きみの体は何者か ――なぜ思い通りにならないのか? (ちくまQブックス)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480251145

作品紹介・あらすじ

体は思い通りにならない。でも体にだって言い分はある。体の声に耳をすませば、思いがけない発見が待っている! きっと体が好きになる14歳からの身体論。

感想・レビュー・書評

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  • なぜ思い通りにならないの? 自分の「体」と向き合う、10代からの読書体験。 『きみの体は何者か』 | BOOKウォッチ
    https://books.j-cast.com/topics/2021/10/14016270.html

    体にだって言い分はある|ちくまQブックス|伊藤 亜紗|webちくま
    http://www.webchikuma.jp/articles/-/2546

    筑摩書房 きみの体は何者か ─なぜ思い通りにならないのか? / 伊藤 亜紗 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480251145/

  • 優しいイラストと黄色の表紙で中高生向けの入門講座的内容。
    自分の体がうまく動かなくなってきた年頃、体の大事さに痛感。
    「きみの体はきみの思い通りにはならない」「思い通りにならないこと」は、「思いがけないこと」でもある「きみが与えられた体、その体が教えてくれることが必ずある」という。
    「しゃべる」ということを重点的に論じていて、社会的な行為であり、体がエラーを起こすものの一つ吃音は「わたしと相手とのあいだで起こる」「難発とは、体がフリーズしたように固まってしまう」ことらしい。
    言えなかったことを思い出して小声で言うのは私もある。「成仏できなかった言葉たちを愛でるような時間が、結構好き」という伊藤さん。
    「自分の体に100%満足している人はいない。」「体は自分のものであると同時に、社会のなかに、「あいだ」に存在する」自分のからだを探求するって難しいけどからだとつきあいつつ少しずつ観察してみよう。

  • きっと体が好きになる14歳からの身体論

    自分の身体が、自分の思い通りになると思ったら大間違いだ。

    小学生の時、同じクラスの男の子で吃音の子がいた

    しゃべるのがすごく辛そうだった

    これを読んだら、あの時の彼の辛そうなのは「難発」だったんだ、とわかった

    「てててててててがみを書いたんだよ」という「連発」も少しあったと思う。今思い出すのは、彼が何を話していたか、よりも、その発言のタイミングに辛そうにしてた彼の顔だ。

    三島由紀夫の「金閣寺」でも吃音だった。なかなか出てこない言葉に、世界から取り残される気持ちになるという。それほどまでに、会話はラリーなんだ。そもそも著者の伊藤亜紗さんは「しゃべれるだけで変」だと言う。たしかに!と膝を打った。

    そう、体は思い通りにならない。

  • 伊藤亜紗さんは注目している書き手で、ずっと読みたいと思っていながら機会を逸していたのだが、ちくまQブックスで出たので、これならすぐ読めると思い読んでみた。
    ほんとにすぐ読めた。
    タイトルと今までの著作から、思い通りにならない体について書かれた本だろうと思ったのだが、それは外れてはいないが当たったというほどでもないというか…。
    このQブックスのシリーズは、プリマ―新書では難しい層(主に中学生)をターゲットにし、読みやすくわかりやすく文字数も少なくなっているので、それが書き手には制限となっている部分はあると思う。
    思うこととは違う体の動き全般を語るには文字数が足りないので、著者が当事者である吃音に絞られて書いてある。そこがタイトルから私がイメージした内容には足りない感じがしてしまった。
    読んでないので恐縮ですが『どもる体』を中学生向けにリライトした感じなのではないだろうか。
    この本でも吃音について教えられることは多かったのだが、もっと詳しく知りたいと思った。
    しかし初めて知ったことも多かった。
    例えば連発について「てててててがみ」と言う時、吃音でないひとは「て」が言いにくいんだな、と考えるが、「て」は出ているから問題ない、「て」から「が」に行く行き方がわからないのだ、「てんぷら」なら言えたりする(P39)というところなどなるほど、そうだったのか、と。

