- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480421265
作品紹介・あらすじ
「かなしき女王」とは、ケルト神話の女戦士スカァアのこと。スカイ島の名の由来となったとされる、この美しく猛々しい女王と英雄クウフリンの恋と戦いの物語こそ、スコティッシュ・ケルトを代表する物語である。輪廻転生を信じる土着信仰ドルイドと古代キリスト教が入り交じった幻想的な短篇12篇に、新たに戯曲「ウスナの家」を収録。いずれも松村みね子の名訳による。
感想・レビュー・書評
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【収録内容】
『海豹』
『女王スカァアの笑い』
『最後の晩餐』
『髪あかきダフウト』
『魚と蠅の祝日』
『漁師』
『精』
『約束』
『琴』
『浅瀬に洗う女』
『剣のうた』
『かなしき女王』
戯曲『ウスナの家』
解題『アイルランド文学翻訳家 松村みね子』 井村君江
松村みね子翻訳年譜一覧 井村君江・編
解説『ケルトの幽冥』 荻原規子
現代ファンタジーのようなエンタメ性は無いので、人によっては面白くないと思いますが、スコティッシュ・ケルトの宗教観が伝わってきます。Amazon.co.jpで『キリスト教とケルト伝説の素敵なマリアージュ』というレビューで、「一言で言うとキリスト教とケルト伝説の美しい融合だろう。前者に傾倒していることを思わせるようであり、後者の方もしっかり堪能できる。それも全く無理がない。」と書かれていましたが、同感です。破滅的な話が多いと感じました。
松村みね子氏の訳は、古風で読み辛いですが、現代的な訳では良さは伝わらないでしょうね。文章表現はとてつもなく美しい。フィオナ・マクラウド氏の残酷だが妖艶なスコティッシュ・ケルトと、松村みね子氏の大正の幽玄な日本語訳が渾然一体となった世界に連れて行かれそうです。
井村君江氏の解題は、フィオナ・マクラウド氏の事だけじゃなくて、松村みね子氏の事も知りたかったので、松村氏に関する事柄が沢山書かれていてとても勉強になりましたし、明治~昭和初期の文壇の息吹が感じられる名解説でした。
荻原規子氏の解説も秀逸。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ウェブ媒体にて読了。基督教の気配に満ちていながら、掘り下げられるのとはまた違う、自然の中の大きなものーーずっと信仰されてきた古来の神々ーーが、損なわれずに共生しているのがケルトらしく好ましい。基督教を受け入れながら、従来の、古来の神々を悪とはしない。松村みね子の訳も、その大いなるおそろしさを少しも損なっていないと思う。
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あざらしが登場するのはお土地柄?
滅びゆく運命のケルトの民の物語は、美しく幻想的で、妖しく哀しく暗いムード。キリスト教と異教が入り交じった奇蹟物語や破滅型の恋人たち。悲恋率100%。女王スカァアに赤丸チェックだ!
フィオナ・マクラウド(Fiona Macleod)
(1856-1905)本名ウィリアム・シャープ。英国スコットランドのグラスゴー生まれ。若い頃からゲールの幻想物語に興味を持ち、1892年『異教評論(ベーガン・レヴュー)』出版を皮切りにケルト文化復興の活動を始める。シャープ名でオカルト研究に従事する一方、マクラウド名で幻想物語を発表。死後同一人物であることが明らかにされた。他に『ケルト民話集』など。
松村みね子(片山廣子)が愛したアイルランド作家ランキング(解題:P300より)
①ジョン・ミリントン・シング
②イザベラ・オーガスタ・グレゴリー(レディ・グレゴリー)
③ウィリアム・バトラー・イエイツ
④フィオナ・マクラウド
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(目次)
※海豹(聖者+あざらしの父と人間の母をもつ少女)
※女王スカァアの笑い(英雄クウフウリン←♡女王スカァア)
※最後の晩餐(幼子+キリスト+十二使徒)
※髪あかきダフウト(王×神族の妻=不思議な娘)
※魚と蠅の祝日(聖者+生物)
※漁師(老婆+キリスト)
※精(キリスト教の若僧×異教の娘+樹の精+老聖者)
※約束(仙界の王+人の王×妖精の女)
※琴(人質の王子×異民族の王女←♡琴手の夫)
※浅瀬に洗う女(盲目の琴手+死の予言をする妖精バンシー)
※剣のうた(海賊の強襲)
※かなしき女王(英雄クウフウリンに失恋した女王スカァア+捕虜の男二人)
※ウスナの家(『琴』に関連する戯曲)
解題『アイルランド文学翻訳家 松村みね子』井村君江(妖精美術館館長・比較文学専攻)
松村みね子翻訳年譜一覧
解説『ケルトの幽冥』萩原規子 -
ふうん、著者はPNを女性名にしたが、男性だったのか。それよりも訳者、どこかで聞き覚えがあると思った。卒業論文が堀辰雄だったのに、失念していたなんて!?格調あるのはわかるけど、難解でした。
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珠玉の名訳、松村みね子版です
^^
うちにあるのと版が違うのですが、やはりかなづかいも旧かなで。
ケルトがどうとか、つべこべ言わずに読んで欲しい。土着の強さと研ぎ澄ました言葉の美しさが融けあっている、近年にない傑作です。