貨幣と欲望: 資本主義の精神解剖学 (ちくま学芸文庫 サ 4-2)

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  • / ISBN・EAN: 9784480095619

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    第一章
    スミスの価値転換への批判。
    "事物の自然な順序"はまず労働生産物の価値があり、余剰が貿易を生む。重商主義はまず貿易がある。その現実理解を前にして、どう富を得るかという近視眼的な政策に重点があった。
    パースペクティブそのものにどちらの優劣があるわけではないが、現実把握としては"事物の自然な順序"という彼の価値観に頼っているスミスのほうが弱い。そもそも、現実に起こっていることを出発点として、そこで何を問題とするかの2点で、その理論の現実へのおおよその公差が決まる。
    現実との転置を強要されつつ進んだのが経済学理論なのではないか、という問い。

    ロックの秩序では土地に貨幣が寄生する。資本主義では人に貨幣が寄生する。評価経済ではグラフ(sns data)だろうか?
    ハイエクに代表される貨幣の中央銀行不要論や、それを実現し得る仮想通貨まで射程にして、経済の無属性化を語れていれば更に面白かったろう。

  • まさに私が興味を抱いているところの「貨幣」をめぐる本だ。
    しかし、どうもこの本ははっきりしないところが多かった。文体や著者の思考自体がそうなのだろうが、論理がぐるぐると回っていつのまにか元に戻ってしまっていたり、何故ユダヤ民族について語らなければならないのか納得できなかったり、結局何を主張したいのか明確でない部分が非常に多く、「論旨があまり整理されていない本だなあ」という感想を持った。
    重商主義と古典派経済学との対立を「貨幣交換」と「物々交換」というカテゴリに抽象化し、この二項対立が本書の主題となるのだが、前者に関しては岩井克人さんの貨幣論を踏まえたような<貨幣性>のイメージが込められている。そして資本主義は20世紀に至って、ドゥルーズ/ガタリが『アンチ・オイディプス』で称揚した分裂病的資本主義の形に進展した。これは現実には、モノや主体、労働などからは縁を切った、抽象的で、やすやすと国家間の壁を飛び越えるような貨幣の流れを意味している。著者はむしろこのグローバル経済を「地獄だ」と表現する。
    著者は最終章で、そのような貨幣性を「大地」に根ざさない「世界」という言葉で批判し、いまこそ「大地」を固め直さなければならない。と結論する。
    この論の建て方はどうだかなあ、と迷うところで、それは何よりも、この書物のディスクールが説得力をもたないせいなのだ。
    内容的には興味もそそられる面があるが、もうちょっと論旨を明確にして書き直してほしいような気がする。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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