タナトスの子供たち: 過剰適応の生態学 (ちくま文庫 な 11-7)

著者 :
  • 筑摩書房
3.19
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本棚登録 : 110
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480420916

作品紹介・あらすじ

男どうしの恋愛やセックスを素材とした女性向けの小説やマンガ=やおい。少女たちはなぜ、こうしたものに惹かれるのか。この分野の創始者をもって任ずる著者はそれを、ディスコミュニケーションのコミュニケーションと位置づける。そしてその奥にある、滅び(タナトス)に向かう欲望とは?大評判となった『コミュニケーション不全症候群』に続く「やおい」論。

感想・レビュー・書評

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  • 『コミュニケーション不全症候群』(ちくま文庫)の続編で、著者自身が元祖となった「やおい」に惹かれる女性たちの心理と、彼女たちをそうした場所へ向かわせた社会について論じています。

    著者は『コミュニケーション不全症候群』で、趣味の世界に閉じこもるオタクや、世間から値踏みされる視線によって摂食障害に陥っている少女たちの生態を明らかにするとともに、彼女たちが世間のまなざしにさらされることから逃れるために構築した、同性愛的な耽美の世界について論じていました。本書も同じような視点から、さまざまなBL作品の例を引きつつ、議論が進められていきます。

    さらに著者は、彼女たちを囲い込もうとする常識に対して、「私たちは滅びてゆくのかもしれない」という爆弾を投げつけます。「タナトスの子供たち」というタイトルはこの結論からきています。

    中心となる主張はそれなりに興味深かったのですが、とっ散らかった文章で少々読みづらいように感じてしまいました。もうちょっと短くまとめられなかったのか、という気がします。

  •  栗本 薫は中島 梓(なかじま あずさ)名義で、評論活動などもしていた。栗本薫の「グレン・サーガ」シリーズは正伝130巻・外伝21巻の大作として特に有名である。

     男性同性愛を題材にした漫画や小説に夢中になる女子について、実に詳細に考察しているのがこの本の内容である。興味があるわけではないのだが、著者の知識や見識、情報量の多さには驚かされた。

  • やおいとは何か? なぜ少女たちはやおいにハマるのか?


    「やおいの創始者」栗本薫こと中島梓が、フェミニズムやジェンダー、アダルトチルドレンなどなど、さまざまな事柄を引き合いに出しながら論じるおたく評論。


    なにしろ、フェミニズムやら多重人格障害やら依存症やら、いろんなところに飛び火していくので、ぼんやり読んでいたら頭が混乱してくる。それに加えて、論調がとてもエモーショナルで、目の前で滔々と演説を聞いているような気分。


    とはいえ、やおいについて感じたことのある疑問への解説は興味深い。なんで男同士なのよ?とか、なんでカップルの関係性が固定してるのよ?とか。もちろん、ここに書かれている解説が絶対正解というわけではないけど、「そういう見方もあるか」と納得はできる。


    インターネットに掲載されていたものをもとに作られているので、「(爆)」とか「(笑)」とかが文中に入っていて、ちょっとうっとおしいのがナンだが、この分野、いろいろな意味で深いことは、よくわかる。


    でも体力のある時じゃないと、読むのしんどいかも。



  • やおいはなぜやおうのか。

    やおい=美少年同士による性的ストーリーを愛する人たち。

    自己ツッコミ的(おい)とか(爆)が文中に多くて最初はいらいらするが、言ってることはそれなりに面白い本。


    やおいで出てくる男性同士のストーリーの典型:
    1.強姦
    2.ウケ(されるほう)が射精させられる
    3.アナルセックス
    4.愛し合うようになる
    何故このような定型が定まったのか?
    これらは実際のホモセクシャルのそれとは異なる「ファンタジー」だという。著者はこのストーリーを、上記の行為殆どは常に一方的という点で「ディスコミュニケーション」と断じる。同質同士だからこそディスコミュニケーションでコトが始まる。逆に男女は最初から異質だから、始まるストーリーはコミュニケーションになる。コミュニケーションは現実的で、ファンタジーにならないという。

    やおうひとたちは、ディスコミュニケーションを念頭においたファンタジーに身をおくことで安心する性質なのではないかと主張する。

  • 賛否両論、色々言われている本ですが、でもいまだこの本を超える腐女子評論は出ていないような気がする。

  • ちょっとした興味で。

  • 読んでてぞくぞくするほど面白かった評論。「やおい」本に対して抱いていた疑問(嫌悪感、ではない)が、ちょっとだけ解けた・・かも。
    全ての論旨に納得したわけではないけど、かなり共感するものがありました。
    「やおい」を選んだ人ではなく、同じ問題を共有しつつもそれを選ばなかった人にも、思いを馳せながら読んだ。

  • 文体が読みづらい。
    が、やおい書きならば一度目を通すべきか。是非は別だが。

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