- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480422514
感想・レビュー・書評
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口唇裂をもって生まれ、子ども時代を施設で過ごし庭園で働いていたマイケル・K。彼は貧困と内戦に蝕まれる都市から脱出し、病んだ母親を手製の車いすに乗せて、彼女が幼年期を過ごしたという地方の農場を目指すが…
病院や福祉制度、収容所にとらえられては脱け出すマイケルは、生存の限界へと自らの身体を追い詰めながら、他者からの支配を逃れるという一点を譲らない。文中にはいくどか「恥ずかしさ」という文言が現れるが、もしもガーデナーである彼がこの世界における自分の生のありように恥を覚えずにいられないのだとしたら、なぜこのわたしは、こうもたやすく他者からの支配を受け入れながら、恥を感じずに生きていられるのかという問いにとらわれる。反アパルトヘイト文学という枠をはるかに超えて支配と尊厳を問う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間の尊厳。何者にも束縛されない自由への憧れ。なにかに抵抗するとか反抗するとかではない。
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[2011年]
ときどきふいに自分の価値観が変わる本が訪れる。いや、以前からなんとなく思っていたこと、世界における人間のヒエラルキーについて。ある社会における立場の高いものから、その階級に属さないものを見る目。
自分で耕して作った食べ物、それは大地からの贈り物であるという純粋な認識。
今置かれている現実に疑いを持たない人間がいるとしたら、そのひとは一生無垢でいられるだろう。
本を書くことは傲慢じゃなければならないんだな、と読みながら、思った。
[2015年]
再読中