円購入2011-06-28

  • 家族論のパート、世代別の精神医学を中心にしたパート、精神科医の問題についてのパートの3つに分かれる。

    あんまり時間をかけて読んだので最初のほうに何が書いてあったかすっかり忘れてしまった。

    サザエさんの家族にはうまい具合に転換期的な年齢の構成人員がいない。登場人物の年齢を10上げたらサザエさんの世界は成り立たない。

    日本では高齢者の労働が、例えばドイツでの外国労働者のやっている仕事をしている。高速料金所とかビルの清掃とか。1980年代の文章であるが、今も変わらないどころか加速している感がある。

    グラフで表す。年表であらわす。

  • やはりこの方の本は示唆に富む。家族がテーマだが、真ん中辺りの老人論は特に重要に思える。人間の能力はそれぞれピークが異なるというのは私も時々考えていることで、こんな風に自分の考えをうまい言い方で言われたりすると嬉しいし、新しい文脈や角度からの気付きもある。解説の春日先生も言われていることだけれど。マンガ論も面白い。座右に置いて読み返したい。

  • 飢餓陣営紹介

  • 読んだ。

  • 精神医療家としての長い経験を感じさせる。震災以降の出版。

    ・家庭内のホメオスタシス(病気の交代)
    ・感情を口に出すことの多い家族、小意地悪な家族
    ・生のエネルギーを吸い取る人、事物
    ・統合失調者の家 偶発事が起こらない、偶然の力がない
    ・金属バット事件について
    ・サザエさん、ドラえもんをもとに家族問題を分析、マニアックなドラえもん分析が面白い。
    ・老人の精神衛生
    ・サリヴァン

  • 久々にこのテの書を読んだ──私が言葉を尽くせぬことを代弁している一冊。文庫化。

  • 久々にこのテの書を読んだ──私が言葉を尽くせぬことを代弁している一冊。文庫化。

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著者プロフィール

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県生まれ。2022年逝去。京都大学法学部から医学部に編入後卒業。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構顧問。著書に『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982)、『中井久夫著作集----精神医学の経験』(岩崎学術出版社、1984-1992)、『中井久夫コレクション』(筑摩書房、2009-2013)、『アリアドネからの糸』(みすず書房、1997)、『樹をみつめて』(みすず書房、2006)、『「昭和」を送る』(みすず書房、2013)など。訳詩集に『現代ギリシャ詩選』(みすず書房、1985)、『ヴァレリー、若きバルク/魅惑』(みすず書房、1995)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)、『中井久夫集 全11巻』(みすず書房、2017-19)

「2022年 『戦争と平和 ある観察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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