    思うようにはならない体を受け入れようというメッセージも良かったが、メタファーは中学生にはわかりにくいかな、と思ったし、わかったとしても「可能な限りきみの実感に忠実」な「しっくりくるメタファーをさがす」(p85)のは、難しいと思う。相当な言語的センスが必要。まあ、書いてある「果汁たっぷりのゼリーのふたを汁がこぼれないようにそうっとあける」というのを使わせてもらってもいいんだろうけど、それは自分の実感に忠実ではないと思う人もいるかもしれないしなあ。

    でも、吃音の人の実感や、そのしくみを中学生にわかりやすく書いた本は少ないから、これはこれで良いと思う。大人は『どもる体』を読む方がいいかもしれない。

  • 10代のノンフィクション読書を応援する新シリーズ創刊。
    これまで中高生向けととらえられてきた老舗の岩波ジュニア新書や定番になってきたちくまプリマー新書のようなものも、現実の中高生にはもはや読みきれないという現場の声を受けて、よりとっつきやすく読み切れるものを目指したつくりとのこと(中学生向け学習入門シリーズと銘打ってひとあしはやく創刊した岩波ジュニアスタートブックス(=ジュニスタ)とほぼ同じ雰囲気)。QはQuestionのQであり、Quest(探究)のQでもあり。

    ということで、創刊4点のなかで、いちばん興味のある伊藤亜紗さんのを買ってみた。中学以上で習うと思しき漢語にはふりがなあり。口語体で改行多め。自らの吃音体験、そして吃音研究をしてみてわかったことをベースに、だれにとっても多かれ少なかれままならない「自分の体」との向き合い方を考えていく。
    読みながら、連発、難発、言い換えといった吃音の症状は、外国語で話しているときや、たとえ母語でもうまく言葉がみつからず黙ってしまうような経験にどこか重なると気づいた。「思い通りにならないこと」こそ人間らしさの本質ではないか、と思えるようになれば、そして、自分の体の解像度が上がることで個人的な体験をメタファーにして人と共有できるようになったら、自分の体とのつきあいかたはもっと楽しくなるかもしれないという結び。
    巻末には「次の読んでほしい本」として、マンガやノンフィクション4冊の紹介あり(既読1冊)。

    ***

    入手した書店(某デパート内大型店)では、このタイトルは家庭教育の本棚にひっそりはいっていて、同時刊行の他の3点はどこにあるかわからなかった。これまでにでている<14歳の世渡り術><よりみちパン!セ>シリーズもそうだけれど、この手のノンフィクション書籍やYA小説などをまとめて揃えたYAコーナーがないとターゲット世代に買ってもらいにくいのではないかしら?(岩波ジュニア新書とちくまプリマー新書も、以前フェアで参考書コーナーに並んだことはあるけど、ふだんは児童書から離れた一般新書コーナーだし…)
    学校図書館に入って、そこで出会ってもらうのが主なルートなのかもしれないけど。

    追記:暮れに本屋に行ったら、学参コーナーの一角に「中学読みもの」という棚ができて、岩波ジュニスタとちくまQブックスが並んでいた。よきかな。せっかくなら「よりみちパンセ」「14歳の世渡り術」シリーズやジュニア新書、プリマー新書あたりも並べて手に取れるといいと思う。

  • 100ページもない本なのに気づきがたくさん。やはりちくまのこのシリーズは良いですね。おすすめ本も面白そう。

  • 〇身体全部についてではなく、“話す”ことに特化しています。
    〇新しい視点

    ・吃音について知ることが、体について知ることになる。
    ・言葉を喋る
     ①声帯を震わせて音を出す
     ②その音を喉や口の位置を変えることで加工する
     ③音を出しながら次に出す音に備える
     ④話す内容を考える
     ⑤相手の反応を見て音量・言葉遣い・内容を調整する 
     ⑥身振り、手振りを加える
     ⑦会話の流れを読みつつ発言権(ターン)を取りにいく
     ⑧その場にふさわしいキャラクターを演じる
     …①から③は音を出す作業
      ④から⑧は伝えるための作業
      話すとき、これらを同時に調整しながら行う
     移民の国アメリカでは、これらは難しいことを前提にしたコミュニケーション。
     日本では喋れないことの方が目立つ。

