餓死した英霊たち (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480098757

作品紹介・あらすじ

第二次大戦で死没した日本兵の大半は飢餓や栄養失調によるものだった。彼らのあまりに悲惨な最期を詳述し、その責任を問う告発の書。解説 一ノ瀬俊也

感想・レビュー・書評

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  • 86
    腹が立ってしまった。
    日本人は戦争をやってはいけない民族か。
    日本国の近現代の戦争は非科学的過ぎる。

  • 山田風太郎が戦後食品が大量に並んだスーパーを見て「英霊たちは靖国にはいない、ここにいる」と書いていた。この本を読むとその意味が分かる。日本軍の戦死者のうち6割が餓死だったのである。靖国が本当に英霊を敬っているなら、日本兵を無駄死にさせた辻政信、服部卓四郎、田中新一、瀬島龍三、牟田口廉也などの参謀たちの責任を問うべきである。しかし実際は餓死者を英霊の一括りにしてなかったことにしているのである。

  •  日本軍の組織としての特質と日本軍隊に通底する「思想」を追尋した古典的名著。日本にとってのアジア太平洋戦争における「死」の実相に迫る。

     冒頭に「戦場・戦地での悲惨という他にない「餓え」が、日本軍中央の責任によるものであることを「告発」することが目的とあるように、数字を列挙する淡々とした記述の中に著者の静かな怒りが滲み出ている。じっさい、読み進めていくうちに、無機質なはずの数字たちが、奇妙な実在感をもって迫りはじめる。よく被害や犠牲を数字に還元すべきではない、といわれる。しかし、これだけの迫力でこれだけの数字が並べられると、それ自体として絶対的な差異の相貌を帯び始めてくるように思う。
     著者の統計的な推測のしかたは、たしかにかなり大まかではあると私も思う。しかし、それぐらいしかできないというのが、この戦争の本質的な問題なのだ。数字の見積もりが過大であるという主張が、修正主義的な主張に取り込まれることがないよう、細心の注意が必要だろう。

  • 本書は以前にも読み感想を書いたはずだが、文庫本が出たのを機に再度読み返した。ここに日本の戦争の本質が出ていると思っていたからだ。日露戦争でもそうであったが、今度の戦争でも戦闘死は意外に少なく、およそ3分の2は戦病死、あるいは栄養失調による病死であった。(また、死者の多くが戦況が悪くなった1944年以後に集中しているのも悲惨である)それは、攻めていくだけで補給線を確保しない、兵站を軽視した日本の軍隊の本質からきていると藤原さんは考える。中国の場合は、まだ略奪によって補給はできた。しかし、南方では戦線を拡大すればするだけ、補給はたたれ、また、アメリカの飛び石作戦によって戦闘から逃れたものの、餓死するだけの兵士たちがいかに多かったか。藤原さんは、ガダルガナル、ポートモレスビー、インパール、フィリピン等での餓死者を特に取り上げ、軍部のやり方を批判する。そのくせ、多くの将官は危なくなったら現場から逃れていっているのである。本書を再度読み返したのは、最近、藤原さんが自ら参戦した中国での経験を書いた本が文庫で再版されたからである。そこでの病死者は約半分。この数は人により多すぎるという批判はあるが、戦病死が多かったという事実は否定できない。また、解説を書いた一ノ瀬さんは、兵站が薄いというが、これだけの戦争ができたのは、それなりの兵站があったからで、そこの部分の研究が今後必要になると述べている。これはぼくにはよくわからない批評だ。

  • アジア太平洋戦争における日本の戦没軍人の過半数は餓死によるものであった ーこれを一次資料の分析から例証していくのみならず、そもそもこのようになった原因は何であったか、実際の飢餓の苦しみがどんなものであったかといった点も丁寧に分析・描写される。

    根本には(とりわけ日露戦争での「成功」体験により押し進められた)精神主義があり、これと密接に関わる要因として、軍事作戦遂行には必要不可欠であるはずの交通・補給・情報に対する、甚だしい軽視があった。
    このような戦時における陸軍の意思決定を実質的に左右していたのは、陸軍幼学校及び陸軍大学校を出た「エリート」中堅幕僚らであった。
    これらの教育機関においては、実務を軽視し精神主義に偏した教育が行われ、また、指導者層の間では、兵士の人権を尊重するという意識は欠落していた。
    こういった要素が相まって、日本軍の体質が形作られ、延いては無謀な作戦が繰り返されることとなった。

    著者自身も陸軍歩兵として中国戦線に加わるなどの体験を持っており、それが本書に更なる迫真性を与えていると思われる。

    太平洋戦争の実態を知るのにうってつけの一冊。

  • 日本陸軍の作戦重視で兵站軽視によって多くの前線で悲劇を生んでしまったことを、落ち着いた筆致で迫る。実証的な本。ガダルカナル島に始まり、おおくの無謀な作戦により失われた命が分かる。おおむね、辻政信に厳しい。あと、インパール(ひよどりごえ)の牟田口。田中新一。

