インテリジェンス―国家・組織は情報をいかに扱うべきか (ちくま学芸文庫 コ 36-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480094186

作品紹介・あらすじ

ますます過剰化、多様化する情報の渦のなかを国家は、組織は、そして国民はどう生き抜いていけるのか。意思決定者や軍が正しい行動をとるために、情報機関にいま必要とされていることはなんなのか?気鋭の防衛省の研究官が、「インテリジェンス」の歴史から、各国情報機関の組織や課題を詳述。イランクが大量破壊兵器を保持しているという、なんの根拠もない「事実」が信じられるに至るまでの情報の誤った伝達や歪曲、スパイ・ゾルゲの活躍の裏側など、著名な歴史的事件をはじめ、豊富な事例を通して易しくわかる、インテリジェンス入門の決定版。

感想・レビュー・書評

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  •  非常に読みやすいインテリジェンスの入門書。CIA等に代表される各国情報機関は,何を目的に何をしているのか。過去の豊富な事例を見ながらインテリジェンスの基礎が学べる。
     政策サイドの要求に基づいて収集した厖大な情報を,適切に評価分析して,外交・安全保障に役立てるのがインテリジェンス。このほかに,他国による情報収集に対抗するカウンターインテリジェンス,外交以上・戦争未満の秘密工作,インテリジェンスの統制・監視についても触れられている。
     導入部分で,米英の情報機関によって,イラクの大量破壊兵器保有を示す誤った情報が報告されてしまった例が挙げられている。これに代表されるような「情報の失敗」がいかにして起きるのかにも紙幅が割かれてる。インテリジェンスを必要とする政策サイドとインテリジェンスを供給する情報サイドの見解の相違と不十分な意思疎通が「情報の政治化」を招き,問題を複雑化することがある。インテリジェンスが正確でも,それが政策に合致しないと無視されたり,歪曲されたりしてしまう。このギャップを埋めるのに情報機関の長の役割は大きい。情報の正確さだけでなく,政策側との人間関係も重要。
     情報機関の活動でも,特に秘密工作は,国益のためなら手段を選ばないところがすさまじい。ロシアのFSBやイスラエルのモサドは今でも要人の暗殺を辞さないし,性を利用して情報を引き出すハニートラップも昔からずっと行なわれてきている。プロパガンダや政治工作の例も多い。
     1955年の「カシミール・プリンセス事件」には驚く。中国政府のチャーター機が台湾の破壊工作によって爆発したが,中国はこれを事前に察知。搭乗予定だった周恩来の予定が「偶然」変更される。他のメンバーは予定通り搭乗して墜死。気付かぬ風を装って,台湾の工作を大いに批難したという。
     著者は防衛省防衛研究所の研究官。たまに彼のブログを読むんだけど,アニメとか好きらしくて,聖地めぐりとか,そういうネタを書いたりもしてる。なんか不思議。でも結構そういう趣味を隠さない研究者って最近多いみたいですね。
    http://downing13.exblog.jp/

  • 出版が9年前なので、参考程度にと読んでみたが、インテリジェンスの入門としては現在(2021年)でも十分!各国では地政学、インテリジェンスと大学で学部が設置されているそうで、日本でもぜひ。

  • 国家にとってのインテリジェンスとは◆インテリジェンスの歴史◆組織としてのインテリジェンス◆インテリジェンスのプロセス◆情報保全とカウンター・インテリジェンス◆秘密工作◆インテリジェンスに対する統制と監視◆国際関係におけるインテリジェンス◆日本のインテリジェンス

  • 小谷賢さん待望のインテリジェンス教科書です。他のインテリジェンス教科書と比較すると、ご自身の経歴からかイギリス色の仕上がりを感じます。
    理論一辺倒ではなく、歴史の流れや技術的な内容もあり、自分は飽きることなく一読できました。
    ご自身もおっしゃってましたが、文庫本ではもったいない内容です。

  • 国際社会が密につながりを持つ現在
    相手の表す情報を正確に分析する技術が日本には
    必要な時代となっております・・・世界最高の
    インテリジャンスを解説した本書は必読です

  • [Infoのその先]日本においては80年代頃から議論が活発化し、今日においては一般的にも知られるようになった「インテリジェンス」。国家が必要とするそれを歴史・組織・統制などの多様な観点から概説した作品です。著者は、国際政治学者として活躍し、本著の他にもインテリジェンスに関する作品を世に送り出している小谷賢。


    「そもそもインテリジェンスって何?」、「インテリジェンスがなぜ必要なの?」という基礎的な問いに答えるところから筆が起こされているため、幅広い方にオススメできる一冊です。インテリジェンスにまつわる歴史的エピソードや出来事もあわせて解説されているため、興味を絶やすことなく読み進められるのも評価できるところです。


    日本におけるインテリジェンスについてもページが割かれているのですが、筆者が本書で述べる提言は、実現可能性をしっかりと考慮に入れた現実的なもののように感じました。倫理的問題や報道の自由などの他の規範とどう折り合いをつけていくかという点にも話が触れられており、バランスのとれた内容だと思います。

    〜インテリジェンスの究極の目的は、「相手が隠したがっていることを知り、相手が知りたがっていることを隠す」、すなわち彼我の差を生み出すことなのである。〜

    インテリジェンスの教科書として☆5つ

  • まとまっている。

  • 割とタイトル通りの内容。

  • インテリジェンスという言葉は佐藤優氏の本を読んだときにはじめて知ったのですが、「国益のために収集、分析、評価された外交・安全保障政策における判断のための情報」がどのようなもので、どう使われているかを学ぶのに手軽な本だと思います。

  • 昔から重要な分野ではあっただろうけど、テロとの戦いということも考えると、今後重要性はより増す分野だと思う。各国との情報のやり取りをする必要があるということからも、国として力を入れていかないといけないだろう。
    着々と準備は進めているようだけど、マスコミが変に茶々を入れて頓挫するようなことにはならないで欲しい。

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著者プロフィール

小谷賢
1973年京都府生まれ.立命館大学卒業、ロンドン大学キングス・カレッジ大学院修士課程修了.京都大学大学院博士課程修了.博士(人間・環境学).英国王立統合軍防衛安保問題研究所(RUSI)客員研究員,防衛省防衛研究所戦史研究センター主任研究官,防衛大学校兼任講師などを経て,2016年より日本大学危機管理学部教授.著書『日本軍のインテリジェンス』(講談社選書メチエ,第16回山本七平賞奨励賞),『インテリジェンス』(ちくま学芸文庫),『インテリジェンスの世界史』(岩波現代全書),『日英インテリジェンス戦史』(ハヤカワ文庫NF).訳書『CIAの秘密戦争』(マーク・マゼッティ,監訳,早川書房),『特務』(リチャード・J・サミュエルズ,日本経済新聞出版).

「2022年 『日本インテリジェンス史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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