    ・“ん”

    ・体のエラー
     「連発」
     体が試行錯誤しながら音を出す
     吃音はわたしと相手との「あいだ」で起こる
     「離発」
     声が出ない。体のストライキ。世界から切り離される感覚
     孤独と孤立。言葉は孤独によって、磨かれる。
     連発を隠すための難発。症状だけど対処法

    ・言い換え
     離発・難発を予感したら、言い換える。
     固有名詞の壁:すべての言葉が言い換え可能ではない
     …忘れたふり。フィラー
     …ニュアンスがずれることもある。
     言い換えず敢えてどもることで、オープンにする

    ・何が自分にとって、その人にとってベストか
     身体的アイデンティティ
     自分の身体に100%満足している人はいない。

    ・自分の身体にはどんな特徴があるか。身体とどんな付き合い方をしているか。
     …メタファーを味方にする。現実を捕らえるときに必要なもの。
      例:パンデミック
        ←戦争 地球から撲滅することがウイルス対策
        ←引っ越し 環境との関わり方がウイルス対策
    ・自分の「言葉」を獲得する。メタファーには、自分でない人を自分にする力がある。
    ・思い通りにならないことが、思いがけない出会いをもたらす

  • 私の体には数年前からいくつかの障害があり、体の扱いにくさについては日常的に考えることが他の人より少し多めだと思う。そういったこともあり、伊藤亜沙さんの活動は気になっていて、著書も読みたいと思いながら積読が多くなかなか読めずにいました。今回出た本は児童向けで隙間に読めそうなこともあって最初の一冊として手に取りました。

    内容としては、体は思い通りにならないものだということ、その上でどう向き合うかについて吃音の例をもってやさしく説明したものです。かなり読みやすい。
    そこそこ知っているかもと思っていた「吃音」について、初めて知る内容が多くふむふむと読み進めました。知ってると思い込んでいたなぁ。当事者じゃないと症状に目が行きがちだけど、当事者の方々がどんなことを経験しているか、どんなことを思うか知れたのが良かった。こういう内容が自分の想像力の材料になると思う。
    その上で自分の体と対峙する大切さを説いていて、すとんと腹落ちしやすいなぁと。自意識過剰な若い頃に感情的に納得できるかは難しいところですが、若い時に理解していると生きやすくなるだろうなと思います。
    自分の体への解像度を上げるためにメタファーで表現しようというのも面白い提案。わたしの障害はなんと表現するとピタッとあてはまるか考え中です。

  • #きみの体は何者か #読了
    #ちくまQブックス #伊藤亜紗

    新しい出版されたちくまQブックス!ちくまプリマーも好きだったので買ってみました!新書を読むと自分がいかに無知かを知る。「思い通りにならないことが、思いがけない出会いを連れてくる。」
    なんで若いときもっと読書しなかったのなー

  • 普通に暮らしていると絶対に気が付かないこと。誰もが、歳を重ねていくと、自分のカラダは、なんて思い通りにならないと思い知る事になるでしょう。
    自分のカラダを研究し、自分のカラダを好きになろうという本。
    考えようによっては、思い通りにならないことが、思いがけない出会いを連れてくるとまで書かれています。ここまでいければすごいね。

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著者プロフィール

東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。専門は美学、現代アート。東京大学大学院人文社会系研究科美学芸術学専門分野博士課程修了(文学博士)。主な著作に『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『どもる体』『記憶する体』『手の倫理』など多数。

「2022年 『ぼけと利他』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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