悪について (ちくま学芸文庫)

制作 : Erich Fromm  渡会 圭子 
  • 筑摩書房
4.43
  • (4)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 108
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480098412

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ここ数年の間に起こった様々な出来事(社会的、特に政治的な)を見るにつけ、自分の中に沸き上がった「悪とは何か」という問いは、考えれば考えるほど虚脱感に襲われ、「まあ、俺も人のことを言えるほど聖人君子ではないし」という所に落ち着いてしまっていました。そんな時にこの本を書店で見つけ、すぐに購入。あっという間に読み終えていました。読み進み、時々立ち止まって考え、そして先に進み、ということを繰り返す読書を、久しぶりにしました。最終章の「自由、決定論、二者択一論」は、必読です!!

  • 哲学

  • エーリッヒ・フロムが著した善・悪について著した本書。代表作「愛するという事」の対を成す著作で、人が悪を犯すことはどういうことかに向き合っている。

    主な要約はこうだ。

    主に暴力の分類について
    【一般的な暴力】
    ・遊びの暴力(ゲーム、競技など)
    ・反動的暴力1(脅威を感じたときに発する)
    ・反動的暴力2(欲求不満から破壊衝動に駆られる。羨望、嫉妬も含まれる)
    ・復讐の暴力(被害を受けた後に発する不合理な反応、信頼の崩壊も含む)
    ・深い絶望からの暴力(生そのものを憎む)
    ・補償的暴力(生を愛する能力が無い物が、その補償として破壊性を身に着ける。サディズムが近い)
    ・原初的な暴力(血を流すことで生を実感できる)

    以上は悪であっても、生の目的に役立つ(ように見える)暴力と攻撃性である。しかし下記3点は生と逆行するものであり、本質的な悪である。

    まず、本書では善(生)とは創造的なもの。愛。慈しみ。不確定。未来志向。としており、悪とは生とは反対に人間以前の状態に対抗させるものだ。破壊的。物質的。退行的。としている。

    1.ネクロフィリア
    死体愛好と呼ばれるが、基本的に過去に住んでいる。力(暴力)に惹かれる。ヒトよりモノを愛し、管理したがる。ちょうどナチスのよう。経済的・心理的欠乏がそうさせる。不公平にモノ扱いされて生きると助長される。

    2. ナルシシズム
    いわゆる自己中。すべてが自分の目線のみで、他者の考え・視点が全くない。他人を思うことはなく、自分の評価・安全などばかり気になる。物事を合理的に判断できず、世界と関わらないために孤独になり、孤独を埋めるために自己肥大する。そして自分の自己投影が崩壊することを何より恐れる。良性のナルシシスムは現実により補正されるが、悪性はこの機能がない。

    3.母親への共生的固着
    不確定な未来に踏み出したくない。安心な子宮に戻りたいという欲求。独立心が育たない。理性が偏った価値観に支配される。「他人」を人として経験できない。

    では、それらの悪に対してどのような対処をすればよいか。
    基本的には生を愛し、他人を愛し、自由で独立する「成長のシンドローム」を歩く事。
    人は善・悪両方の特性を持っており、どちらにも転ぶことが出来る。
    まだ傾きが小さいときはどちらの行動も選べるが、傾きが大きくなりすぎると、心は頑なになり、選択の自由はなくなる。

    とても新鮮な考え方だった。
    生(善)は人間的なもの。愛や未来を作ることで、悪はそれを遮り、暗い地面に引きづりこみ、「ヒューマニズムの重みから逃れようとする」という二項対立。
    そしてそれは誰もが持ちうるという事。
    選択するという重要性を改めて感じました。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

エーリッヒ・フロム (Erich From)
1900年ドイツ・フランクフルト生まれ。フロイト理論にマルクスやヴェーバーを接合して精神分析に社会的視点をもたらし、いわゆる「新フロイト派」の代表的存在とされた。また、真に人間的な生活を可能にする社会的条件を終生にわたって追求したヒューマニストとしても有名である。しだいに、禅や東洋思想へも関心を深めた。
著書に、『愛するということ』『悪について』『生きるということ』『フロイトを超えて』『希望の革命』『反抗と自由』『人生と愛』『破壊』(以上、紀伊國屋書店)ほか多数。1980年歿。

「2016年 『ワイマールからヒトラーへ〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エーリッヒ・フロムの作品

悪について (ちくま学芸文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする