ザ・フェミニズム (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
3.32
  • (13)
  • (29)
  • (63)
  • (9)
  • (4)
本棚登録 : 357
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421494

作品紹介・あらすじ

決着をつけましょう-。当代を代表するフェミニスト二人が、フェミニズムについて徹底的に語りあった。「夫婦別姓は支持しない。」「リベラリズムはフェミニズムの敵である。」「援交と新・専業主婦は、家父長制につく白アリである。」「老後は女どうしで、という欺瞞。」…etc.今、あなたのフェミニズム観は、根底から覆る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 上野千鶴子さん、小倉千加子さんのお二人が大阪での公開会談・東京での密室会談で話された内容がセリフ書きの形式で記載されている一冊です。

    フェミニズムについて、世間の声やネットで多少見聞きするものの、全く実情や詳しいことを知らないため、少しでも知識として得るものがあればと思ったのが読書動機。
    実際にページをめくってみると「フェミニストとは自称なのか他称なのか」から始まり、お互いの価値観について正面きって意見をぶつけ合う白熱したものだったことが窺い知れる内容でした。

    読後、私が得た「フェミニズムとは?」の問いの答えとしては「わからない(というか前よりわからなくなった)」。それしか得なかったといえばそれまでですが(笑)

    あとがきにもあるように、「共感したり、反発したり」を繰り返しながら読みました。ある点では「ふむふむ、分かる気がする」と思っていても、違う点では「えぇっ、そうかなぁ」と簡単には同意できない内容だったり。

    実際、今の社会では「シングルらしく生きる男性らしい業績を上げられる女性は対等に扱いましょう」という風潮があると(私は)感じているのですが、女性解放が目的だったとして、女性平等は目指すところなのかな? と疑問に思ったりもしました。枠を取り払うばかりが事態を好転させるとは限らない。でもやってみないとわからないのだから、やってみるほかない、と言われてみれば「いやそれはちょっと早計すぎない?」と思ってしまうあたり、私は保守派に分類されてしまうのでしょうか(笑)
    お二人が嫌いな結婚制度も、結果的には今ある不自由な選択肢の中で最も理にかなっているというか、恩恵が大きいから大多数がそこへ入るわけで。

    二人の対談で特に(良くも悪くも)印象的だったのは……
    ・(結婚制度は)「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって特定の異性に対して排他的に譲渡する契約のこと」(p.134)
    ・「過労死を含めて、男があそこまでがんばるのは、「やれば報われる」ということを信じており、かつそれを実際に経験してきてるから」(p.171)
    ・「経済的社会的地位が男女平等になったからといって、まだ解決されない問題がある。その解決されない問題の核心こそがセクシュアリティです」

    読んでいてひとつ思ったのは、「出口も目的もないトンネルを著者たち二人でぶつかり合い、時には手を取り合いながらクネクネと進んでいく様だ」ということ。
    実際に男女格差のある世界に生まれ育った二人だからこそ、男女というものについての問題に意識が向く代わりに、それが無くなった世界というのは想像ができない。
    出口の見えない迷路、トートロジーのようだなと感じました。

    また、割と各所で話の主語と帰結内容がズレる。敢えてそこをきっちりと意識して話していなかったためだろうと思われますが、これが結局は「女性って研究者であろうと話が長ったらしくて効率的でない」と思われる所以になったりしているのかなと思うと同時に、「フェミニストと言っても一人一派なんだ」という知識のない人からすれば、「こういう人たち=フェミニスト」と捉えられているのかなと思いました。
    主義主張が強く、教条的で、女>男と思っている、と。
    (実際には皆が皆そうではないということは、積極的に知ろうとしない人にとっては知りえないことですし)

    また、お二人ともが独立して生きていけるという点においては恵まれた女性であるから、なのでしょうが「専業主婦」を叩きすぎていて、一周回って笑えました。貧困に陥った女性、進学を許されなかった女性、いまだに格差はありますし、そういった女性は働こうにも一人で暮らすだけの生活費を稼ぐことは容易ではありません。そういった女性を「白アリ」だとか「年金の前借り生活者」というのは自由かもしれませんが、だからといって見下していい相手と捉えるのもまた、お二人の言う「女女格差」なのでは……?

    女の敵は男。
    であると同時に
    女の敵は女。
    なんだと痛感しました。

  • (メモ)人間はイデオロギーや理念では動かないが、意図せざる結果として、現実が変化していくことはあり得る、

     結局フェミニズムって何なんだろう、ということが知りたくて読み始めた。分かったのはフェミニスト一人一人にとってそれは違うものである、ということ。ある政策(制度)に反発するフェミニストもいればいいんじゃない、というフェミニストもいる。
     
