高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫 ン 7-3)

制作 : 梅田 卓夫 
  • 筑摩書房
3.70
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本棚登録 : 363
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480094407

作品紹介・あらすじ

批評とはなんでしょうか。それは世界と自分をより正確に認識しようとする心のはたらきであり、みなさんの内部で日々"生き方をみちびく力"としてはたらいているものです-筑摩書房の国語教科書の副読本として編まれた名アンソロジー。どこかですすめられてちょっと気になっていた作家・思想家・エッセイストの文章が、短文読み切り形式でまとめられている。一般的な「評論文」のみならず、エッセイ・紀行文・小説まで含む編集が特徴。論文の読解や小論文の技術を習得するだけでなく、ものの考え方や感じ方まで鍛えることのできるワークブック。

感想・レビュー・書評

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  • 最初は優れた批評という選定基準から見て、この文章は適正なのだろうかと疑問を抱きながら、読み進めた。しかし、末尾の編者たちの詳細な解釈を読んで、目から鱗だった。まさしくこれらが批評であった。

    解釈抜きにチカラのある文章は、竹内好、手塚治虫、高良留美子か。特に竹内の魯迅評は本当に唸らされた。

  • 答えがわかっている問いに正しく素早く答えるのはもううんざりだ、自分の道を見つけるぞ。自分の眼で見て、自分のアタマで考えて、自分の言葉で語るのが大学生。でも、どうしたらそんなことができるのだろう?

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000854577

  • 高校生のための批評入門、というタイトルだが、思考力のトレーニングや生き方を見つめ直すのにも有効。老若男女問わず必要な一冊。

  •  私は二十歳そこそこになるまで「読書」というものをあまりしなかったのだが、中学の頃から国語の授業は好きだった。今の学校はどういう授業をしているのかは知らないけれど、古典、漢文、詩までいろいろな文章を音読して、いろいろな読み方や考え方、著者の人となりや時代背景まで解説付きで教わるという幸福な時間があったのだ。
     この本は、そういう時間を過ごしたくて手に取った。そもそも批評とは何か、論評と批評は何が違うかなんて考えたこともなかった(といったらウソになるのだけどここではウソを突き通すことにする)ので、「世界と自分をより正確に認識しようとする心のはたらき」を磨くために「使う」本という肝心の目的を置いてきぼりにしてしまった。本当は、国語の教科書のように課題に取り組むものなのだろう。目的を置いてきぼりにしないために、(文庫版はあとに出ているが)先に著された「文章読本」に手を付けた方がよいと思う。
     私が本を読むようになったのは、いろいろな本の魅力を直に伝えてくれる人と知り合ってからのことである。それから私は何でも手に取って読むようになった。読み終えて身に残る本は少なく、出逢いといえるような本はその中からさらに限られていく。
     世の中、身に残らない本が数多くあるけれど、著者が紡いだ言葉を、読者が時間をかけて拾い上げていくのだから必ず反応はある。面白くないことを…とか、何言ってるのかわからん…とか、そういうのも含めて必ずある。なんとなく嫌いな著者とか、過去に拒絶した主張と同じだから読む気にならないということもあるだろう。この本は、もっと著者に耳を傾けて世界と自分の違いを、何がどう違うのかを見極めることを求める。それは批判的に読むのとは違う、論理や言葉の誤りや違いをあげつらうことは批評とは言わないのだから。
     11のテーマ、51の文章というのは結構膨大である。にもかかわらず、全く興味をひかない文章が一つもなかったのは驚きで、題材選びの苦労と楽しみが巻末に述べられている。たぶん、本や文章が人を変え、優れた創造をもたらすためには、本とは異なる人との出逢いが不可欠なのだろう。
     題材は秀逸で、しっかり読める内容なのだが、高校生に向けた本としてはちょっと難しいのではないか。文章が、ではなく、この本を「使う」ことがである。「思索への扉」は、批評の例示なのだが、ここまで求めるの?と言いたいほど「プロ」文章で、まるで答え合わせのように感じた。高校生世代のアタマでいくと、感じたことを著すにはそれなりに忍耐を伴う「勉強」が必要ってことなのか、それとも、語り合える「お友達」に出逢って共感を探らなきゃいけないってことなのか、それじゃ孤独に夢想できる時間なんかなくなるよね、って屁理屈も言いたくなる。
     論評とか批評というものが社会に浸透していると気づいたのはつい最近のことだ。残念ながら、私はそれらが消費されるだけのために日々産み出されているような気がしており、なんとも悲しげに感じさえする。だが、それを作っている人たちは意外に楽しい時間を過ごしており、消費されることに何の感覚もないのかもしれない。
     読書は出逢いなのだが、読書を始めること、読書によって世界を広げることも、人との出逢いだと気づいた。

