- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480096975
感想・レビュー・書評
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「一揆」の定義が大きく揺さぶられ、さらにそれが現代のSNSに通じるという指摘に、決して軽くない衝撃。本書に敬意を評して「一揆」を定義するならば、「いつの間にか失われてしまった民主主義の1ピース」あたりか。
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リアルな一揆像を描き出した一冊。
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歴史に興味があるほうではないが面白かった。一揆のイメージが変わった。
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GY1a
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旧来の『階級闘争史観』から脱し、史料の読み解きに立脚した「リアルな中世日本の、人のつながり」としての一揆を描き出した名著。
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本屋で見かけて購入。非常におもしろかった。一揆を、政権打倒を目指す「革命」や「階級闘争」とみなすマルクス主義歴史学的な見方を否定し、実際は政権の存続を認めた上での「訴訟の一種」「したたかな交渉」だったという研究成果。中世は百姓だけでなく武士も僧侶も一揆を結んでいた、集団だけでなく個人でも一揆を結んでいた、一揆はいわば「契約」だった、等おもしろい話の連続。
そして一揆を単に昔の出来事で終わらせず、日本人が社会の変化にどう対応して来たかという話につながるのが良い。中世の人々は既存の人間関係を見直し、一揆という「契約」によって新たな人間関係を創出することで危機を乗り越えようとしたという。現代も家族や企業や国家といった既存の共同体が弱まって、中世と同じ状況ではないかと問うている。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だけが答えとは思えなかったが、自分の仕事の進め方で一揆を結ぶように団結するというのはありと思った。 -
「一揆」という言葉から暴力的な抵抗運動というイメージを抱いていたが、この本を読んで人と人の繋がりこそが一揆の本質であることが分かった。反原発デモやアラブの春を一揆の文脈で解釈しており、歴史的な観点から現代社会を見直す醍醐味を味わえた。
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・一揆とは、体制変革を目指す階級闘争、つまり「革命」ではなく、労働環境の改善を目指す争議的な性質であった。
・今も昔も問題を訴える側は自分の利害に関する部分のみ改善を訴えるが、解決策がお上に丸投げの「お客様」体質であるという指摘 -
【相手にふりかかった問題を自分の問題として考え、親身になって、その解決に努力する。実は、これこそが一揆という人間関係の本質である】(文中より引用)
権力層への抵抗という意味も込めて使われることの多い「一揆」。時代ごとに異なるその言葉が意味するところを探るとともに、一揆が抱える現代的な意義についても考察した作品です。著者は、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』がベストセラーとなった呉座勇一。
堅苦しい説明が続くわけではなく、時にユーモアや今日の出来事とも絡めながら筆が運ばれているため、中世のことを主に取り上げていながらまったく古さを感じさせない一冊。一揆に関する解説という魅力はもちろんですが、歴史を学ぶことの楽しさをも考えさせてくれる良書でした。
『応仁の乱』も読んでみようかな☆5つ -
漫画の「カムイ伝」やクロサワ映画「七人の侍」などの影響で、一揆とは農民が一致団結し、竹槍を手に悪代官らに生死をかけて立ち向かう強訴活動というのが世間一般のイメージ。が、古文書を調べていくと、一揆とは常に大掛かりなものではなく、竹槍を使った形跡もない。農民だって死は怖いし、標的にされた代官や大名も年貢を納めてくれる農民からのストライキは大ダメージだ。お互いに適当なところで手打ちにしたいというのが本音。
社会保険や福利厚生、ブラック業務を訴える労働基準監督署などのない時代、農民や国人がアコギな取り立てを公にし、交渉のテーブルの役割として一揆は行われた、というのが著者の主張。世直しとか、革命、直接民主主義なんて大それた目標はない。しかも、一揆首謀者側の団結も貧困や地域的縁によるものではなく、文書による契約にもとづくものだった。
追い詰められた弱者による反発という、これまでの一揆に対するイメージを一新する斬新な本書。著者はそんな「一揆の原理」を拡大し、現代の脱原発や沖縄基地問題のデモと共通する部分が多いと指摘するのがなかなか痛快。中世から現代まで、人間は死を賭けてまで訴えるなんてことは、そんなにない。