     例えば上野さんによるとフェミニズムとは「女性解放思想」であって女性の権利を拡張する思想ではない。だから(?)そもそも父権的な制度である議会制民主主義には反対だし、自分の体の性的使用権を1人の異性に排他的に譲渡する結婚制度にも反対。したがって専業主婦という存在はフェミニズムと相容れないとする。上野さん自身の思想はとても一貫していて清々しいほどである。対幻想の上に成り立つ一夫一婦制という生き方以外の生きる選択肢を示すことは多くの女性にとって逃げ道となったのだろう。一つのあるべき道がドミナントに示されている社会において、そうではない生き方をしたい人たち、またはそのドミナントな価値観によって知ってか知らずか被害を被っている人たちに光を当て、それを理論化していくのが社会学の役割の一つなのだなあだと思った。

     ただしフェミニズムが有閑専業主婦のガス抜きにしかならない、と言うことに関しては小倉千加子も上野千鶴子も認めるところであって、多くの支持を受けてなお、実際に生き方を変えていった人というのはやはり少数なのだとか。
     
     ”女性政策”を進める村の市長とか民生委員だとかのおじさんはフェミニズムのことなんて全く理解していなかった。とりあえず女性を重要そうなポストにつけて黙らせておけば良いと思ったみたい。ということについてはすごく良く分かるし、”あたかも独身のように働ける”既婚男性に有利なように作られている競争原理社会(酒の飲み方、性格、身長含めてその人の実力、とかね)と、幼い頃から刷り込まれ、多くの女性が内面化してしまっている「出産・結婚は女のあがり」という女性性は両立するのが非常に難しいのに、その前提を無視して大枠だけを提示した男女雇用機会均等法が多くの女性をすごく苦しめたという視点も興味深かった。(フェミニストって男女雇用機会均等法とか支持しそうに感じるよね、一見。)


     あと、フェミニストが嫌われている/衰退したように見える理由に関しても説明されていた。官主導の啓蒙活動ということに対する反感(多くのフェミニストは官による講演会とかでつながないと食い扶持がなかったのだが。だって結婚していないし研究者だから。)、そしてメディアによる作られたイメージ(メディアの作り手の大部分は中年男性だった。ヒステリックとか論理的でないとかいうイメージを意図的にメディアが植え付けようとして、そしてそれは成功した。このメディアによるイメージ形成の過程を検証したデータもあるらしい)、女女格差ができてしまったこと(特に男女雇用機会均等法によって)など。

     なぜ女女格差ができてしまったことがフェミ衰退の理由になるかというと、女の中でも学歴をつけた人たちがでてくると、職場にはいって上司のオジさんたちに気に入られるためにはフェミニズムを嫌いと言わなければならなかったから。フェミは社会で生きていけるという意識をある程度の女性たちに与えたことで逆に不要になったとの見方もあるが、格差の下の方の女性たちにとってはまだフェミは有用なのかも。


     今後の自分の思想と生き方の関連性について考えていくきっかけになってくれそうな本。上野さんは思想と生き方が矛盾したままいられるのは3年が限度、って言ってるけど。(考え方の違いが原因で大好きだった彼氏と別れるときってこんな感じだよね。私は一年しかもたなかったけれど)
     まあ男社会というけれど重視される能力は職場によって違うわけで、男女関係なくその能力に突出していれば認められる、と信じてその能力をおとなしく伸ばすしかない、というのが私の結論。それともそれは、私が今、「論理性」という最も公平な評価基準であると思われる大学にいる学生だから現実を知らないのか。(いま社会一般に言われている論理性というもの自体昔々に男の人が作り出したものだから女が社会を支配していたらもっと生きやすかったかもなんて思ったりするけれど、まあそれは仕方ない。そんなこと言い出したらきりがないからとりあえず与えられた状況でsurviveすることを考えよう)

    2人のフェミニストは、社会にあたたかいようなつめたいような視線を向ける。フェミニズムの向かうところなんてフェミニストだって定義できない、フェミニズムは一人一派、というのはすごくなるほどなあ。と思った。私が女性で、女性としてどのように生きていくべきかを生涯考え続ける以上、私は私なりのフェミニストで、フェミニズムとは自己定義権の獲得なのだ。私は、だれにも「女であるお前はこうあるべき」と定義される筋合いはない(それがimplicitなものであれ私はそれに反感を覚える)し、女としての正解なんてないんだ、と言ってもらえたようで嬉しかった。(ときには正解と考えられることに向かって進むことが楽で安定した道に思えるけれど)

  • フェミニズムの入門書としてタイトルに惹かれて
    選んだとしたら、確実に失敗する本。
    あ、俺のことですね。

    著名フェミニストであるお2人が時事問題を絡めて
    フェミニズムについて語り合うのですが、まあ予備知識がないと
    文字通りちんぷんかんぷん間違いなし。

    フェミニズムの多様性はある程度理解してたけど、

    「フェミニズムは一人一派」

    って、あんた方が言っちゃったらおしまいでわ…。
    ちなみにザ・フェミニストってイメージの上野センセは
    実はフェミ界では亜流らしい。へぇー。

    対談本の良さはとっつきやすさなのだが、
    この2人関西弁なので非常に読みにくいのよね…

    まあ批判ばかりしましたが、最後まで読めたので
    それなりに面白かったということでしょう。
    多分読む順番間違えた。

    フェミニズムに予備知識がある方なら、どうぞ。

  • 上野千鶴子と小倉千加子の対談です。

    長く「フェミニズムの旗手」と呼ばれてきた二人の対談なので、フェミニズムの教科書的な議論にとどまるはずもなく、日本のフェミニズムがたどってきた特異な歴史を踏まえながらの議論となっています。両者の歩んできた具体的な現実にそくした議論となっているだけに、議論の切れ味が鋭いと感じる一方、両者の依って立つ理論的な背景が見通しづらいという印象もあります。

