増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

制作 : 谷 喬夫 
  • 筑摩書房
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480099204

作品紹介・あらすじ

ごく平凡な市民が無抵抗なユダヤ人を並べ立たせ、ひたすら銃殺する――なぜ彼らは八万人もの大虐殺に荷担したのか。その実態と心理に迫る戦慄の書。

感想・レビュー・書評

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  • 521ページの内、305ページからあとがきが始まるというある意味スゴい構成の本。そのあとがきが同じ史料から真逆の結論を導き出した同業者の研究への批判で埋め尽くされてるといてかなりおもしろい。
    本自体の中身としては、タイトルの「普通の人びと」が如何にしてユダヤ人虐殺に手を染めたのか、それを拒否したのかというところを証言に基づいて検証。嫌がる人、嬉々として協力する人、出世のために協力する人、兵役さえ終われば日常生活に基盤があって軍隊内部での出世なんか気にせず拒絶する人、きっちり計画された虐殺、行き当たりばったりの乱射、教科書の「ユダヤ人に対する虐殺行為が行われた」の一文の裏側の個別事情が言葉は悪いけどいちいちおもしろい。

  • 「Ordinary MEN」の翻訳(2019/05/10発行、1728E)。

    知られざるドイツ秩序警察・警察予備大隊の衝撃の実態を明らかにした名著の単行本を増補した文庫版。

  • ナチス政権下でのホロコーストの実態を理解する上で、1992年に出版された本書は2つのことを教えてくれる。一つはホロコーストに関して、我々はアウシュビッツやビルケナウ等の強制収容所ばかりをイメージするが、実際には被虐殺者の20-25%は、ユダヤ人が暮らしていたゲットーやゲットー近辺の森林での”射殺”によるものであるということ。そしてもう一つは、そうした”射殺”に関与したのが、民族浄化や反ユダヤ思想に特段染まっていたわけではない市井の人々によって構成された警察予備大隊であったということ。

    ある暴力についてそれが特殊な事情(政治思想、宗教、貧困等)の影響によって、限定的に持たされるものであるという言説は、一般的に我々を安心させる。そうした状況に陥らなければ、我々が暴力に駆り立てられはしないという安心感を与えてくれるが故に。一方、本書は全く真逆の事実を提示する。中年層の職人や商人などの一般人であり、かつ年齢も比較的高い故に、若年層のようにナチスドイツの思想に耽溺したわけではない人々により構成された警察予備大隊が、なぜ3.8万人のユダヤ人らを射殺し、4.5万人のユダヤ人らを強制収容所送りにしたのか。

    本書は、歴史学者とである著者が極めてオーソドックスな歴史学のメソドロジーに基づき、市井の人々が血生臭い暴力の執行者になり果ててしまうのかというメカニズムを明らかにしようとした労作であり、ホロコースト研究、ひいてはそれは暴力という行為そのものに迫る心理社会学的な側面すら明らかにしようとする。決して心地良い書物ではないが、得てして本当の事実とは人を不快にさせる。そうした優れた歴史学の一冊として、永遠に語り継がれるべき研究所である。

  • ナチス政権下の人たちが隔絶して激ヤバイデオロギーに骨の髄までスポイルされて全く違う世界の別の生き物と化してしまったからこういう大量殺戮も可能になったということで「そういう社会」に生きてないわたしたちは別に安心していいんですよという話ではなくその逆、逆逆逆という本。

    ホロコーストや最終解決の話になるとき思い浮かぶのはやはり絶滅収容所で、概念としてもめちゃくちゃインパクトがあるので頭に残りやすいけれど、絶滅収容所に至るまでにはもっと直接的に一斉射殺という手段が取られていたわけで、そこに関わった人たちの証言を多く読めたのはよかった えぐかったが。

    いや、射殺に関する臨場感あふれる証言が最たる押しポイントというわけではなくて、まさにタイトルで、普通の人たち(別に軍人でもなく戦争前は違う仕事をしてて家庭もある中下流階層で前線には耐えられないような中年の人たち)がどう目の前の殺戮を自分の中に落とし込んでいくかという過程と考察の緻密さ、これに尽きます。

  • 普通の人びとが、軍隊に入り、制服を着ることにより、社会的死を回避するよう、団結力を発揮させ、ホロコーストを進めてしまう様は、大量殺戮で結ばれた国民的同胞愛を感じてしまう。
    写真はつらい。特に列車に乗るよう追い立てられるユダヤ人の様子は。

  • 如何にして『普通の人々』が加害者となったのか? を追った内容。
    『増補』とあるので新たな記事が追加されているのだろうとは思っていたが、まさか、残り1/3ほどで『あとがき』が始まるとは思わなかったので吃驚したw しかし、巻末の『二五年の後で』もかなり読み応えがある。ここが増補された部分なのかな?
    収容所の外で行われた虐殺について書かれて、文庫で簡単に入手可能なものは珍しいような……。

  • ゲットーは赤痢の流行に苦しんでいた。そのため多くのユダヤ人は市場まで歩いて行けなかったし、ベッドから起き上がることさえできなかった。したがって突入した舞台が最初にゲットー中を掃討している間、至るところから銃声が聞こえてきた。警官の一人はこう回想している。「私自身は住居内で6人の老人を射殺しました。彼らは寝たきりの老人で、撃って楽にしてくれるようにはっきり私に頼んだのです。」最初の掃討が完了し、生き残ったユダヤ人が市場に集められた後で、非常線を担当していた舞台が、さらにゲットー内を探索するように呼び込まれた。彼らは外で、絶え間なく銃声がするのをすでに聞いていた。彼らがゲットーを探索すると、至るところに死体が散乱していることがわかった。

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  • よく語られる収容所での大量虐殺とは異なり、警察部隊による虐殺に焦点を当てている本。
    警察部隊はその成り立ちから熱心なナチ党員により構成されていたわけではなく、人員不足を補うために招集された普通の仕事を持つ人達が多かった。にもかかわらずこの部隊が熱心に虐殺に励んだのは、命令下における同調圧力が個人の倫理観を抑えるという普遍的な現象によるものだと指摘する。
    罪の文化が恥の文化に置き換えられてきたともしており、この虐殺は組織犯罪や企業の不正の延長線上にある、私たちとも決して無関係とはいえないことなのだと思えてくる。
    また後書きおよび増補において筆者はゴールドハーゲンの、ドイツ人が持つユダヤ人に対する憎悪が原因だとする主張に明快に反論していて興味深い。

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