トーベ・ヤンソン短篇集

  • 筑摩書房 (2005年7月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784480421197

感想・レビュー・書評

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  • シビアな話や孤独な話ばかりなのだけど、冷たい雨のような文章に、不思議と心地好さもある。
    甘いものだけで出来ている人生はないものね。
    「聴く女」がとりわけ見事。

  • ムーミンシリーズで知られる作家の短篇集。完全に大人向けである。文体は切り詰められ、きりりと冷たいそっけなさを感じさせるが、それがむしろ心地よい。
    自由と孤独、そして人生の悲哀のようなものが、少ない言葉からバシバシ伝わってくる。

  • トーベ・ヤンソン短篇集
    著作者:トーベ・ヤンソン
    発行者:筑摩書房
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    大人にも読んでほしい短篇。

  • 多く説明せず、読み手の解釈や感性にゆだねる感じの作品が多い。なので、中には自分の感性がうまく寄り添えず、内容を捉えられないと感じる作品もあるが、静かにいいなと感じられる話が多かった。「愛の物語」「ショッピング」「植物園」「時間の感覚」あたりが好きだと思った。
    (2014.8.31)

  • 古本屋で見つけた本
    一遍ずつがとても印象深く、
    この人はこういう文章を書く人だったのかと、世界が広がって嬉しくなった
    全て答えのない終わり方で、それでいてモヤモヤとはしない心地よさ
    ムーミンに流れるあたたかさや寂しさ、面白みもありながら、また違った美しさのある物語

  • 筑摩書房から出ている全8冊の『トーベ・ヤンソン コレクション』からセレクトされたアンソロジー。2005年刊。
    ほかに『トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白』(2012年)が出ており、編・訳の冨原眞弓によると、こちらは「ほっこり系」で、『黒と白』は「ディープ系」らしいのだが、どうしてだいぶダークな内容である。

    書かれたのは1972年から1991年。
    『ムーミン谷の十一月』が1970年なので、まさにポストムーミンの時期であり、ムーミンでは書けなかった内容になっていると思われます。

    特に、島暮らしの生活に出現したリスによって孤独がかき乱される『リス』が秀逸。

    旅の話を書いていても旅行先のすばらしい風景ではなく、空港でさまよい途方にくれる物語に共感する。

    全般的に孤独に閉じこもった人々が描かれているのだけれど、彼女の作品には嵐の中にうずくまっているような不思議な安らぎのようなものがある。

    どちらの短篇集もちくま文庫オリジナルのもので、すでに絶版状態のようなので『トーベ・ヤンソン コレクション』に手を出してみようかと思う。


    以下、引用。

    27
    大好きなヤンソンさん。ほかの人のことを気にしない、
    どう思っているのか、わかってくれているのかなんて気にしない。
    そうすれば語っているあいだ、ただ物語と自分自身だけが問題になる。
    それでこそ、ほんとうの意味で孤独になれるのですね。

    33
    ウロフ叔父さんによると、神さまとイエスさまはゆるしの独占権(コピーライト)をもっている。ふつうの人間のゆるしなんかどうってことないという意味らしい。

    55
    八月が暗い夜を引きつれてやってきた。夕暮れが樹の幹を赤くそめるころ、わたしたちは家に走って帰る。暗闇が迫ってくるのはみたくない。

    90
    机の上には白紙の束が整然と横たわる。いつもどおり横に鉛筆を従えて。文字の記された紙は裏返されて机の上に伏せられる。言葉たちを下向きに寝かしておくと夜間に変貌するかもしれない。

    101
    島を包みこむ雨と夜の沈黙のささやきに耳をすます。

    103
    海が美しいなどというのは永遠の戯言だ。

    162
    「ヴェステルベリ、あんたは甘やかされて駄目になっとる。いかに多くのものを無償でうけているかがわかっとらん。これからもあの至福の蓮の花を見るがいい。時間があるうちに見ておけ。そして感謝するんだ。あんたはなにかの本質(イデー)を闘って奪いとるという必要に迫られたことがない。わたしがいうのは、信じる価値のあるなにか、守る価値のあるなにかを探して求める必要、という意味だがね」

    164
    「この家ではな、時間というのはすぎていくもの、ただそれだけだ。ここでは時間はもう生きていない。そこいらの本と同じだ。わたしははっきりとしたイメージが欲しい、それも大至急でな。人がなにを希望、なにを探し求めているのか、すべてがどうなるのか、たいせつなことはなにか、そういったことについての明確なイメージが欲しい。大事なことなんだ。ほんとうに意味のあることに到達するために探し求める、つまりなんらかの答えをな。支持しうる最終結論というやつだ、わかるか?」

    225
    「サマセット・モームの小説に、カプリの高級ホテルで病気になって死んだ人がいて、その棺が……」

    238
    わたしは座って〈旅の本質(イデー)〉について考えた。つまり、なにものにも縛られずに途上にあるということ。背後に残してきたものに責任を負うことはなく、前途に待ちうけているものについては準備も予測も叶わぬ状態。すばらしい平和。

    262
    この丸窓は街と港と氷の下の海流をみつめる大きな眼みたいね、とイェルダ伯母は思う。

  • ポジティブはネガティブな洞察力で出来てるのかな!?

  • ムーミンが、かわいくて美しいファンタジー童話にとどまらず、冷たさと暗さがある、その理由が垣間見えるような短篇たち

  • 何かが起こるのが物語ですが、その中で「その日はもう何も起こらなかった」という一文が美しく感動的に響きました。

    「リス」など、不毛な物思いや、疑心暗鬼、妄想にとらわれた人がよく出てきます。

    おそらく認知症になったであろう女性が自分に関わる人の系図を書き続ける「聴く女」に引き込まれました。

    研ぎ澄まされ、透明感を帯びた文章。
    北欧の時間感覚、景色の色が、そこから浮かび上がってきます。

  • 子ども時代、創作、奇妙な体験、旅、老いと死の予感、の5つのテーマで集められた20篇。
    一人きりで暮らす島にどこからともなく一匹のリスが現れ、自己完結していた世界が大いに乱される「リス」が◎。ヤンソンの描く、たやすく飼いならさたりしない登場人物(動物)たちには、いつもハラハラさせられてしまう。
    お気に入りの場所を巡り火花を散らす年配の二人の紳士「植物園」もそうだ。大切な体験を話してきかせるおじさん達の一見理解しにくい友情が愛おしい。
    少年時代の憧れと結末をシニカルに描く「汽車」や、年老いて記憶力が衰え始めた女性が、これまで知りえた人間関係を相関地図に書き起こす、という侮ってはならない伯母の話「聴く女」も非常に面白かった。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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