明治の文学 第5巻 二葉亭四迷

著者 :
制作 : 坪内 祐三  高橋 源一郎 
  • 筑摩書房
3.71
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本棚登録 : 46
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480101457

感想・レビュー・書評

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  • 二葉亭四迷の作品、こんなに面白いとは。そしてこの本のウリである「今では分かりにくい言葉につけてある注釈」の充実度が凄い! これのお陰で「浮雲」がスラスラ楽しく読めました。明治の文学に触れてみたいけど、たまに何書いてあるのか分からないから……という苦手意識のある人にはこの「明治の文学」シリーズオススメですね。
    (本文の下五分の一ぐらいが注釈エリアになっていて、そのまま目を下に下ろすと語句の注釈が読めるので、たまにある巻末注釈と本文を反復横跳び~をしなくていいところが、これまた私好みで)

    収録作は「浮雲」「平凡」「あいびき(ツルゲーネフ翻訳)」そして随筆「余が翻訳の標準」「余が言文一致の由来」「私は懐疑派だ」「予が反省の懺悔」。
    「浮雲」は話のテンポを楽しみつつ、言文一致体の手探りの様子、今の小説の書き方とは違うカギ括弧や句読点の使い方など、いろんな方面から味わえる面白さ。もちろん、草食系主人公の文三と、ヒロインお勢のじれじれの恋愛模様も普通に面白い。
    「平凡」は収録されている随筆の中で「風刺」になってしまった(これはたぶん、自然主義文学に対する風刺、って理解で良いのかな?)、とバッサリ自身で切り捨ててしまっていますが、だからこそ面白い部分もあると思いましたよ。
    随筆類はその語り口が生き生きとしていて、目の前にいる私に直に語りかけてくれるような臨場感と、話のネタの選び方、わかりやすさ(そしてどれも江戸っ子気質な四迷がチラついてて)どれも素晴らしかった。

  • 内村文三という、人にこびることが出来ない高潔な男。
    反対に、世渡りの上手い友人の昇。
    文三をかばうも、昇に惹かれていくお勢。
    簡単に言うと、文三がお勢に対する気持ちを打ち明けられないもどかしさと、リストラされたことによる居心地の悪さの心境が緻密に描写されています。
    文三の繊細さは、痛々しい。世の中で生きていく中で、この繊細さと高潔さだけでは、傷つくばかりであろう。
    文三はリストラされる。 地方にいる母をひきとるため、安心させるために、少しくらい辛くても、上司にこびることができないのであろうか。
    どうしてそこまでしても、譲れないのであろうか。
    そして、なぜ居心地が悪くなっても下宿を出て行かないのか。
    文三は、お勢とその母親お政に怪訝に扱われても出て行かない。
    二人からひどい扱いを受けても彼の中では、お勢が気になるのだ。
    お勢の中に、自分の大切にしている「高潔さ」を見出そうとする。それははじめは確信していたが、お勢が昇と仲良くしていくほど、わからなくなる。
    わからなくなっても、信じようとし、下宿から去ることができない。
    明治期の時代がよくわかる作品でありながらも、人物の心理はリアルに感じる作品であった。

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