謎解き『ハムレット』: 名作のあかし (ちくま学芸文庫 カ 40-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097194

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  • 第1章 『ハムレット』の謎を解く意味―序に代えて
    第2章 ハムレットは優柔不断な哲学青年か?―ロマン主義解釈の誤り
    第3章 なぜ復讐を遅らせるのか?―TO BE,OR NOT TO BEの表すもの
    第4章 鏡としての演劇、ルネサンスの表象―奇妙な視点、パスペクティブ
    第5章 「弱き者、汝の名は女」とは?―ルネサンス人間観のもたらすもの
    第6章 ハムレットの狂気とは?―「尼寺へ行け」に篭められているもの
    第7章 『ハムレット』最大の謎―復讐するは我にあり

    著者:河合祥一郎(1960-、福井県、英文学)
    解説:野村萬斎(1966-、東京都、能楽師)

  • 軽めのタイトルだが、河合先生による本格的なハムレット論。メランコリックな哲学青年という世に知られたハムレット像は、ロマン主義の時代に流行ったものである。シェークスピアの生きた時代や思想に引き戻すとヘラクレスのような英雄たろうとする力強いハムレットが見えてくる、という。なぜハムレットは悩むのか、さっさと復讐しないのか、それは優柔不断だからではない、と。眼からウロコな指摘もあるし、エリオットら有名な作家からずいぶん「ハムレットってうじうじしたダメ男」とdisられていると知ったのも面白かった。

  • ハムレットを見る・読むにあたって、知らないとトンデモナイ解釈をしてしまいがちな知識が興味深く書かれている。書かれた時代の常識、きちんと整合性を取って読み込むことによる解釈など。
    古典と呼ばれる作品を解釈するにあたって、こういったことは考えておいた方がいい、という例としても読める。

  • 以前、「100分de名著」でも解説を担当された河合先生。正統派によるハムレット解釈である。盛んな見方でいまだに我々を悩ませるこの偉大な名作を、時代背景や歴史観を織り込み、精緻に分析している。(“シェイクスピア愛”が強いのも特徴)ハムレットは、世に言われるような“優柔不断な男”ではない、情熱と理性の間でいかなる決断が気高い選択となるのかを迷っていたのだと先生は解説する。彼は世界観や宗教観の変わり目に登場した近代人だったというのだ、なるほど。
    また、この時代の人たちの“事実より真実”という感性にも言及し、心の目(=真実)に映ったのが“王の亡霊”であリ、それを疑い模索しながら、“気高い生き方”を見つけようとするプロセスが「ハムレット」という物語だと語る。決してぐずぐず思い悩む王子様の話ではない。

    私が大学の講義で聞いたジョン・ドーバー・ウィルソンの「ハムレットで何が起こるか」では、『すべてはハムレットの幻覚であり、叔父クローディアスは無実』というW.グレッグの斬新な論文が紹介されている。またフランスの批評家バイヤールは“新犯人はハムレット”とまで飛躍させる。この物語の持つ魔力のなせるワザなのだろう。河合先生は、そんな解釈も荒唐無稽であると一蹴。
    真相は、それこそシェイクスピアに聞かないと判らないだろうが、いずれにしても異説に触れる前に、河合先生の正統派の解釈を学ぶべきと思う。
    それにしても、400年以上も昔にシェイクスピアが残した謎々をこうしていまだに解けずにいるなんて!

  • 「復讐をなかなか行動に移さない優柔不断な哲学青年―われわれが信じてきたハムレット像は、実はロマン主義がつくりあげた虚像にすぎなかった!エリザベス朝時代に息づいていた「ヘラクレス的英雄像」と重ねあわせて読めば、自ら運命に立ち向かい、戦う男というハムレット本来の姿がよみがえる。文学史上、もっとも謎多き作品とされ、その不可解さゆえに「文学のモナ・リザ」「演劇のスフィンクス」とも呼ばれた傑作の驚きの真実を解き明かし、現代のシェイクスピア研究をまったく新たな地平へと導いた名著。」

    目次
    第1章 『ハムレット』の謎を解く意味―序に代えて
    第2章 ハムレットは優柔不断な哲学青年か?―ロマン主義解釈の誤り
    第3章 なぜ復讐を遅らせるのか?―TO BE,OR NOT TO BEの表すもの
    第4章 鏡としての演劇、ルネサンスの表象―奇妙な視点、パスペクティブ
    第5章 「弱き者、汝の名は女」とは?―ルネサンス人間観のもたらすもの
    第6章 ハムレットの狂気とは?―「尼寺へ行け」に篭められているもの
    第7章 『ハムレット』最大の謎―復讐するは我にあり

    著者等紹介
    河合祥一郎[カワイショウイチロウ]
    1960年生まれの英文学者。専門はシェイクスピア、表象文化論。東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学とケンブリッジ大学より博士号取得。シェイクスピア作品の新訳を手掛ける一方、The Cambridge Guide to the Worlds of Shakespeareの章を担当するなど国際的に活躍する。『ハムレットは太っていた!』で2001年サントリー学芸賞受賞


    「「謎解き」などときやすい題名とうらはらに中身はガチだった。すでに先人たちの研究が手厚いようで、それに倣ってかもろに批評的な文体。だが、決して読みにくくはない。”優柔不断で強弱な哲学青年”と印象付けられるハムレットの五回を、当時(つまりルネッサンス期)の時代背景や考えを丹念に探ることで説いていく。作者であるシェイクスピアが影響を受けたであろうギリシャ神話と照らし合わせての読み解きも例の挙げ方がハンパなく、冴えがあり、素人の膝を叩かせるが、さらに堺さんは本書を読むことでハムレットの「現代」と「将来なりたい姿」にまで思いをはせている。」
    ・堺雅人さんの愛読書
    (『あの人が好きって言うから・・有名人の愛読書50冊読んでみた』ブルボン小林著 中央公論新社の紹介より)

  • 大学のレポート用に読んだが、なるほどねぇ、とななかったのが辛い
    論拠にしている時代背景とかを知らなすぎるが故か

    2023.7.14
    112

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著者プロフィール

1960年生まれ。東京大学教授。訳書に『新訳 ふしぎの国のアリス』『新訳 ピーター・パン』『新訳 赤毛のアン 完全版』『新訳 星を知らないアイリーン おひめさまとゴブリンの物語』(すべて角川つばさ文庫)ほか。

「2017年 『新訳ドリトル先生シリーズ全14巻セット 番外編『ガブガブの本』と日本初公開の短編もふくむ完全版 豪華BOX入り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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