流浪 (ちくま文庫 か 47-1 金子光晴エッセイ・コレクション)

著者 :
制作 : 大庭 萱朗 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 37
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480422019

感想・レビュー・書評

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  • <「流浪」と「反骨」をあわせて>

    からだの「あな」(鼻や尻や耳などの)をふだん、「穴」と意識したことはほとんどなかったように思う。鼻に指を突っ込んで、その腹に血が付いて慌てるようなことがあっても、呼吸したり、音を鳴らしたり、排泄したりする「穴」と生きていく上での密接な自分とのつながりを、私は今まであまり考えたことがなかった。

    だから、金子光晴が『流浪』のなかで、「人間には穴がある」と書いているとき、そうだった、俺にも「穴」があったんだと思いおよぶ。彼はさまざまな「穴」にうごめく一つのすがたに、せつせつとした眼差しをむける。

    「穴」には、愛らしい獣としての人間の臭みが満ち満ちている。彼は他人の「穴」に指を突っ込んで「同じように臭い」とつぶやいたり、脱糞した当のものを直に手で撫でてみたり、その生みの親と同じように、「穴」が孕んだ落とし子を彼はこよなく愛でる。その「穴」に、人間の哀切と愉悦の運命をともに見ながら、「穴」の住人であるすがたを語っていく内容はとても強烈だ。

                             「反骨」へつづく。

  • 出だしは快調、70歳になって30代の話を書いた理由は最後に分かった。

  • 流浪しまくり

  • 2007/6/17購入

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著者プロフィール

金子 光晴(かねこ・みつはる):詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。主な作品として詩集『蛾』『女たちへのエレジー』『IL』、小説『風流尸解記』、随筆『どくろ杯』『ねむれ巴里』ほか多数。1975年没。

「2023年 『詩人/人間の悲劇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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