- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480422019
感想・レビュー・書評
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<「流浪」と「反骨」をあわせて>
からだの「あな」(鼻や尻や耳などの)をふだん、「穴」と意識したことはほとんどなかったように思う。鼻に指を突っ込んで、その腹に血が付いて慌てるようなことがあっても、呼吸したり、音を鳴らしたり、排泄したりする「穴」と生きていく上での密接な自分とのつながりを、私は今まであまり考えたことがなかった。
だから、金子光晴が『流浪』のなかで、「人間には穴がある」と書いているとき、そうだった、俺にも「穴」があったんだと思いおよぶ。彼はさまざまな「穴」にうごめく一つのすがたに、せつせつとした眼差しをむける。
「穴」には、愛らしい獣としての人間の臭みが満ち満ちている。彼は他人の「穴」に指を突っ込んで「同じように臭い」とつぶやいたり、脱糞した当のものを直に手で撫でてみたり、その生みの親と同じように、「穴」が孕んだ落とし子を彼はこよなく愛でる。その「穴」に、人間の哀切と愉悦の運命をともに見ながら、「穴」の住人であるすがたを語っていく内容はとても強烈だ。
「反骨」へつづく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出だしは快調、70歳になって30代の話を書いた理由は最後に分かった。
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流浪しまくり
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2007/6/17購入