    ・日本軍が最大の戦死者を出したのはフィリピン。その理由にはフィリピンの現地民がゲリラとして反抗したこと。(これはインドネシアなどと違う)がある。アメリカだからか。
    ・ラバウルは、意外と自活できたらしい。ほおっておかれたあと。
    ・しちゅう兵科が差別されていた。
    ・無数の馬が犠牲になる。日本軍は馬頼み。
    ・服部卓四郎『大東亜戦争全史』
    ・6% 兵士の記録 
    ・『戦史叢書』
    ・15% 大本営の無知
    ・22%地形を知らない大本営
    39%メレヨン等の悲劇
    ・中国戦線にいた藤原

  • 初観測 2018/05/20

  • アジア・太平洋戦争における大日本帝國の軍隊における死亡要因を探ったもの。戦争に従事したもののうち半数以上が餓死あるいは栄養失調による病死だというのは衝撃的であった。そしてその原因もさんざん言われたことではあるが、おもに陸軍幹部の作戦主義的な思想や、補給に対する無理解であった。

  • タイトルは「餓死」と書いて「うえじに」と読ませる。そのまま
    「がし」と読むよりインパクトがある。

    先の大戦で亡くなった日本兵うち、大半が餓死及び栄養失調からの
    戦病死である。「飢島」とも呼ばれるガダルカナル島や無謀な作戦
    であったインパールなどに限ったことではない。

    ほぼすべての戦場で、兵站を無視した「作戦ありき」の下で考え出され
    た作戦によって引き起こされた悲劇だ。

    ある部隊には2週間分の食糧を、ある部隊には1か月分の食糧を持たせて
    洗浄へ送り出し、「持参した食料がなくなったら現地調達せよ」。

    洗浄となった地域すべてが肥沃な土地なら耕作も可能だろう。だが、
    地勢調査もせずに送り込んでいるものだから、耕作が出来るような
    場所が一切ない地域もあった。

    ならば、現地の人たちから徴発せよとなるのだが、徴発というよりも
    掠奪になってしまっている。誰だよ、日本軍はアジアを解放する為に
    戦ったなんて言うのは。食料を掠奪して恨まれているじゃないか。

    「腹が減っては戦はできぬ」はずなだが、皇軍兵士は「腹が減っても
    作戦続行」かよ。精神論じゃお腹はいっぱいにならないのに。

    「最右翼をすすんだ第三十一師団の佐藤幸徳中将は、インパール北方の
    コヒマを占領したが、軍からは約束の補給はまったくなかった。佐藤中
    将は「米一粒も補給がない」ことに怒り、食糧のあるところまで後退
    するとして独断で退却した。佐藤中将は抗命の容疑で罷免の上、軍法
    会議にかけられた。佐藤はあえて牟田口の責任を問おうとしたもので、
    結局は精神錯乱ということで片づけられた。」

    もうねぇ、阿呆かと思うの。正常な判断をした佐藤中将が軍法会議に
    かけられて、無謀な作戦を考え出した牟田口廉也が何も批判されず
    にいるなんて。

    本書では日本兵の大半が戦病死するに至った原因、精神主義や人命
    軽視に至った過程を詳らかにし、時代遅れの軍隊だった日本軍の姿を
    浮き彫りにしている。

    毎年、終戦の日になると靖国神社を参拝する国会議員たちの映像が
    ニュースで流れる。

    「英霊たちの御霊に追悼の誠を捧げ…」なんて決まり文句のように口に
    するセンセイがいるけどさ、その靖国神社に祀られている英霊の御霊の
    ほとんどが満足に食糧の補給も受けられずに亡くなった人たちなのだ。

    だったら、玉串奉奠やらじゃなくて山もりのご飯を捧げて欲しいわ。
    「大変遅くなりましたが、どうか今は思う存分食べて下さい」って。

  • 東2法経図・6F開架 210.75A/F68u//K

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著者プロフィール

藤原 彰(ふじわら あきら)
 1922年東京生まれ。
 1938年東京府立第六中学校四年中退、陸軍士官学校入学。1941年陸軍士官学校卒業、中国  へ派遣。1945年陸軍大尉で復員。1946年東京大学文学部史学科(国史専攻)入学、1949年卒 業。その後、千葉大学文理学部、東京都立大学、東京大学教養学部、東京教育大学文学部など で講師を歴任。1969年一橋大学社会学部教授・同社会学部長などを経て、1986年一橋大学停 年退職。1989〜93年女子栄養大学教授。
 一橋大学名誉教授。2003年2月26日没。
主な著書
 『日本軍事史(上巻)戦前篇』(社会批評社)、『天皇制と軍隊』(青木書店)、『昭和史』(岩 波新書)、『餓死した英霊たち』(青木書店)、『中国戦線従軍記』(大月書店)、『日本近代 史』(岩波書店)など多数。

「2007年 『日本軍事史(下巻) 戦後篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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