敗戦後論 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 195
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096821

感想・レビュー・書評

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  • 文芸評論家、加藤典洋さん逝去
    多様なジャンルを、またにかけ活躍。
    ご冥福をお祈りします。代表作の一つ、『敗戦後論』をご紹介。

  • 難しかった… 作者がいう敗戦の「ねじれ」はこれが書かれてから20年以上経っても全然変わってないのはわかったけど。寝かせて読み直し。その間にこの本にあった太宰時系列読み(当時の日本の状況と照合しつつ)、戦争文学としてのサリンジャー読み、アーレントも。迂回して戻ってきたらわかるだろうか。

  • 唯物論者に慰霊は可能か。

  •  
    ── 加藤 典洋《敗戦後論 1995 20150708 ちくま学芸文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4480096825
     
     Katou, Norihiro 文芸評論 19480401 山形 東京 20190516 71 /早稲田大名誉教授
    /喪主は妻・厚子(あつこ)
     
    …… 平和主義を唱えながらも世界で戦争を続ける米国に従属するとい
    う戦後日本の「ねじれ」を指摘。日本がアジアへの加害責任と向き合う
    ためには、先に日本の戦没者を弔う必要があるなどと問題提起し、大論
    争を巻き起こした。
    https://this.kiji.is/503128127877710945
     
    (20190521)
     

  • 本書が単行本で出版された20年ほど前に、大学の先生とこの本について議論をしたのがしのばれる。

  • 大学新入生に薦める101冊の本 新版 (岩波書店/2009) で気になった本。

  • 「火事の中地面に倒れ、誰かに覆い被さり助けられる、火事が消えて気がついたらその人は灰になっていた。真っ先にしなければならないのはその人の否定である。」
    GHQにより原爆の圧力で憲法を受け入れ、押し付けられた平和と民主主義に順応してきた敗戦後の日本。戦没者と戦地被害者への慰霊と謝罪、平和憲法の扱い、それぞれ原初から捻れと汚が内在する。
    美濃部達吉・津田左右吉・中野重治・太宰治・大岡昇平等その問題に各々の領域で矜持を持って処した事実。特に美濃部の憲法学者としての意力ある対応や大岡の作品とその生き様には凄まじい迫力を感じる。それに比して、大衆は戦前同様易き風潮に流され過ぎた。
    結論は、先ず決然と敗者として負けを認識し護持・継承をすること。そして強制された平和憲法を今一度、国民的投票手段で選び直す。日米関係の矛盾と欺瞞も自覚し、原爆使用を糾弾し、日本の300万戦死者への哀悼とアジア2000万犠牲者への謝罪を尽くすこと。

  • 出版された80年代より、今現在のほうが本書の主張を冷静に受け止められる時代になっているのではないでしょうか。
    昭和天皇の戦争責任追及、武力で押し付けられた憲法の選び直しなど、戦後に筋を通してこなかったことを挙げるなかで、自国の死者追悼の必要性に大分のページがさかれています。
    戦後の日本はジキルとハイドのように、対外的に謝罪とその否定を繰り返しました。鏡合わせのイデオロギーがそうさせてきたのです。
    本書はトップダウン的なイデオロギー論争に終止符を打つべく、ボトムアップ的な手法を提案します。それが、戦後社会にうまく位置づけられなかった自国の死者の正しい追悼です。無意味に亡くなったことを直視しながら。
    イデオロギー的な意見に比べて地に足のついた意見ですし、今の時代に合った論理的な意見ですが、冷静に考えれば実践するには難しいことです。
    例えるならこのようなことでしょうか。
    自分中心で視野が狭かった若い女性が、立派なフィアンセがいるにも関わらず、親の反対を押し切って恋に落ちた男性と駆け落ちしました。その男性は追っ手から女性を守り戦うも、ついに力尽きて捕まり処刑されました。そして男性は死の間際まで女性の幸せを願っていました。
    時はたち、後ろ指をさされるこもありますが、その後の女性は全てを許し愛してくれたフィアンセと結婚し、何不自由のない心から幸せな日々を送ることができました。過去を思えば今の自分の身分が夢のようです。
    トルストイの「戦争と平和」ではありませんが、そのようなとき、女性はどのように亡くなった男性を追悼すればいいのでしょうか。仮に無意味なままに追悼できたとしても、その無意味さをも意味を持ってしまうのではないでしょうか。
    戦後70年を生きる我々は、もはや亡くなった男性の身内や協力者ではありません。守られた女性側に位置しているという確信を持っています。
    安直なことは言えません。不道徳の誹りを免れませんが、追悼の仕方に統一的な答えを出すことを急かしたり、執着することにどれだけ意味があるのでしょうか。もしかしたら個人個人が答えを探す時代なのかもしれません。

