アフガニスタンの診療所から (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480420534

作品紹介・あらすじ

幾度も戦乱の地となり、貧困、内乱、難民、人口・環境問題、宗教対立等に悩むアフガニスタンとパキスタンで、ハンセン病治療に全力を尽くす中村医師。氏と支援団体による現地に根ざした実践から、真の国際協力のあり方が見えてくる。テロをなくすために。戦乱の地での医師の実践。
解説=阿部謹也 「アフガニスタンと日本」


今、内外を見渡すと、信ずべき既成の「正義」や「進歩」に対する信頼が失われ、出口のない閉塞感や絶望に覆われているように思える。十年前、漠然と予感していた「世界的破局の始まり」が現実のものとして感ぜられ、一つの時代の終焉の時を、私たちは生きているように思えてならない。
強調したかったのは、人が人である限り、失ってはならぬものを守る限り、破局を恐れて「不安の運動」に惑わされる必要はないということである。人が守らねばならぬものは、そう多くはない。そして、人間の希望は観念の中で捏造できるものではない。本書が少しでもこの事実を伝えうるなら、幸いである。
(「文庫版あとがき」より)

「本書によって私たちはアフガニスタンの状況だけでなく、私たち自身の姿を見ることが出来るだろう。」――阿部謹也 (「解説」より)

感想・レビュー・書評

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  • アフガニスタンの情勢を普段は一考だにしないのに大きなニュースとなるとその字面だけ追って、想像できる範囲内で断定する日本人。中村氏曰く「ノリとハサミでつないだような議論」に、私は違和感を覚えていた。価値観の押しつけ、ヨーロッパ近代文明の傲慢さ、自分の「普遍性」への信仰が、いかにアフガニスタンで暴挙を振るい、その土地を、無辜の人々を蹂躙してきたか。日本では見えにくくなっているものを知るために、この本はあらゆる人に読まれる必要がある。行動してきた人だから云える言葉にあふれている。「もともと人間が失うものは何もないのだ」これは中村氏だから発せられた言葉だ。

  • 中村哲さん死亡の報せをきっかけに購入した1冊。

    自分たちが当たり前のように感じて不思議にも思わないことを、淡々とした事実ベースで根底から覆してくれる、そんな中村さんのストレートな表現に心打たれると同時に、深い共感を覚えた。

    「人がやりたがぬことをなせ。人のいやがる所へゆけ」

    中村さんのこの決心が、何よりも心に響いた。

  • 中村医師のこの行動力の源泉はなんなのか。あえて難しい方、厳しい方を選択し、進んでいく。そこには本当に困っている人がいるが、他の誰も行かない。
    短期的な成果を求める多くの国際協力チームとは対極にあり、地元の人の育成まで含めた長期的なビジョンを実践する。あの朴訥とした中村先生のどこのそのパワーがあったのだろうか。
    中村医師のことは知ってはいたが、実際の活動は知らなかった。現地でハンセン病の治療に携わり、さらに近年では自ら重機を操縦して灌漑をつくる。
    本当の国際貢献の在り方を知るとともに、我われがいかに無知で無関心であったか、恥じる思いが沸き起こる一冊であった。

  • 自分たちの主義や思想が正しいと思って疑わない先進国の傲慢さと戦い、砂漠に水をまくような支援活動に命を捧げた中村氏の言葉は重い。

  • 12月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_search/?amode=2&kywd=4311487211

  • 多民族国家、テロ組織の温床、イスラム国家、オリエンタリズム、アラビアンナイト…ほんとうに、私はこの辺りの地域について、わからない。

    中村哲さんが亡くなり、その活動や信念に触発されてこの本を読んだ。やはり、歴史的、政治的な背景はなかなか理解できなかった。とにかく日本と状況が違うのだ。おそらく、現地に行って生活してみないとわからないことなのだ。そのあたりのことは諦めて最後まで読んだ。

    この本はアフガニスタンでハンセン病治療にあたった10年間の活動を記録したものである。ただ、ハンセン病治療だけを記録したものではない。むしろ、中村哲さんがアフガニスタンに降り立ってからの10年間で得た「人間の根源とはなにか」を日本人に問う哲学書のようなものと感じた。

