素粒子 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
3.84
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本棚登録 : 709
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421777

作品紹介・あらすじ

人類の孤独の極北に揺曳する絶望的な"愛"を描いて重層的なスケールで圧倒的な感銘をよぶ、衝撃の作家ウエルベックの最高傑作。文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル-捨てられた異父兄弟の二つの人生をたどり、希薄で怠惰な現代世界の一面を透明なタッチで描き上げる。充溢する官能、悲哀と絶望の果てのペーソスが胸を刺す近年最大の話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 相対性理論と量子力学による現代科学のパラダイム・シフトは20世紀を物質主義的価値観に塗り替えた。それは宗教的抑圧からの解放に繋がることでサド侯爵的性の快楽と同調し、しかしながらも性の自由は競争原理を呼び寄せる事で逆説的に性の抑圧へと結び付く。性への強迫観念に囚われたブリュノと禁欲的な生物学者ミシェルという異父兄弟の生涯を濃厚な性描写と情報量で描きながら、人生に対するやり切れない諦観を滲み出させている。ニューエイジの怨霊を駆逐し、ハックスリーの亡霊を21世紀に呼び寄せる本書は、打ちひしがれる様な凄い本。

  • 作者の掌の上できれいに転がされた感じがする。一本の小説の中で何回、不幸と一瞬届きそうになる幸福の間を行ったり来たりしただろうか。これでもかというくらい振り回され、同情を誘い、もはや「素粒子」というタイトルが匂わすSF的結末への期待をも忘れて、途方もなく哀愁漂うなけなしの性愛物語として十分満足だ、と観念しかけた頃、ついに結末がやってくる。そのカタルシスたるや、圧巻である。一切の苦悩から解放されたときのような浄福を自分は味わった。自由と進歩主義に対するにべもない唾棄には思わず笑ってしまったが、このとき、登場人物たちに対する自分の数々の共感と同情も一緒に笑い飛ばされてしまった。それがまた爽快。ウェルベックの最高傑作と呼ばれるのも納得。作者の思想に同意しない人でも楽しめると思う、というかそれを狙いに行ってるだろうな。

  •  フランスで有名なこの人、私の本好き友人に聞いてもその意見は「素晴らしい」か「糞」かの真っ二つに分かれるのが笑えます。地名やら商品名やら企業名やらをとにかくディテールに渡って細かく書いていってキャラクターを描写するというのは私にはすごく面白いと思うけど、根底に流れる、決して消えない、主人公の(ということはあるいは作者の?)徹底的な悪意に満ちたモノの見方にはかなり疲れます。
     人物から流行現象まで様々な対象物に対して敢えて客観的・統計的な描写が並びますが、時にそれが大いに主観が入った幼稚な攻撃に形を変えたりもします。とはいえ、主人公(他の作品にも常にこのタイプは出てくる)の毒を含んだ呟きはたまに的を得ていて、どきっとさせられるのです。「人は他人との関わり合いのなかで、自意識を持つ。まさにその自意識こそが、他人との関係を我慢できないものにする」。
     全編通してとかく女性への攻撃が多いのは典型的なコンプレックスの吐き出しでしょうか。それとも作為的にあそこまで意地悪な表現を取っているのか?もっと奥が深いのか?? と思わせられ、ページが進んで行きます・・・。
     読後感は悪いのに、何故かはまる。

  • 中心人物ミシェル・ジェルジンスキ(及び半ばSFな彼の研究)についての行と、そのアジテーター役を担ったハブゼジャックの仕事についての行は面白かった。
    その一方で、ミシェルの異父兄、ブリュノを追いかける章は苦痛以外の何物でもなかった。
    メロドラマの世界観に生き、下半身で思考して、挙句精神を病む(訳者あとがきによれば「精神的、性的悲惨」)キャラクターの描写が延々と続くしんどさは、筆舌に尽くし難い。

  • テーマは『ある島の可能性』とほぼ同じ、というより、あちらが、この『素粒子』の続編みたいなものらしい。
    若い時分に読んだらそれこそ死にたくなるような気分にさせられたかも。なんともやるせない小説。
    女たちが次々自殺するがそれもご都合主義ではなく、切実さとリアリティを持って感じられた。
    非モテ系の話と聞いていたけれど、作家のポートレイトを見る限りでは意外にも美男子(私がそう感じるだけ⁉︎)
    訳者あとがきによると、主人公のひとりブリュノの人生は、ほぼ作家の人生と重なるそうだ。数度にわたる精神科入院など、驚いた。
    ほぼデビュー作であるこの作品は、なんというか、怒りや絶望、作家の痛みが直に伝わってくるようで、読んでいて辛かった。『素粒子』の成功である程度余裕を持って書かれた『ある島の可能性』はこちらより完成度も高いと思うし、楽しんで読めたのだけど。

  • ウエルベックの世界観があまり好きではないので拒否反応が出ないか危ぶんでいたのだけれど、語り手が『闘争領域の拡大』のときより落ち着いているので抵抗なく読めた。悲しい兄弟の先行きも気になったし。それでもまあ、個人のケースを拡げに拡げて「現代人てやつは!」って詠嘆されてもねえ、というのが第一の感想。第二の感想は、え、『幼年期の終り』? というところか。

    この小説が一部で歓迎された、というのが頭では理解できるんだけど、実感はできない。かと言ってすごく良かったという読者に聞いて回ることもできないので、ネットで感想を探すことにする。ほかの人の感想を知りたくなる本は私の中で良い本の一つの基準なので、うーん、良い本なのかな…


  • ミシェルウェルベック 「 素粒子 」 

    新しい人間学。形而上学(多数の人が共有する世界観)の変異から「人間とは何か」を考察している

    ショッキングなエピローグ。素粒子レベルまで物質化した人間像。性別と死がない新人類。未来の新人種が三人称的に語る構成。

    面白いけど 性描写がしつこい。

    祖母の遺骸や恋人との再会のシーンは、人間とは何か 考えさせられた

    人間とは何か
    *心の内に〜善と愛を信じることをやめない
    *生きることは 他人の眼差しがあって初めて可能になる〜遺骸となっても 生きていた頃を想像できる
    *お互い敬意と憐みを抱くのが人間らしい関係


    時代背景
    近代科学が キリスト教道徳を一掃し、男女の違いが 個人主義、虚栄心、苦しみ、憎しみなど不幸の源となっている

    アナベルとの再会。心地よさ、暖かさに包まれて〜世界の始まりにいた〜時間の根が生えてくる場所を見た〜あらゆるものの内に終末を見た

    空間に関する新しい哲学原理
    空間は自身が精神的に作り上げたもの〜その空間内で、人間は生き、死ぬことを学ぶ。精神的空間の中で別れ、遠さ、苦しみが作り出される

  • 2020年4月28日BunDokuブックフェアで紹介されました!

  • 高校教師の兄と科学者の弟、異父兄弟がその身を滅ぼしていく過程が描かれています
    20世紀にかけて欧米で起こった社会制度、家族制度の変化、性の自由化の流れがわかり易く描写されています。
    下ネタだらけなので苦手な人は読まない方がいいです

  • 3/11

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞受賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。『ある島の可能性』など。

「2019年 『セロトニン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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