  • 難解でした。特に『語り口の問題』でのハンナ・アーレントの公共性と共同性の概念を援用しての「なぜ人は、たとえば南京大虐殺、朝鮮人元慰安婦、七三一部隊といったようなことがらに関し、「無限に恥じ入り、責任を忘れない」というような語り口に接すると、そこに「鳥肌が立つ」ような違和感を生じるのか。」といった疑問。『敗戦後論』での「日本の三百万の死者を悼むことを先に置いて、その哀悼をつうじてアジアの二千万の死者の哀悼、死者への謝罪にいたる道は可能か」という問いかけ。私は許してもらうまで謝罪を続けたら良いと思っていた。

  • 1948年生まれの文芸評論家による戦争の認識を論じたもの。初出は『群像』(1995)。


    【目次】
    目次 [003-006]
    タイトル [007]

    □ 敗戦後論 009
    I 戦後の起源 
    1 極東の敗戦国にて 012
    2 湾岸戦争関連文献 017
    3 原点の汚れ 021

    II ねじれと隠蔽 
    1 初期の挿話 029
    2 『世界』の宮廷革命 036
    3 「戦後文学」vs「無頼派」 043

    III 分裂の諸相 
    1 ジキル氏とハイド氏 051
    2 二様の死者 059

    IV よごれ――大岡昇平を想起する 
    1 一九六一年の転換 070
    2 よごれしょぼれた日の丸 078
    3 一九七一年の選択 092


    □ 戦後後論 105
    はじめに 108

    I 太宰治と戦後 
    1 政治と文学 123
    2 芸術的抵抗への抵抗 131
    3 坂口・石川 vs 太宰 138
    4 「薄明」 150

    II 文学とは何か 
    1 思想としての文学 158
    2 誤りうるものの意味の根源 169
    3 盲目と全円 181
    4 「内在」と「超越」 187

    III 戦後以後 
    1 「ノン・モラル」の感触 195
    2 太宰 vs J・D・サリンジャー 208
    3 意識と、身体的なもの 217
    4 正しいことと誤りうるもの 225
    5 不可疑性と可誤性 231

    語り口の問題 243
    1 ハンナ・アーレント 244
    2 素描・戦後の歪み 249
    3 『イェルサレムのアイヒマン』 254
    4 共同性と公共性――ショーレムとアーレントの論争 260
    5 「語り口」とは何か 272
    6 私の領域 281
    7 共同性を破るもの 291

    注 [301-335]
    あとがき(一九九七年二月、パリ、サン・シュルピス広場、六月、志木、柳瀬川のほとりで 加藤典洋) [336-350]
      1  336
      2  338
      3  348
    ちくま学芸文庫版あとがき(二〇〇五年十月 加藤典洋) [351-354]
    ちくま学芸文庫版によせて(二〇一五年五月 加藤典洋) [355-359]
    ちくま文庫版解説 卑しい街の騎士(内田樹) [361-371]
    ちくま学芸文庫版解説 一九九五年という時代と「敗戦後論」(伊藤祐吏) [372-381]

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著者プロフィール

1948・4・1~2019・5・16。文芸評論家。山形県生まれ。1972年、東京大学文学部仏文科卒。国立国会図書館勤務、明治学院大学教授を経て、早稲田大学名誉教授。85年『アメリカの影』で文芸評論家としてデビュー。97年『言語表現法講義』で新潮学芸賞、98年『敗戦後論』で伊藤整文学賞、2004年『テクストから遠く離れて』『小説の未来』で桑原武夫学芸賞を受賞。主な著書に『日本風景論』『戦後的思考』『人類が永遠に続くのではないとしたら』『戦後入門』『9条入門』 『大きな字で書くこと』などがある。

「2020年 『テクストから遠く離れて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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