一揆の原理 (ちくま学芸文庫 コ 44-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096975

感想・レビュー・書評

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  • 本屋で見かけて購入。非常におもしろかった。一揆を、政権打倒を目指す「革命」や「階級闘争」とみなすマルクス主義歴史学的な見方を否定し、実際は政権の存続を認めた上での「訴訟の一種」「したたかな交渉」だったという研究成果。中世は百姓だけでなく武士も僧侶も一揆を結んでいた、集団だけでなく個人でも一揆を結んでいた、一揆はいわば「契約」だった、等おもしろい話の連続。 
    そして一揆を単に昔の出来事で終わらせず、日本人が社会の変化にどう対応して来たかという話につながるのが良い。中世の人々は既存の人間関係を見直し、一揆という「契約」によって新たな人間関係を創出することで危機を乗り越えようとしたという。現代も家族や企業や国家といった既存の共同体が弱まって、中世と同じ状況ではないかと問うている。 
    SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だけが答えとは思えなかったが、自分の仕事の進め方で一揆を結ぶように団結するというのはありと思った。 

  •  「一揆」という言葉から暴力的な抵抗運動というイメージを抱いていたが、この本を読んで人と人の繋がりこそが一揆の本質であることが分かった。反原発デモやアラブの春を一揆の文脈で解釈しており、歴史的な観点から現代社会を見直す醍醐味を味わえた。

  • ・一揆とは、体制変革を目指す階級闘争、つまり「革命」ではなく、労働環境の改善を目指す争議的な性質であった。

    ・今も昔も問題を訴える側は自分の利害に関する部分のみ改善を訴えるが、解決策がお上に丸投げの「お客様」体質であるという指摘

  • 【相手にふりかかった問題を自分の問題として考え、親身になって、その解決に努力する。実は、これこそが一揆という人間関係の本質である】(文中より引用)

    権力層への抵抗という意味も込めて使われることの多い「一揆」。時代ごとに異なるその言葉が意味するところを探るとともに、一揆が抱える現代的な意義についても考察した作品です。著者は、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』がベストセラーとなった呉座勇一。

    堅苦しい説明が続くわけではなく、時にユーモアや今日の出来事とも絡めながら筆が運ばれているため、中世のことを主に取り上げていながらまったく古さを感じさせない一冊。一揆に関する解説という魅力はもちろんですが、歴史を学ぶことの楽しさをも考えさせてくれる良書でした。

    『応仁の乱』も読んでみようかな☆5つ

  • 漫画の「カムイ伝」やクロサワ映画「七人の侍」などの影響で、一揆とは農民が一致団結し、竹槍を手に悪代官らに生死をかけて立ち向かう強訴活動というのが世間一般のイメージ。が、古文書を調べていくと、一揆とは常に大掛かりなものではなく、竹槍を使った形跡もない。農民だって死は怖いし、標的にされた代官や大名も年貢を納めてくれる農民からのストライキは大ダメージだ。お互いに適当なところで手打ちにしたいというのが本音。

    社会保険や福利厚生、ブラック業務を訴える労働基準監督署などのない時代、農民や国人がアコギな取り立てを公にし、交渉のテーブルの役割として一揆は行われた、というのが著者の主張。世直しとか、革命、直接民主主義なんて大それた目標はない。しかも、一揆首謀者側の団結も貧困や地域的縁によるものではなく、文書による契約にもとづくものだった。

    追い詰められた弱者による反発という、これまでの一揆に対するイメージを一新する斬新な本書。著者はそんな「一揆の原理」を拡大し、現代の脱原発や沖縄基地問題のデモと共通する部分が多いと指摘するのがなかなか痛快。中世から現代まで、人間は死を賭けてまで訴えるなんてことは、そんなにない。

  • 一揆といって一般に連想される「百姓一揆」は一揆の典型例ではなく、むしろ亜種である。
    一揆とは中世における人々の連携・連帯・コラボレーションの総称であり(意訳)、現代にも通じるものがあるというのが著者の見解である。
    ざっくりまとめすぎて、我ながら大胆かなと思う。

  • 百姓は「お客様」感覚で、幕府や藩のサービスの悪さにクレームつけてるだけなのだ、という話を原発デモに被せて考えてるのが、面白かった。確かに同じだ。この感覚は脈々とあったものだったのか。

    一揆のイメージというか、そもそもイメージなんてぼんやりとしかなかったが、それがどういうものか少しイメージが掴めた気がする。

  • 「応仁の乱」で話題になった呉座勇一氏のデビュー作。
    一揆の全盛期が中世であり、この時代における一揆は「契約社会」の下「既存の秩序の大幅な変更を迫らない」枠内で人々が「一味同心」することで自己利益の増大を目指すものであることが理解できた。呉座氏も指摘するように、一揆のあり方は現代にも大きな意味を持っていると思う。
    本書はとてもわかりやすい文体で書かれており、初学者にもおすすめ。一方、「応仁の乱」でも感じたのだが、本論と結論が噛み合っていない部分が散見されるのが、玉に瑕といったところだろうか。

  • 本書は武闘派で過激な一揆より、目立たなくも一般的な交渉のための一揆に主眼を置く。文中で「だろう」「思う」の語尾が多くことから、歴史として解明が難しいジャンルであることが想像される。

    中世の一揆を中心に、現代のデモとの相違やsnsとの類似性を指摘しながら、読む者の一揆に対する想像力を深める工夫が多い。また、戦後歴史学がテーゼとした一揆ニアイコール反体制運動という解釈を批判することも、一般的な一揆の輪郭を際立たせている。

    公家、武家、寺社、民衆とわずそれぞれの社会が徹底的な階級社会だった時代において、一味神水を経てフラットに同心した集団とは、交渉を求められる側からすれば異形の存在だったことだろう。

    1980年代ファミコンの「一揆」に無理やり触れるところで笑った。

  • 一揆をするのは絶対正義が必要だそうだ
    呉座先生は文章が面白い

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター(京都市)助教。専門は中世の日本の歴史研究。著書に「日本中世への招待」「陰謀の日本中世史」など。

「2020年 『1偉人1分 まんがでサクッと日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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