枕草子 上 (ちくま学芸文庫 コ 10-13)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097866

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  • 島内裕子先生による、北村季吟の『春曙抄』を底本にした能因本系統の本文、現代語訳、解説。

    先生は、枕草子 の「連続読み」を提唱されている。章段の前後の関連を意識しながら、文章の流れに沿って読解を進めていく枕草子読書法である。
    前書きにあるように、清少納言の自由闊達で機知に富んだ精神の律動を、この「連続読み」によって感じながら、「春は曙」の冒頭から、最後の「物暗う成りて」の跋文までを、現代の幅広い人々に通読してもらいたい、という先生の願いがこの本には込められている。

    先生は、「枕草子文化圏」を提唱されている。枕草子の影響は、鎌倉時代末期の『徒然草』に見られる。しかし、枕草子の本格的な註釈研究が始まったのは、江戸時代初期の北村季吟による『春曙抄』であった。源氏物語などに比べるとずいぶんと遅れをとっている。それでも、明治時代には、枕草子への関心と共感が高まり、その水脈は現代文学にまで流れている。先生の解説では、そうした「枕草子文化圏」についても随所で言及されていて、興味深い。
    本文が、『春曙抄』を底本としていることも、それゆえの先生のこだわりとして、面白い。

    さらには、現在広く流布している三巻本系統との本文比較も紹介されており、いま、あらためて能因本系統で原文を読むことの意義が、解説によって言外に感じられる。

    ところで、定子は父道隆の薨去、さらには兄弟の伊周、隆家の左遷により、悲しみのどん底にあった。枕草子をいつの時点で読んだかは知らないけれど、これを読んだ定子は笑ったと思う。

    第二八段は、女のもとから恋人が帰る時の憎たらしい態度、理想的な態度が奔放に書かれている。これを読んだ定子は、可笑しくて吹き出しただろう。そして、一条天皇との逢瀬を思い出し、涙しただろう。この段が笑いで終わらないところが素晴らしい。清少納言は、定子のことを思いながらこの段を書いたに違いない。

    四九段「貴てなるもの」で先生は、パステルカラーの色彩が浮かんでくると言われた後に、ローランサンの絵に言及されている。先生によるとローランサンは枕草子のフランス語訳を読んだことがあるとのこと。先生の筆の赴くままの評が本文共々、読む者の想像をさらにさらに拡げてくれる。

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