レオナルド・ダ・ヴィンチ論 (ちくま学芸文庫 ウ 22-1)

  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480095565

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  • ヴァレリーが書いたダ・ヴィンチに関しての3篇の翻訳。
    研究者向け?で難解。
    文庫本で、左開き横書き。

  • ダ・ヴィンチに託したヴァレリー自身の認識論にして存在論であり、また芸術論だ。笑いたくなるほど難解で、特に『序説』はあまりに朦朧として取り付くシマがない。でも「読書百遍意自ずから通ず」を念じ、かじりついて読めば何とかなる。事物それ自体より事物と事物の関係を見出すことが知性の働きであり、これは科学も芸術も同じであると。「物自体」は認識できないとしたカントの後衛とも言えるし、構造主義の先駆でもある。

    『序説』が認識論だとすれば、『追記と余談』は知性を用いる「我」とは何か?つまりは存在論だ。「我思う、故に我あり」を通り越して「我、思う我を思う」とでも言うべきか。デカルトの「我」をどこまでも純化した、意識を意識する作用としての精神、それがヴァレリーの「我」だ。意識を志向する透明な意志とも言えるだろうか。ヴァレリーはこれを「純粋我」と呼ぶ。半ば揶揄をこめて「精神の帝国主義」とも「意識の絶対的優越」とも言われるヴァレリーだが、その徹底振りに恐れ入る。と同時にあのテスト氏自身「病気」と自覚するように、ある種の「業」を感じる。

    最後の『哲学者たち』は詩学としての哲学。哲学は言葉以前の不可視の実在を視る詩でなければならないという示唆に、感性や直観を重視するベルクソンの影響が伺える。もちろんデカルト的な知性を捨てた訳ではない。その両方がダ・ヴィンチに生きているというのがヴァレリーの見立てだ。井筒俊彦ばりの「神なき神秘主義」にも似た世界観が垣間見られ、円熟(という言葉は何ともしっくり来ないが他に言葉が見当たらない)を感じさせる。

    最近小林秀雄を読み返して思うのだが、小林はやっぱりボードレールでもランボーでもなくヴァレリーだ。受けた影響も去る事乍ら、性根において同じタイプの人間だと思う(もっとも小林にはヴァレリー=ダ・ヴィンチ的な「建築」へのオブセッションはない)。ともあれ、ヴァレリーの思考のエッセンスがほぼ全て出揃っており、一冊挙げるなら断然本書だ。後年メルロ=ポンティに受け継がれた身体論は微かに片鱗を覗かせるのみだが、こちらの方は最近『ドガ ダンス デッサン』が文庫化されたので読むのが愉しみだ。

  • 若きヴァレリーが読者に手かげんしないで書いたらこうなったといった感じで自分にとっては笑えるくらい難解な本。人間が何かを「作る」とはどういう現象、精神の営みかということが議論されているようだけれど、一段落さらには一文でも気を抜くとすぐさま振り落とされてしまう。

  • レオナルドダ・ヴィンチの天才性を描くことで、ある分野の先駆的存在の、成熟した精神の悲しいくらいの凡庸さと、その過程の創造的な様を描いたもの。完成ということに恐れを抱いてしまった。不規則に見える創造さえもが一貫性をもつ。一貫性は裏を返せば変化の消滅だ。その自由さとともに、不合理性の消滅を孕んでいる。少なくとも、この不合理性から卓越したおもしろさはでてくる。創造的であることの先に凡庸さが生まれるような創造なら真の創造とは言えない。真の創造とはなんだ。ロックスターであっても目の前には凡庸さが待っているということか。カートコバーンも手塚治虫もレオナルドダ・ヴィンチも多くの偉大な知的職業人もそれを見たのではないか。そして、若者はそれを見ることを本能的に恐れているのではないか。こうなると、イスラム教の詩に描かれているような、「つかの間の生だ。飲もう』みたいなのにしか価値がなくなる。不合理と無常に価値を見出していくべきということかな。

    レビューじゃなく感想。

  • 筑摩書房VS平凡社になるのかな?

    筑摩書房のPR
    「レオナルドは、精神の地平を決定的に画する存在として、ヴァレリーの心から終生離れることのなかった芸術家だった。レオナルドのデッサンと文章に見られるダイナミックな精神運動に魅せられたヴァレリーは、そのメカニズムを解明するためにレオナルドの方法を再建すべく試みる。天才の“肖像”を描くことに全力を注ぐヴァレリーを待ちうけていたのは、科学と芸術をめぐる認識の極限にくり広げられるスリリングな“精神の劇”だった。ヴァレリーの思考と美学のすべてを映し出す三篇、およびVues収録の二篇を新訳で収める。」

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