  • 課題図書にて。
    うーん、発見のある文章が少なくて、つくづくこういうものが苦手だと痛感する

    2023.6.24
    103

  • 青山ブックセンターで一目惚れ

  • (内容更新中)

    収録作品は以下の通り。

    1. 子安美知子: みどりのパントマイム
    2. Bartók Béla(羽仁協子 訳): 遺書
    3. 中村真一郎: 長い読書
    4. 宮城まり子: 私は教育経験三十年
    5. 良知力: 春と猫塚
    (藤田省三: 「良知君に捧ぐ」より)
    編集者: 批評が生まれるとき
    6. George Gissing(平井正穂 訳): ヘンリ・ライクロフトの私記
    7. 岸惠子: ああ西洋、人情うすき紙風船
    8. 藤原新也: 満月の海の丸い豚
    9. Ivan Illich(大久保直幹 訳): 貧困の現代化
    編集者: 違いにこだわる
    10. 花田清輝: サラリーマン訓
    11. Erich Kästner(高橋健二 訳): ゴルディウスの結び目
    12. 森毅: 不健康のままで生きさせてよ
    13. Charlie Chaplin(中野好夫 訳): 独裁者の結びの演説
    編集者: 常識を疑う
    14. 安部公房: 良識派
    15. Susan Sontag(富山太佳夫 訳): 隠喩としての病
    16. 辻まこと: ユーモラスな現代
    17. 中井正一: 一握の大理石の砂
    18. 竹内好: 中国の近代と日本の近代
    (竹内好: 『魯迅』創元文庫版「あとがき」)
    編集者: 矛盾を引き受ける
    19. Jean Grenier(成瀬駒男 訳): 一匹の犬の死について
    20. 中上健次: 断層
    21. 水木しげる: 妖怪たちとくらした幼年時代
    22. Simone de Beauvoir(朝吹登水子 訳): 娘時代
    23. 杉浦明平: 闘士の休日
    編集者: 命をいとおしむ
    24. 山下洋輔: ジャズは行為である
    25. 手塚治虫、ジュディ・オング: マンガは反逆のメッセージ
    26. 山本吉左右: 連歌と民衆の言葉
    27. 黒澤明: 長い話
    編集者: もっと楽しく
    28. 秋岡芳夫: 手が考えて作る
    29. Alberto Giacometti(矢内原伊作 訳): 自動車と彫刻
    30. 藤原覚一: 男結びについて
    31. 饗庭孝男: 石の思想
    32. 蓮實シャンタル: 二つの瞳
    編集者: モノをみつめる
    33. 吉田ルイ子: インドへの旅
    34. 林光: 大仏開眼 七五二年の世界音楽祭
    35. 三木成夫: 内臓とこころ
    36. 澁澤龍彦: 胡桃の中の世界
    37. 高良留美子: 言葉ともの
    編集者: 不思議の国へ
    38. 田中克彦: 母語と母国語
    39. 若桑みどり: 異時代人の眼
    40. 中岡哲郎: もののみえてくる過程
    41. 阿部謹也: 接吻
    42. 岩井克人: ホンモノのおカネの作り方
    編集者: 発想を縛るもの
    43. Alain(白井成雄 訳): 否と言うこと
    44. 藤本和子: 接続点
    45. Franz Kafka(本野亨一 訳): 掟
    46. 武田泰淳: 快楽
    47. Michel Serres(及川馥 訳): 思考
    編集者: 「私」という謎
    48. Antoine_de_Saint-Exupéry(山崎庸一郎 訳): 飛行機と地球
    49. 森崎和江: コールドチェーンとひそやかな意志
    50. Walter Benjamin(高木久雄、高原宏平 訳): 複製技術の時代における芸術作品
    51. 安岡章太郎: 終末の言葉
    編集者: 生き方をみちびく力
    編集者: 思索への扉
    (徳永康元: 『ブダペストの古本屋』より)
    (魯迅(竹内好 訳): 賢人と愚者と奴隷)
    (Plato(田中美知太郎 訳): 『ソクラテスの弁明』より)
    (James Baldwin(野崎孝 訳): 『もう一つの国』より)
    (Simone de Beauvoir(朝吹登水子 訳): 『女性と知的創造』より)
    (田中了、Daxinnieni Geldanu: 『ゲンダーヌ』より)
    梅田卓夫、清水良典、服部左右一: 学芸文庫版へのあとがき
    熊沢敏之: 解説 「批評」の発見

    編集は梅田卓夫、清水良典、服部左右一、松川由博。
    中扉カットはイワサキ・ミツル、装幀は安孫子正浩。

  • 思索

  • 2017/07/17 おもしろかった。これで授業したいね。

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