ちくま日本文学全集 32 島尾敏雄

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480102324

感想・レビュー・書評

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  • ちくま日本文学全集032

    島尾敏雄の作品はまったく初めて。
    「死の棘」という作品名は聞いたことがあるけど、作者の傾向やジャンルもまるっきり知らなかった。

    で、感想はどうかというと、気に入りました。
    テーマは重たいのに、気に入りましたなんていうのはなんだけど、こういう言い方が自分としてはぴったり。

    この中での最高傑作は「島の果て」。

    おなじ経験を「出孤島記」「出発は遂に訪れず」でも書いていて、それはそれで立派だけど、物語として完結した宇宙を築くことに成功した「島の果て」には及ばない。

    でも、この人はこれだけ造形力の強い文体を持っているのに、それを物語を構築するためには使わないで、自分の身辺というか、私小説的な方に使ってしまったのはなぜなんだろう。

    この本のところどころで夢の内容を描写しているけれども、実にリアル。夢という支離滅裂な内容をここまで読ませるというのはなかなかありません。
    現実に存在しないイメージを現前感をもって描き出せるのはもっと虚構性の高い作品を描くときの最大の武器になった筈なのに、そういう作品がここではほとんど収められていません。たぶんそういった作品は少なかったんだろうと思いますが、もったいないなあと勝手に思っています。

    とはいってもどの作品も高い緊張感が漲っていて文句なしに面白い。作者の身辺に題をとった作品でもまるでハードボイルドの作品を読んでいるような気がします。

    読んでいるうちに作者が自分の生活や自分自身の内部をずっと凝視しているというイメージが生まれてきました。
    この作家の強靭な精神力に驚くとともに、それはしかし、周囲としてはかなり耐え難いことではなかっただろうかなどど思いました。

    私にとっては、新しい作家を発見した一冊です。

  • 「格子の眼」は子供時代の不安や時間の長さを執拗なほどねちっこく描いた短編なんだけど、「死の棘」を先に読んでいる読者としてはなんというか病の萌芽のようなものを感じざるを得ない。島尾敏雄は見事に脈絡を裏切る。「兆」が島尾敏雄らしさ全開で好き。田舎の生活を知りたい人は是非「川にて」を読んでください。

  • 2009/4/30購入

  • 『格子の目』と『子之吉の舌』、『冬の宿り』がいい。
    『死の棘』書いた人よね?って思えるほど違った作品。

  • 全然、知らない人です。

    内容は、荷風よりは楽しかった…というか、読めた。

    物語の1番底にあるのは、自分は特攻隊員で、死を覚悟していた。でも、ある日急に戦争が終わって、特攻に行けなかった。戦争で死ぬことが出来なかったという喪失感みたいな感じです。

    それはそれで、「いいこと」なんだけど、うまく受け入れられないみたいな。

    うーん、日本のロスト・ジェネレーション?

    とかいいつつ、ヘミングウェイほど、盛り上がりもないし、乾いてもいないです。

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著者プロフィール

1917-1986。作家。長篇『死の棘』で読売文学賞、日本文学大賞、『日の移ろい』で谷崎潤一郎賞、『魚雷艇学生』で野間文芸賞、他に日本芸術院賞などを受賞。

「2017年 『死の棘 短篇連作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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