公衆とその諸問題: 現代政治の基礎 (ちくま学芸文庫 テ 11-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096067

感想・レビュー・書評

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  • 読み直したさ:★★☆
    結果(あるいは事実)から粘り強く続ける民主主義の分析。観念からの出発を徹底的に否定。意見・目的を創るコミュニケイトに不可欠なものとしての表現の自由。
    〈感想〉
    ところどころでハイエクに似た考えをしているように感じた。しかし,デューイはあくまで個人主義にも全体主義にも組さない(一つの観念を据えることの否定)ことからすれば,根本のところでは違うのだろう。ただ,全体主義を否定する理由という意味では大きく異ならないのではないか。
    彼の思考方法に付き合って読むのは疲れたが,最後には慣れたので,また機会があれば読み直したい。他の本を読む時にも役立つ思考方法だろう。

  • 民主政治の教育的・公共的側面に光を当て、社会全体の知性の向上を肯定する。リップマン「世論」などへの反応として書かれた本書の指摘は、理想的に聞こえる部分があるものの、実に重要だ。例えば、以下の指摘。

    ‘’熟達した靴職人がいかにしたら靴の不良な箇所を直しうるかについての最良の判定者であるとしても、靴をはいている人こそ、その靴が窮屈かどうかということを、またどこが窮屈なのかということを最もよく知っている。民主的統治は、公共の精神を活気づける上ではその成功が偉大なものではなかったとしても、少なくともそうした精神を創り出してはきた。‘’(p254)

    そして、専門家という名の寡頭制批判も的を射ている。とはいえ、翻訳がひどい。逐語訳としては正しいのかもしれないが、日本語になっていない。大学向けではなく、一般読者に向けて訳してほしい。英文和訳ではない日本語で書いてほしい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/690642

  • 東2法経図・6F開架:311.7A/D67k//K

  • 民主主義はその「ホーム」から始まる。この意味が分かれば充分である。それにしてもデューイのいう公衆とは結局なんだったのか。たしかにその問題群のあつまりかもしれないが、その手が公務員に委ねれた今、私たちはいったいなにをすればいいのだろうか?コミュニタリアンの身としては消化不良の一作。と、いうかデューイは生涯でその答えをだしきれてない。トクヴィルが中間集団について語ったがそこまで踏み込む必要があるのでは?

  • ジョン・デューイ『公衆とその諸問題 現代政治の基礎』ちくま学芸文庫、読了。飛躍的に複雑化した機械化と画一化を特徴とする現代社会において、人間の息吹汲み取る民主主義は果たして可能なのか。本書はリップマンが『世論』『幻の公衆』で提起した問に応答し、民主主義の可能性を探求する一冊。

    大衆社会は、必要な知識にもとづき判断を行う公衆という近代市民社会の前提を破壊したという点でリップマンに同意する。リップマンは世論操作の危険性への注意から、専門家の役割を強調し、公衆の政治参加を限定的に捉えるが、デューイはそうではない。

    選挙民が不安定な集団を彷徨う現代においてローカル・コミュニティにおける自治の再生は不可能であろう。リップマンの危惧を共有しつつも民主主義への期待は失わない。復古再生ではなく、現在の共同体に等身大のむしろ新しい民主主義を構想する。

    「もっと民主主義を!」 複雑化したのは社会だけではない。複雑化し寄る辺なき人々に自らの政治的有効性の感覚を回復させる為には、様々な思いや利害を再組織化することから出発する。制度や精神を固定化しない柔軟な思考が一貫することに驚く。

    悪しき形而上的思考は、例えば国家の起源に目を向け足元を救われがちだが、「国家の形成はひとつの実験過程であらざるをえない」し、民主主義のあり方も同じである。唯一の正しいあり方を探求するよりも、現実世界での試行錯誤に注目する思考だ。

    デューイは情報の公開と共有を強調、その基礎の上に成り立つコミュニケーションによる連帯、そこから立ち上がるアソシエーションと習慣による社会の内在的変革(公衆の再生)に民主主義の可能性を見出す。原著は1927年、今読むべき本。

  • 国家の成立、「公衆」、個人主義と民主主義、共同社会生活等々。1927年に書かれたこのデューイの本は、さいきんの私の主要な関心事にとても近く、読んでいて考えこまされる場面もたくさんあった。
    しかしこの本はどうも、予想外に難解な文章で、なかなかデューイの主旨をつかみきれず、なんだか上の空で読み流してしまった。
    たぶんとても良い本なのに、私が無意味にやり過ごしてしまったのである。これは再読しなければならない。

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著者プロフィール

合衆国バーモント州バーリントン市生まれ。父親は食料品販売会社を経営。バーモント大学卒業後、高校教師を数年務める。ジョンズ・ホプキンズ大学院に進み、徹底したヘーゲル主義者として哲学者の道を歩み始める。教育学・心理学の研究を深めるなかで観念論を脱却する。教師として赴任したミシガン大学で1歳年上の学部生アリス・チップマンと出会い、1886年に結婚。同年、哲学科助教授に昇進する。招聘されたシカゴ大学で哲学科と教育学科の主任教授を兼任。実験学校=付属小学校の創設を主導したが、校長アリスの処遇をめぐる対立から妻と共に退職。翌1905年、コロンビア大学哲学科教授に就任。05~06年、アメリカ哲学会会長。19~21年、日本・中国に滞在。第1次大戦後、戦争禁止=違法化運動に参加。24年・28年大統領選挙で第三党候補者を支持。27年、アリス夫人逝去。翌年、ソヴィエト・ロシア教育事情視察団に加わり肯定的な印象記を残すが、体制の官僚化・全体主義への傾斜に疑問を深め、修正した。29年、独立政治行動連盟の初代会長。38年、モスクワ裁判検証・調査委員会の委員長に就任し、レオン・トロツキーの反革命容疑無罪を立証する。翌年、文化自由委員会の委員長。全体主義批判はソ連邦にもおよび国内左派の猛反発を招く。第二次大戦に反ファシズムを掲げて参戦したルーズヴェルト大統領を支持する。46年、ロバータ・ローウィツ・グラントと再婚。90歳を超えても旺盛な執筆活動は衰えなかったが、52年6月、肺炎で亡くなった。

「2024年 『デューイが見た大正期の日本と中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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