数学という学問 1: 概念を探る (ちくま学芸文庫 シ 28-1 Math&Science)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480094216

作品紹介・あらすじ

「数」「微分積分」「無限」…新たな概念が生まれるとき、数学はひとつの学問としての深みと広がりを増してゆく。ひとりひとりの数学者の思索が歴史の中で積み重なることで展望が開けてきた、深い数学の森。21世紀にはどのような概念が生まれ、数学の新しい相貌が浮かび上がるだろうか。第1巻は古代人による「自然数」と「零」の発見から19世紀初頭に至るまでの、数学の広がりをたずねる。文庫書き下ろしオリジナルの、"概念"で辿る数学史。

感想・レビュー・書評

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  • 系推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F文庫新書 ちくま学芸文庫
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=188823

  • 数学の概念を数、数直線、実数、変数、関数、等々から解き明かす。歴史上の有名な数学者の著作からその概念の萌芽を述べる。数式を追いかけられない時もあるが、数学の概念の流れが分かって面白い。

  • 数学における概念が、いかなる背景でいかにして発展してきたかを語ろうとするシリーズの一冊。この本は大きく言って実数概念の由来をたどっている。まず、自然数や整数、有理数とはじまって実数が理論的にどう定義されてくるかを述べている。ここはワイエルシュトラスのε-δ論法やデデキントの切断で実数を導入する。

    実数概念の簡単な導入の後、その歴史に話が進む。ポイントは、実数概念の成立に当たって寄与したのは物理学だということだ。ニュートンやライプニッツが17/18世紀に物理学(おもに天文学)に後半に数学を用い始める以前、数学にあったのは幾何学と代数学。これらは基本的に離散的で静的な関係を扱っている。静的なものと考えられきた数が(変数として)「動く」という考え方の変革が、物理学からもたらされる。そしてそれが変化の記述としての微積分、そして微積分の精密な基礎としての実数概念につながっていく。

    端的にそれは数直線という表象に求められる。自然数、有理数、実数といった由来からしてそれぞれ異質な数が、数直線という表象の上に一元化される。この上を数が「動く」。数直線は幾何からでなく、惑星の運動の軌跡を時間の流れのなかに表すところ、すなわち関数のグラフから生まれた(p.71-73)。数直線の上に実数は小数として表される。実数は分数ではすべて表記できないから、小数の考えは実数概念の発展にとって本質的である。そこで著者は、小数(小数点表記)を生み出したネピア(ネイピア)を大きく取り上げている。通常ネピアは対数の発見者として取り上げられることが多い。この発見は、対数を使って積を和に変換することにより、天文学における惑星軌道の膨大な計算を緩和する意図のもとにあって、物理学(天文学)から数学への展開として描かれている。それと同時に、小数の発見も大きな功績だろう(p.141-152)。

    このような概念的基礎の上にニュートンとライプニッツの微積分がある。そしてその基礎を探るなかでコーシーの極めて明晰な議論が扱われる。ニュートンとライプニッツは伝記的事項も含めて独立してやや詳しく扱われている。なかでも、彼らは微積分を、何らかの数学的問題を解決すべく発見したのではなく、まったく新しい世界を拓いたのだ(p.207f)とする評価が印象的だ。

    一つ気になるところ。著者は現代的な関数の捉え方としてディリクレの文言を取り上げる(p.88f)のだが、著者の理解とずれているように見える。このディリクレの文言はけっこう曲者で、彼によると関数の定義は変数間の関係が数学的に記述されることを要求しない。しかし著者はこの文言を受けつつも、関数が私たちによって認識されることや、変数間の規則が与えられていることを述べている。この関数の認識は実数概念が明確になってきた後、実数値上の病的な関数を扱うなかで形成された。その含意は、関数は我々によってその規則が認識されること、規則が与えられることに一切依存しないということだ。自然数や有理数からの実数の説明や、惑星軌道からの実数の説明では、この関数概念とそれに伴う実数の性質は明らかになってこない。しかしこれは可算濃度と非可算濃度の違いから広範で自由な数学の領域を拓くことになる。本書ではこのことはほとんど出てこないが、続巻で扱われているのだろうか。

  •  これまで数学史の本はいろいろ読み漁ってきたが、どのようにしてその概念が生まれたのか?について適度に詳しくかつわかり易い説明がなされた上で、歴史的な背景を説明がされているので勉強を進める上で重要な学ぶ動機を得られる一冊です。

    目次
    第1部 数学の基礎概念
     第1章 数
     第2章 数直線と実数
     第3章 変数と関数
    第2部 概念の誕生と数学の流れ
     第4章 数学の概念について
     第5章 数のはたらき―歴史をふり返る
     第6章 対数と小数
     第7章 巾級数―代数と図形の中から
     第8章 微分積分の誕生―ニュートンとライプニッツ
     第9章 無限の登場
     第10章 コーシーの『解析教程』

    現在、Ⅱも読んでいる最中ですが、この値段でこの内容なら御買い得です。Ⅲは目次を観ると現代数学中心なので、難易度が高そうな気はしますが、引き続き読み進められそうです。

  • 数学の歴史。コーシーによって微積分学が体系化されるまで。

  • 数学30講シリーズなどでおなじみの志賀先生の、ちくま学芸文庫書き下ろし。
    文庫サイズで、数式も複雑なものはないので通勤途中で読むのにちょうどよかった。例え数式部分を流して読んでも読み物としておもしろい。

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著者プロフィール

1930年,新潟市生まれ。東京大学大学院数学系修士課程修了。東京工業大学名誉教授。著書に『無限のなかの数学』,『数の大航海』,『現代数学への招待』,『数学30講シリーズ』(全10巻),『数学が生まれる物語』(全6巻),『大人のための数学』(全7巻)など多数。

「2022年 『数学史入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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