公理と証明 証明論への招待 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
3.60
  • (6)
  • (5)
  • (6)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 152
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480094810

作品紹介・あらすじ

数学は学問のなかでもっとも確実なもの、疑えないものと考えられている。数学の確かさは、出発点となる命題、つまり「公理」から、「証明」によって新しいことを導き出すという推論のしくみによって保証される。しかし公理や証明それ自体の確からしさは、いかにして基礎づけられるのだろうか?カントールの創りだした集合論が実は矛盾含みであることをラッセルが明らかにすると、数学者たちはこの問題に目を向けざるをえなくなったのだった。公理とは、証明とは何か?本書はあらゆる数学の基礎となる公理系のしくみ、そして数学全体を見渡す理論である証明論の初歩を、具体例をもとに平易に解説した「数学の基礎」入門である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 基礎論が哲学か数学か、問題設定すら明らかでなく論争だけが繰り広げられ、その区切りとして著された論文をつまみ食いした解説書である。数学基礎論の発生間もない1955年頃著され、1965年頃再版されているようだが、どれほど見直されたのかは分からない。
    まず、内容が少ないうえに選ばれた話題が適切とは思えない。公理を語るのに、「原論」の公理は、論理的に要求される性質を引き出すには欠けたことが多すぎる。ヒルベルト、幾何学基礎論の公理はただ触れているだけで、だから何だという話だ。
    証明論についても、ほんのわずかな公理だけ積み上げて無矛盾性を示すのみで、無矛盾性の証明とは何たるか、どういうアイディアかなど、知識体系としての公理論・証明論の例にすらなっていないのだ。
    本書で挙げられている内容が、進展することを望んでいるようだが叶っていない。進展しないのは、この本が示すとおり人の興味を惹かない、そして必要性が感じられれないからだ。つまらない箱庭で立場を誇示することが第一であるような世界の姿が垣間見える。
    出版社は、著名な数学者であってもこういう不完全で内容のない本を書いたとつるし上げたいのだろうか。それとも、良くも悪くも、学者が権威で、字面が論理的に正しい式・文章を並べ立てれば構成を理解するのは読者のセンス、と突き放すことが当然である衒学的な姿勢を現世に開陳したいのだろうか。
    こんな本が世に放たれたことも、こんな本に時間を割いてしまったことも、残念で仕方がない。

  • 系推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F文庫新書 ちくま学芸文庫
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=188782

  • なんとか30代でゲーデルの定理を理解したいと思って、この手の本をいろいろ読んでますが、これは「入門書」であるらしいです。たしかに一般向けに書かれたものよりも数式が多い(文系の私にとっては、どうしてもそういうものが指標になるのです)けど、なんとかついていけそうな感じです。とはいえ、内容はよくわからないところも結構あって、特に証明論の最後、無矛盾性の証明の節は、もう何やってるのかよくわかりません。。。

    しかし、コンパクトな1冊なので、その分気は楽(笑)。数式はある程度読み飛ばして、読み物として読んでも面白いと思います。

  • 数学基礎論って何を研究するものなの?と、学生の頃から思いつつ、未だに知らずにいた。
    本書はその入門書。五十年前に書かれたのだが、文章はとても読みやすく、何ら問題はない。

  • 数学基礎論についての入門書的な本みたいです。
    第3章の「証明論」はちょっと話が急すぎてついていけなかったですが、全般的にわかりやすく、分量も多くなく、読みやすい本だと思います。

    ■読もうと思った動機:
    ・ウィトゲンシュタインの「論考」を深く理解するうえで、論理学に関する知識をおさらいしたいと思い、タイトルをパッと見で買ってしまったので読むことにした。
    ・もともと数学基礎論に興味があった。

    ■読んだ結果・感想:
    ・個人的には、予想外の良書だった。お気に入りの本になりそう。
    ・デカルト座標系みたいな考え方で幾何学を代数的に考えることができるのは、幾何学の公理系と代数の公理系との間に同型写像が存在するから、という感じのことが書いてあるあたりは、しびれた。なるほど。
    ・証明論のあたりは、やや説明が足りていないような気がした。よくわからなかった。でも、証明論がわかれば、ゲーデルの不完全性定理にまで到達するのもすぐのような気がした。
    ・そういう意味で、「論考」ではなく「ゲーデル」でした。

  • 証明論の推論の規則はピンと来なかった。
    全体的には比較的読みやすい部類に入ると思う。
    ただくどい。
    ぼくはそのくどさが好きだった。

  • んー普通です。

    が、大学の工学部では解析学は(当然のことながら)数学基礎論は学ばないため、証明論を学ぶ機会は少ない。
    しかも、証明論を平易に語る書籍が少ないのだ。本書はその数少ない書籍なのだろう。

    第1章は公理とは何か、第2章は数学の基礎(実証主義、直観主義、形式主義)、そして第3章が証明論である。
    目標はGödelの不完全性定理なのだろうと読み進めていくと、自然数論を含まない公理(例えば群論)系に対する無矛盾性を示して終了。
    証明方法は大学の教科書に載っている方法である。

    自然数論を含む公理系に関してはGödelの不完全性定理から、無矛盾性及び完全性は否定されている。それをもって証明論自体の存在意義を失っていると考えるかもしれない。
    筆者が言うように、集合論や実数論における(有限の立場での)無矛盾性は証明されていない。まだまだ研究の余地はあるということだ。
    そして何より、数学の健全性ということを証明するためには、この数学基礎論が主役となるのだ。今後の研究成果に期待である。

全9件中 1 - 9件を表示

彌永昌吉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×