    後書きにある「人が守らねばならぬものは、そう多くはない」という言葉を忘れずに生きていきたいと思った。国家だの政治だの経済だのネットだの、大局を見ると正しいことがわからなくなってしまう今の世界で、結局は個人が何を守りたいのか、そのことを絶対に見失いたくない。また、理解できぬ相手だからといって、一方通行の価値観を押し付ける人間にも絶対になりたくない。ボランティアや国際協力で一番大事なことは何か。人を助けるということはどういうことなのか。この本は中村哲さんの実体験をもとにそういったことを伝えようとしている。

    私にとって、生涯にわたって読み返したい大切な本になった

  • 亀岡図書館では、この本っが学童書のコーナーに置かれている。なぜ?漢字のほとんどにルビが振ってあるから?笑
    さて、この本、何かの小説で出てきたのをきっかけに借りてみたんだけど、内容は1992年出版のものだけど中東の世界を医療の現場の目からすっごく分かりやすく紹介されており、なぜアメリカを嫌っているのかも十分にこの本だけで理解できます。
    アフガンといえばついつい映画ランボーの世界やフセイン率いる湾岸戦争、911のビンラディンを思い浮かべるけれど、イスラム教のなんたるか、郷土、民族、集落など、この中東がなぜ国境という得体のしれないもので区切られてしまったがために無駄な抗争が起こったのかもよくわかる。
    らい病根絶という途方もない目標に活動されている医師団やNPO、多くの国際的な救済組織も現場目線から捉えるとこういうことなんだなぁと考えさせられた。ボランティアと言えば響きはいいけれど、その多くが親切の押し売りでこれはアフガンに限ったことではなく災害地に押し掛ける国内のっ現状でも迷惑千万な話をよく聞いたりする。
    最後のまとめはありがちでありながらも日本国民の民度の低下はアルガン人にも劣るなぁと痛感する。
    作られた小説ばかりでなく、時にはこんなドキュメンタリーを読むのは必要と再認識した。

  • 中村哲さんの活動をまとめた自伝的著書。

    相手のためにととった行動が相手にとっては余計な事とは往々にして。相手に寄り添い理解することの大切さを。
    また、欧米列強がアフガニスタンに何をもたらしたか。テロは悪か。イスラムは悪か。悪を生み出したのはどこか。そこは悪ではないのか。強者が正義なのか。

  • 国際理解、支援、協力といった華々しい言葉がいかに空虚なものであるか。中村哲さんが現地でやってきたこと、感じてきたことを目の当たりにし、「先進国」が「発展途上国」に近代的な価値観を押し付けながら正義と民主主義の名の下に殺戮を繰り返してきたことがよくわかった。
    ボランティア=立派なこと、みたいに教育されるが、本書を読むとそれが本当に現地に歓迎されるものなのか、その中身、本質が問われていることを感じる。国連に対するイメージも大きく変わった。

    本書ではらい患者への取り組みがメインに書かれているが、ここから井戸を掘って農地を開拓して…どうしてそこまで?と思うようなことまでやってきた中村哲さんの内面をもっと知りたいと思う。
    心よりご冥福をお祈りいたします。

  • 久しぶりに強烈な本を読んだ。
    この本は1993年に出版で、ソ連によるアフガン進攻から撤退後の時期の10年に渡るハンセン病治療への取り組みが中心だ。有名な用水路と緑化の取り組みはまだ出てこない。
    中村医師のことはニュースで知っている程度だったが、文体から感じる高い知性と教養。病気だけでなく差別にもさらされている弱者と共に同じ人間として生きる覚悟。その一方で長期的な戦略性と柔軟な行動力。そして現実を冷徹に直視するリアリズム。
    何事も時間がかかると長期的に考えているから、慌てず騒がず現実を冷静に判断し、着実に一歩ずつ進むことが出来るのだろうか。

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著者プロフィール

1964年福岡県生まれ。九州大学医学部卒業。国内の病院勤務を経て、1984年パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールのミッション病院ハンセン病棟に赴任し、パキスタン人やアフガン難民のハンセン病治療を始める。その傍ら難民キャンプでアフガン難民の一般診療に携わる。1989年よりアフガニスタン国内へ活動を拡げ、山岳部医療過疎地でハンセン病や結核など貧困層に多い疾患の診療を開始。2000年から、干ばつが厳しくなったアフガニスタンで飲料水・灌漑用井戸事業を始め、2003年から農村復興のため大がかりな灌漑事業に携わる。同年、「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞。2019年にはアフガン政府から名誉市民権を授与された。同年12月4日、アフガニスタン・ジャララバードで武装集団に銃撃され、73歳で命を落とす。

「2020年 『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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