- Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480102416
感想・レビュー・書評
-
これは難しかった。最初の「たけくらべ」を20ページぐらい読んで、これはカナワンと放り出していた。
こういう文章です。
龍華寺の信如、大黒屋の美登利、二人ながら學校は育英舍なり、去りし四月の末つかた、櫻は散りて青葉のかげに藤の花見といふ頃、春季の大運動會とて水の谷(や)の原にせし事ありしが、つな引、鞠なげ、繩とびの遊びに興をそへて長き日の暮るゝを忘れし、其折の事とや、信如いかにしたるか平常の沈着(おちつき)に似ず、池のほとりの松が根につまづきて赤土道に手をつきたれば、羽織の袂も泥に成りて見にくかりしを、居あはせたる美登利みかねて我が紅の絹はんけちを取出し、これにてお拭きなされと介抱をなしけるに、友達の中なる嫉妬(やきもち)や見つけて、藤本は坊主のくせに女と話をして、嬉しさうに禮を言つたは可笑しいでは無いか、大方美登利さんは藤本の女房(かみさん)になるのであらう、お寺の女房なら大黒さまと言ふのだなどゝ取沙汰しける、信如元來かゝる事を人の上に聞くも嫌ひにて、苦き顏して横を向く質なれば、我が事として我慢のなるべきや、夫れよりは美登利といふ名を聞くごとに恐ろしく、……(p33)
今年のお正月、のんびりした気持ちで、パラパラめくってみると、なんとなく読める。
次に収められている「にごりえ」も「大つごもり」も、読んで楽しめるということを発見した。
「たけくらべ」は修辞が絢爛豪華すぎてかなり読みにくい部類に入る。「にごりえ」「大つごもり」はもっとシンプル。
よく分からない部分もあるけれども、読んでいるとだんだん慣れてくる。
こういう文章は、気ぜわしく読んでは駄目で、ゆっくり味わいながら読むべきものなのだろう。
短文はまるで清少納言を思わせる。
樋口一葉は、明治29年、貧窮のうちに死去。24歳。
はじめて読んだけれども、天才的な作家。
大発見だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大つごもり
なにが悪なのか、なにが貧しさか? 全部相対化して、逆転もする。よく見たら対立は全部逆転するのかな。調べてないけど。
そんな話なのに、最後には呆気なくて美しい救済。なんという完成度。 -
えーとですねぇ、文語体は、やっぱり難しいです。
「たけくらべ」とか、かろうじてストーリーを知っている話は、なんとか入ってくるのですが、読むのが辛い。
そして、自分の読み取っているストーリーが、正しいのか、勝手な解釈なのかが、良くわからないです。
一文が長いのと、地の文とセリフの文が、そのまま続けて書いてあるのが、なによりも難しく感じました。
でも、けっこう、セリフとかには、リズムがあっていい感じのセリフもあるんです。だから、なんか、もうちょっとだけ、これを読み取る力があれば、きっと、面白いんだろうなぁと思うのですが。
だから、苦しいながらも、最後まで読めないことはなかったです。
で、いい加減なわたしの読みで、読み取ったことは、こんな感じ。
恋愛中心。
女の子、ちょっと気が強い。
素直になれなくて。
年上の女の子にあこがれるやんちゃな男の子。
けっこう、途中で、プッツリ終わってるようなエンディング。
男の子のタイプは、優等生とやんちゃ。ウブな優等生の方が、本命?
世間の噂に引き裂かれ……。
本当は、その当時の生活のありようなんかもしらなければ、ものすごく浅い読みになるんだろうなぁと思います。
でも、なんか、昔も今も、かわらないところもあるのかなぁと思ったりもしました。