    もっとも、そうした一枚岩の「ザ・フェミニズム」を求める読者の蒙を啓くという点で、刺激的な対談といえるのかもしれません。

  • 残念だ。著者の主張に、納得も共感もできないままだった。僕が男で時代も違うから、立場が違いすぎる、と言うのは大きいと思う。ただそれを差し引いても、世の中の多くの人が選ぶ結婚や専業主婦という選択肢を、わからない理解できない、として切り捨てる姿勢は、思想家としてどうだろうか。思考停止ではないか。そうした、思想としての煮詰まってなさが、一番残念に感じられた。他の著書にあたれば、もっと考えがほりさげられているんだろうけど、まずは興味を失してしまった。残念。

  • フェミニズムのカリスマ上野千鶴子さんと小倉千加子さんの対談
    20年近く前の対談だが、フェミニズムがいまいち理解できていない私の理解を一気に促進してくれた
    東電OL殺人事件の被害者の生活が男女雇用機会均等法の矛盾を体現しているとはなるほどと思った
    「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって特定の異性に対して排他的に譲渡する契約のこと」という上野千鶴子さんの結婚の定義が痛快
    お2人の対談が漫才のようで読みやすい

  • おもしろく読んだ。対談形式なので読みやすいかなーと思ったが割とそうではなかった。当のおふたりの女性嫌悪が根深い感じもして、なんだかなーと思うところもあり。あとLGBTの議論が活発になり市民権を得た今読み返すと、クィア理論のあたりは引っかかるものを感じる。クィアは思想ではなく有りようなので認める認めないは的外れなものに思えてしまう。ともあれ興味深い一冊でした。

  • [ 内容 ]
    決着をつけましょう―。
    当代を代表するフェミニスト二人が、フェミニズムについて徹底的に語りあった。
    「夫婦別姓は支持しない。」
    「リベラリズムはフェミニズムの敵である。」
    「援交と新・専業主婦は、家父長制につく白アリである。」
    「老後は女どうしで、という欺瞞。」…etc.
    今、あなたのフェミニズム観は、根底から覆る。

    [ 目次 ]
    大阪公開対談―小倉千加子、六年の引きこもりから復活すること(「フェミニスト」とは誰のことか;女知事の登場は「フェミニズムの勝利」か?;林真理子はフェミニストか;代議制民主主義ほどフェミニズムから遠いものはない;少子化は女の復讐か ほか)
    東京密室対談―他のフェミニストたちにはとても聞かせられないこと(主婦のフェミニズムとは?;ウーマンリブとフェミニズム;八〇年代フェミニズムの正体;専業主婦とフェミニズムは結託できるか;性的自由は自由の根源 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 上野千鶴子さん、小倉千加子さん、両者ともに辛辣で歯切れもよく、お互いに遠慮することなくフェミニズムを語っている。
    フェミニズムとウーマンリブの違いがよくわかった。
    結婚観や世間で一般にフェミニストと呼ばれている人達でも一人一派というように微妙に考え方も違う。
    実際にこれが正しいという定義はないのだろう。
    本書で紹介されている吉澤夏子さんや石原里沙さんの本も読んでみたい。

  • 2002年の本かよ!よみながら薄々昔の本棚と気づいてはいたのですがまさか10年前とは。
    対談がかかれているのでとっても読みやすい。視聴者にきちんと難しい言葉には注を入れるし。

    上野千鶴子さんが「フェミニズム」について語ってる本ってはじめてよみました(そもそも上野さんあんまり読んでない)。(反省なう。多方面から起こられる気がする。)。
    おおざっぱにいえば小倉さんのほうが共感できるというか実感に近い印象。いや、VERSUSで話してるわけじゃないんであれですけど。

    結婚や子どもという観念についてはまさしく。
    でも彼女たちの会話は学問だったりで成功した人たちであって、彼女たちがモデルとして多くの女性やフェミニストを救うわけではない。

    彼女たちのいう説に共感して「そうそう」と思うだけでは彼女たちが言っていたような結局公演を聞いても実生活に何も活かせないような、すっきりするためだけに彼女たちの公演を聞きに行く人たちと何ら変わらない。

    小倉さんの他の本を読もう。
    上野さんも勿論。
    彼女たちがどのようにフェミだったりリブ、セクシュアリティについてかたってるのか読む。。

全40件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上野千鶴子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小倉 千加子
遠藤 周作
ジョージ・オーウ...
三島由紀夫
綿矢 りさ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×