ちくま日本文学全集 44 梅崎春生

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480102447

感想・レビュー・書評

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  • おとぼけ市井モノや、倦怠感溢れる戦争物など、春生の世界おためしモノに最適かと。
    この人の作品は、へへへ…と小さく笑った顔で小さくため息をつくような、そんな小さな疲労感と淋しさがある。
    (今度書き直し)

  • ちくま文庫

    梅崎春生 「蜆(しじみ)」「輪唱(猫の話)」「ボロ屋の春秋」「桜島」など 重厚なテーマと軽妙な文章による短編集。初めて知った作家だが 凄い本だった

    「何が起きても、生きることをやめない」人間を描いている
    *弱肉強食社会〜日本が弱いから戦争に負けた→戦争は醜いが、生きるには 勝つしかない
    *生きる意志と滅亡する意志〜美しい死はない、死は無機質


    *敗戦を契機に 日本が 相互扶助的な贈与社会から 競争社会へ移行した姿を描いている
    *硯は 戦後の日本人、競争社会下の人間を象徴?
    *ボタンは 偽善を象徴?

    輪唱(猫の話)
    *道路にある猫の死骸を車が持っていって 跡形もなくなる話→火葬されて灰となった人を思い起こさせる
    *死=存在がなくなる を実感

    Sの背中
    *この世は仮の世なり〜人生は演技なり〜舞台装置が必要
    *考えたり空想したりするだけで、実際見ない方がいいものが、この世にはある

    ボロ屋の春秋
    *騙し合い、弱肉強食の戦後社会を描いている
    *亡びるものをして亡びよ〜こういう悲壮な心境をもって〜毎日生きている

    桜島
    *兵隊として過ごした〜屈辱の記憶〜自分が卑屈になっていく〜しかし もう死ぬという今になって それが何であろう
    *私は 私の宿命が信じきれなかった〜なぜここで滅亡しなければならないのか
    *私の死骸が埋まって無機質になったあとで 日本にどんなことがおきても 私には関係ない〜落ち着いて 死ぬまで 生きよう

    チョウチンアンコウ
    *チョウチンアンコウは 不要になった器官を消滅させて精巣だけの存在になる→どんなに成り下がっても、生きることだけは やめない

  • 著者の初読書。辞書ひきまくった。読みやすい文体ではある。『Sの背中』『赤帯の話』『チョウチンアンコウについて』が好きであり、『ボロ家の春秋』『桜島』は佳作だと思う。「赤帯」の本当の正体と行先が気になる。彼は意志が強く、お別れのプレゼントもシベリアらしく、野性的だ。愛がある。また『桜島』の文体はきびきびしていて読みやすかった。

  • 初めて読む作家だけど、この人は福岡市の生まれなんですね。
    p463の年譜によると、大正4年(1915)福岡市簀子町(現・中央区大手町)に生まれたとあります。
    福岡市には簀子小学校というのがあって、これは中央区大手町ではなく、大手門なので、本の記載は間違いだと思う。福岡生まれではないので、断言はできないが。

    梅崎春生はその簀子小学校を卒業し、修猷館中学校→熊本第5高等学校→東京帝国大学と進む。

    修猷館といえば、福岡市では、福岡高校と並ぶ名門中の名門。そこから東大だから、社会のメイン・ストリートを歩くトップ・エリート。当時の福岡の人々はそう思ったし、いまでもそうだろう。

    本人は、小説家というきわめて困難な道を選んだものの、そこでも立派な成果をあげ、日本の代表的な作家のひとりとして、こうやって文学全集にも納められるようになったわけである。ただ、そういう有名な作家で、しかも簀子小→修猷館という福岡度満点の生い立ちの割には、現在ではあまり知られていない作家のように思える。いままで誰からもこの人の名前を聞いたことがなかった。福岡の作家といえば、やっぱり夢野久作が有名である。

    これほど知名度が低いのはなぜか、不思議な気がする。あるいは私が知らないだけなのか。サザエさんの最初の舞台が福岡というのも最近知ったばかりだし。
    今度修猷館出身の人にあったら、梅崎春生を知っているかどうか聞いてみよう。

    作品そのものも、なんとなく好きになれなかった。
    妙に余裕めいたところがあって、それが引っかかるのかも知れない。

    そう思いながら読んでいくと、「赤帯の話」「眼鏡の話」から面白くなり、「桜島」には圧倒された。戦争関連の真剣な作品の方が、私とっては合うみたいだ。「桜島」は最も初期の頃の作品で、文章が気合に満ちている。

    「積乱雲が立っていた。白金色に輝きながら、数百丈の高さに奔騰する、重量ある柱であった。」
    (p407 桜島)

    梅崎春生は、この全集がなかったら、まず読まなかった作者の一人だろう

  • 戦争にかかわる「赤帯の話」、「桜島」が印象に残った。
    ソ連の収容所での生活とか、敵の本土上陸が近いと言われていた終戦間際の鹿児島での兵隊生活とか、過酷な環境に違いないのに実に淡々とした書き方で、注意して読まないと想像が追いつかない。

  • けっこう、おもしろくて読みやすかったです。
    この人も、まったく聞いたことがない人でしたが。とぼけた感じが、おもしろい。基本、知らない(有名じゃない)人って、おもしろくないんだろうと思っていましたが、なかなか、そうでもないですね。*1

    なんか実は深刻なことを書いている気がしますが、そんな気にさせない。でも、残るものはあるよみたいな感じの読後感がいいです。

  • 「輪唱」だけ読んだことあった


    カロのエピソードが残酷なのにかわいらしい

    「蜆」と「ぼろ家の春秋」もいいなぁ


    文体の清々しさも好みだった

  • 高校の教科書に載ってた「輪唱」を読んではまった。

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著者プロフィール

梅崎春生

一九一五(大正四)年福岡市生まれ。小説家。東京帝国大学国文科卒業前年の三九(昭和十四)年に処女作「風宴」を発表。大学の講義にはほとんど出席せず、卒業論文は十日ほどで一気に書き上げる。四二年陸軍に召集されて対馬重砲隊に赴くが病気のため即日帰郷。四四年には海軍に召集される。復員の直後に書き上げた『桜島』のほか『日の果て』など、戦争体験をもとに人間心理を追求し戦後派作家の代表的存在となる。『ボロ家の春秋』で直木賞、『砂時計』で新潮社文学賞、『狂い凧』で芸術選奨文部大臣賞、『幻化』で毎日出版文化賞。一九六五(昭和四十)年没。

「2022年 『カロや 愛猫作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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